
2009年初演、2012年の再演を経て今回が3演目です。
2012年に新神戸オリエンタル劇場で観て大好きな作品になって、今回も楽しみにしていました。
四獣x玉造小劇店 「ワンダーガーデン」
作・演出: わかぎゑふ
出演: 四獣(スーショウ)
桂憲一 植本純米 大井靖彦 八代進一/
うえだひろし (リリパットアーミー)
2018年11月10日(土)6:00pm ウイングフィールド XA列(最前列)センター
(上演時間: 1時間45分)
東京・目黒にある洋館の、花が咲き乱れる見事な庭を舞台に、明治末期から昭和にかけて日本も揺れ動く時代に生きた四姉妹と彼女たちを取り巻く男性の20年間の物語を、4人が男女二役で綴る物語。
物語の始まりは明治45年(1912)。
長女の千草は25歳 次女 薫子 18歳 三女 葉月 15歳。
千草が海軍少尉 杉山孝明との結婚が決まり、孝明の妹の桜 16歳が3人の姉妹に加わって四姉妹となった年。
それから昭和7年(1932)までの20年間、迫りくる時代のうねりの中で、姉妹それぞれが様々なことを抱えながら強くしなやかに生きていく姿が、笑いも織り交ぜながらウェットにならずに描かれています。
登場人物とストーリーは2012年版の感想(こちら)を参照していただくとして。
数年ごとに描かれる場面。
葉月が桜のお見合い相手だった男性と結婚したり、桜が女優となり、葉月の元恋人と結婚して大正デモクラシーに身を投じていたり、と姉妹を取り巻く環境は刻々と変わっていくのですが、「大正○年」と字幕が出たり説明台詞一切なしで、姉妹の会話だけで今の状況がわかるという、わかぎゑふさんの脚本、ほんとすばらしいなと改めて思いました。そして、前回の感想にも書きましたが、姉妹が語る古き時代の折り目正しい日本語がとても美しくて、耳に心地よく響きます。
メイクもせず髪型も地のまま、声も変えないで男女二役ずつを鮮やかに演じ分ける(衣装は女性を演じる時はエプロンドレス風の姿、男性はそれなりの服装)四獣の皆さんの演技がコミカルなのだけど相変わらずすごい。
これも前回書いたことですが、時代がかった衣裳や装置に頼らなくても、ちゃんとした台詞と、それをちゃんと伝えられる役者さんがいれば、観ている私たちは、「その時代に生きた人」に心が寄せられるのだということを改めて感じました。この作品は、観る側のイマジネーションを刺激する舞台でもあるのです。
今回は前回観た時と配役が違っていましたので、リストにしてみました。
役者さんの名前をはさんで左が女役、右が男性の役です。
この作品を初めて観た前回はこれが皆さんすごくハマってる、と思いましたが、今回のを観たらこちらがベストキャストかなとも感じました。特に八代進一さんのルコさんこと薫子と、植本純米さんの桜のハマリようハンパない。
あと八代さんは石巻竜司の役もよかったです。典型的なだめんずなんだけど、色っぽさとどこか逆らえない魅力があるような・・こんなオトコ、いるよねーというカンジ。
2009年の初演は今回と同じ配役だったらしいので、これがわかぎさんが最初に4人に割り振ったイメージなのかもしれません。
ひとつだけ。
姉妹がそれぞれに旅立って一人庭に残ったルコさんの前に現れる台湾のペンパル・文栄華が今回は日替わりゲストになっていて、私が観た日はリリパットアーミーのうえだひろしさんでした。すごく台湾人に寄せてきたうえださんはとてもよかったし、これまで出てきた8人の登場人物の誰でもない感があって効果的だったとは思いますが、ワタシ的には、かつてルコさんと一緒に乗った飛行機の事故で不慮の死を遂げた、ルコさんの永遠の恋人 大村子爵と同じ役者さんが演じることで、よりルコさんへの、不思議な庭からの奇跡のプレゼント感があって好きでした。
驚くルコさんに、「ここは不思議なことが起こる庭でしょ」とやさしく微笑む文栄華。
脚本や台詞や役者さんたちの持ち味もあって、基本的に客席にはずーっと笑い声があふれているような舞台。
それなのに気づいた時には涙があふれてるという、そういう意味でもこの舞台は「不思議なことが起こる庭」でした。


狭さにも驚きましたが、靴ぬいで、床に座るスタイルにも。最前列だったのですが、当然舞台と床繋がりというか、足ちょっと伸ばしたら舞台の中にはみ出る感じでした。
入口で靴脱いだところにリリパの野田晋市さんがいらっしゃって、驚きのあまり「あれっ?!今日は出られないんですよね」と言ってしまって、「今日は昼出たんですわ」とフツーに応えてくださいました。
「ワンダーガーデン」やっぱり大好き。また再演されてもきっと観に行く のごくらく度


