2018年11月28日

今この時の 「連獅子」  當る亥歳吉例顔見世興行 昼の部


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今思い出しても胸がキュッとします。
涙でるとか泣くとか、もうそういうレベルの話ではなかったです。ただただすばらしかった。
できることなら何度でも、何度でも観たかった。


當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同歌舞伎 昼の部
「連獅子」
狂言師右近後に親獅子の精  松本幸四郎
狂言師左近後に仔獅子の精  市川染五郎
僧蓮念 片岡愛之助/僧遍念 中村鴈治郎
2018年11月1日(木) 10:30am 南座 3階1列センター/
11月21日(水) 1階2列下手
(上演時間: 50分)



美しく清冽な連獅子。
優美で気品ある狂言師右近と左近
獅子となってからはまさしく霊獣
大きくて、優しさと厳しさを併せ持つ親獅子
そんな親獅子に真っ直ぐ、真っ向うから挑む仔獅子
今、この二人の連獅子を観ることができて、本当に心から幸せでした。


幸四郎さんは「『連獅子』は親子の物語ではありますが、狂言師の左近と右近が踊りを見せる舞踊でもあります。僕自身の解釈としては(親獅子と仔獅子の)踊り比べで、どっちが勝つかという踊りだど思っています」と記者発表の席でも、先斗町夜話でもおっしゃっていて、染五郎くんは「親獅子を崖から突き落とす勢いでやりたいと思います」と返して話題になりましたが(口上でもそうおっしゃっていました)、本当にその通りの連獅子でした。


幸四郎さんが12歳で初めて連獅子を踊った時に親子が着けていた衣装で登場する前シテ。
端正でお行儀よい舞いの中に親の子への情愛が滲み出る。
ほとんど表情を変えない親獅子が、「水に映れる」仔獅子の姿を見つけて微かに安堵の表情を浮かべるあたりでかなり心が震えている訳ですが、仔獅子が谷底から駆け上がるところでぶわっと涙溢れる。花道を跳ぶように進む染五郎くん仔獅子の力強い足音。迎える幸四郎さん親獅子の表情がここでもほんの少し優しく緩むのがもう・・・。

後シテの毛振りは勢いと力強さと刹那的な輝き。
染五郎くんが必死になって幸四郎さんに食らいついていく様に胸熱。
そんな仔獅子をどんと受け止めて、来るなら来い!とでもいうように大きく揺るがない幸四郎さん親獅子。
演目の親獅子と仔獅子をどうしても本当の親子と重ねて見てしまいます。
精一杯振り切る染五郎くんに幸四郎さんが合わせる毛振りは毛先まで見事なシンクロを見せて、赤と白の軌跡がとても美しい。

そしてラスト。
幸四郎さんが左足を引いて腰を入れ直してまるでリミッター外したような激しさで超高速回転。
客席は興奮のるつぼで、幕が下りてもしばらくどよめきが収まりませんでした。

2009年6月 4歳の初舞台で親子三代で連獅子を踊った染五郎くん。
「芸筋がいい」と口上で仁左衛門さんにほめていただいていますが、どれほど鍛錬を積んだのだろうと思います。
今年八月納涼歌舞伎の「龍虎」はもちろん、初日(11/1)と2回目(11/21)でも体幹が一層しっかりしてきたのが見て取れました。

迎える幸四郎さんは、手の所作、所作版を踏みならす足、どれを切り取っても美しくてカッコいい。
自信に満ちていて、大きくて揺るぎない。圧巻でした。

間狂言は鴈治郎さんと愛之助さんという襲名披露ならではの豪華配役。
こんなお役は力量があって愛嬌たっぷりのお二人がやるとより楽しく感じられました。

幸四郎さんと染五郎くんはこの先何度も「連獅子」を踊るでしょうけれど、13歳の鮮烈な染五郎くんの仔獅子と、まさに「幸四郎」の器となって心技体充実した幸四郎さんの親獅子、今の二人の連獅子を観られたこと、私にとってこの上ない宝物となりました。



二度と観ることはできない今この時の連獅子 のごくらく度 (total 1984 vs 1986 )



posted by スキップ at 23:10| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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