
南座の新開場と高麗屋さんの襲名披露が重なった今年の顔見世興行は一段と華やか。
そして演目は昼の部も夜の部もとても充実。見応えたっぷりでした。
ずっと工事の幕に覆われていた南座が元の(少し綺麗になった)姿を現し、そこにまねきが上がると「あー、ほんとに南座が帰ってきた」と思いました。
南座発祥四百年
南座新開場記念
京の年中行事
當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同歌舞伎 昼の部
二代目 松本白鸚
十代目 松本幸四郎
八代目 市川染五郎 襲名披露
2018年11月1日(木) 10:30am 南座 3階1列センター/
11月21日(水) 1階2列下手


第一、歌舞伎十八番の内 毛抜
出演: 市川左團次 片岡孝太郎 中村亀鶴 中村壱太郎
大谷廣太郎 市川男寅 上村吉弥 市川高麗蔵 大谷友右衛門 ほか
(上演時間: 1時間5分)
何度か観たことがある演目ですが、左團次さんで拝見するのは初めて。
そう言われてみれば、粂寺弾正の人を食ったようなところとか、美人も美少年も好きでかまわずちょっかい出すところとか、おおらかなな雰囲気が左團次さんにぴったりです。
エロおやじ風なのに嫌みがなくてカラッとしていて明るい弾正。素敵だったな。
壱太郎くんが珍しい立役で初々しい若衆。孝太郎さんの腰元巻絹は手に入ったお役ですが、「びびびび」が案外あっさりだった印象。吉弥さんの若菜がキリリと美しかったです。
第三、恋飛脚大和往来 封印切
新町井筒屋の場
出演: 片岡仁左衛門 片岡孝太郎 中村鴈治郎 片岡秀太郎 市川左團次 ほか
(上演時間: 1時間15分)
松嶋屋型の「封印切」久しぶり。
ここのところずっと成駒屋型・・というか山城屋型?ばかり観ていた印象でしたので、細々とした違いが新鮮でした。
特に封印切るところ、やっぱりこちらの方が好きだなぁと思いました。
左團次さん以外はオール上方キャストで、上方味ハンパない。
仁左衛門さんの忠さんは、美しく色っぽいのはもちろんのこと、外から井筒屋を覗いて一人であれこれつぶやいてくるくる表情変えるところとか、壁にこうもりみたいに張り付くところとか、何このかわいい生き物?という感じです。
そんなかわいらしさ振り撒きながら追い詰められて、超えてはならない一線を超えてしまう悲劇性がこんなに似合う人がいるでしょうか。
一途に忠さんを思う孝太郎さんの梅川、憎まれ役上等の鴈治郎さん八右衛門、おえんさんやらせたらこの人の右に出る者はいない秀太郎さんと周りも盤石。
はぁ~、忠さんってこれよねぇ、「封印切」ってこうよねぇ~ と思わせてくれた一幕でした。

出演: 松本白鸚 片岡愛之助 松本錦吾
片岡市蔵 大谷友右衛門 ほか
(上演時間: 40分)
昼の部の白鸚さん襲名披露演目。
江戸時代の美少年剣士・白井権八と大親分・幡随院長兵衛の鈴ヶ森での出会いを描いた物語です。
「鈴ヶ森」は何度か観ていますが、やはり2014年の「俳優祭」(白井権八は金太郎ちゃん時代の9歳の染五郎くん)と、中村勘三郎さん権八と中村吉右衛門さん長兵衛の”歴史的“顔合わせとなった2012年2月の新橋演舞場の「鈴ヶ森」が特に印象に残っています。
愛之助さん、やればできる子、というのが最初の感想。
ちゃんと少年剣士に見えましたし、台詞はもちろん、殺陣や型もきっちり。
欲をいえば、この後殺人鬼となっていくような狂気を孕んだ雰囲気とか妖しい色気みたいなものがほしいところではありますが。
いろいろ迷走してる感も見受けられますが、ちゃんと歌舞伎やってほしいなと改めて。
最後の方にちょっぴり出てくる幡随院長兵衛の白鸚さんはさすがの存在感。
いかにも器の大きな、男気のある侠客で、それでいて地獄を見て来たような厳しい雰囲気も漂わせる長兵衛。ぺらんめぇ調の台詞もピタリと決まっていました。
最初に雲助に身ぐるみはがされる飛脚早助が友右衛門さんだったり、権八との立ち回りで大股平開きの三点到立する和尚が松十郎さんだったり、思わぬご馳走で楽しかったです。
「連獅子」は別記事につづく