2018年11月17日

あの街灯の下で4人で声を合わせた瞬間が最高だった 「ジャージー・ボーイズ」


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1960年代に活躍したアメリカのヴォーカルグループ ザ・フォーシーズンズの結成から成功、解散まで、その光と影の日々を、その名のとおり、春夏秋冬と四季をたどって4人のメンバーがそれぞれの視点で語り継ぐ物語。
その物語を彩るフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズの名曲の数々。

ブロードウェイで2005年に初演された作品。
その後、クリント・イーストウッド監督による映画化を経て日本版初演は2016年。
数々の演劇賞を受賞してとても評判のよい作品でしたが、関西公演がなかったことあって今回初見。
初演を観なかったことが悔やまれるほどすばらしい舞台でした。


ミュージカル 「ジャージー・ボーイズ」 チームWHITE
脚本: マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
音楽: ボブ・ゴーディオ
詞: ボブ・クルー
演出: 藤田俊太郎
翻訳:  小田島恒志   訳詞:  高橋亜子
音楽監督: 島 健
美術: 松井るみ
出演: 中川晃教  中河内雅貴  海宝直人  福井晶一
太田基裕  阿部裕  畠中洋  綿引さやか  小此木まり  まりゑ  
遠藤瑠美子  大音智海  白石拓也  山野靖博  石川新太

2018年10月26日(金) 6:00pm 新歌舞伎座 1階1列センター
(上演時間: 2時間50分/休憩20分)



物語: ニュージャージー州の片田舎で、"天使の歌声”を持つフランキー(中川晃教)は、成功を夢見る兄貴分のトミー(中河内雅貴)とニック(福井晶一)のバンドに迎え入れられます。なかなか売れない日々の中、作曲の才能溢れるボブ(海宝直人)が加入。やがて4人のハーモニーが認められ、「ザ・フォー・シーズンズ」としてレコードデビュー。「Sherry」をはじめとする全米ナンバー1の楽曲を次々に生み出していきます。
しかし輝かしい活躍の裏では、莫大な借金やグループ内での確執、家族の不仲など、さまざまな問題が彼らを蝕び・・・。


トミー(春)→ ボブ(夏)→ ニック(秋)→ フランキー(冬)と語り継いで、それぞれの時代で象徴的な出来事を描いていきます。
名もなき若者たちの成功への渇望、その成功と引き換えに失う家庭的な幸せ、若くして名声を得たグループにつきものの軋轢や崩壊・・・と、ストーリーとしては、それが実話に基づいたものであるとはいえ、いかにもありがちな物語と言えます。

ですが、そこに描かれる様々な葛藤の中に自分自身を見たり、はたまた若い頃に憧れて、やがて私たちの前から姿を消したバンドの姿を重ねてみたりもして、何ともいえない切なさを味わうことにもなりました。

ただ、違っていたのは、彼らにはいつも「音楽」があったということ。


だから、離れ離れになった4人が長い時を経て、また一緒に歌うラストシーンが多幸感にあふれていて、あぁ、この人たちは離れていてもずっと音楽で繋がっていたんだと何だかほっとする思いでした。
そこへ持ってきて、ラストのフランキーの、「やっぱりあの街灯の下で4人で声を合わせた瞬間が最高だった」という言葉。思わず涙がこぼれました。


実在したバンドの実在の曲をそのまま使用していますので普通のミュージカルと違って歌が台詞、ということはありません(そこも結構好きなところ)。でもちゃんと物語に沿って、その時の状況や彼らの心情を表した楽曲になっているという選曲・・というか配曲?がすばらしい。
加えて、まるでこのバンドのライブ会場にいるように、楽曲そのものを楽しむシーンも満載。
♪Sherry以降のフォーシーズンズやフランキー・ヴァリのナンバーはほとんど知っている曲揃いで、これらをナマ歌で聴けることが純粋にとても楽しかったです。

左右にモニタを配し、二階建てにした舞台装置も洗練されていてよかったな。
シンプルだけど、そこがステージやスタジオや彼らの集まる店や、時にはフランキーの家にもなったり。


今回はチームWHITEとチームBLUEのダブルキャストでしたが、四季好き&ミュージカル通の友人に以前から「観て観て」と言われていた海宝直人さんのいるWHITEをチョイス。

その海宝直人さんのボブは、他の3人とは少し毛色の違うお坊っちゃんで頭も良く、コンプレックスとかネガティブさとは無縁の屈託のない雰囲気がよく出ていました。歌はさすがに上手い。表現力豊かで声がとても聴き心地よくて、いつまでも聴いていたいくらいでした。

中河内雅貴さんのトミーは綺麗なお顔立ちなのにいかにも危ういクズの雰囲漂う。
このグループが崩壊することになったら、原因はヤツだな、と冒頭から思った通りに展開しましたね。

福井晶一さんのニックは4人の中では目立たない存在なのかもしれませんが、そんなニックだからこそ、ホテルのタオルのことでトミーにキレるの、あぁ、友情とかグループに亀裂が入るのって、まさしくこんなところからだよな、と説得力ありました。「マタ・ハリ」でも聴かせてくれた福井さんの低音ヴォイス、大好きです。

そして、WHITE BLUE通じてのフランキー 中川晃教さん。
あっきーがフランキーかフランキーがあっきーか、というくらいハマリ役。
というか、他にこの役ができる人を思い浮かべることができません。
そういえば、新感線の「SHIROH」も未だにあっきー以外にあの役ができるだろうと思える人が現れないな。

フランキー・ヴァリの歌声あってこそのフォーシーズンズだったことを思えば、この「ジャージー・ボーイズ」の成功もフランキー役をやる人の声にかかっていると言っても過言ではなく。その期待に見事に応えてくれました。
あっきーヴァリの最初の登場の時にも「何?あの声!」と思いましたが、 ♪Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)を歌い始めた時にはちょっと震えました。

フランキーはずっとあっきーシングルキャスト。
どれほどタフな喉を持っているんだと驚愕しますが、これをやり通すことは私たち凡人には想像もつかないくらい心身ともに大変だったと思います。
本当にお疲れさま、感動をありがとうと心から申しあげたい。


そして、繰り返しになりますが、長い歳月を経て、「やっぱりあの街灯の下で4人で声を合わせた瞬間が最高だった」と語るフランキーの笑顔に、乾杯!



実は舞台観るまでフォーシーズンズの話だとは知らなかったの(←) のごくらく地獄度 (total 1979 vs 1982 )



posted by スキップ at 22:38| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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