
「エリザベート」は1996年の日本初演以来、上演回数1,000回以上を誇る宝塚歌劇の代表作の一つ。
今回が10演目。10人目のトートです。
・記念すべき10作目
・上演期間中に観客動員250万人を迎え
・長らく月組トップ娘役をつとめた愛希れいかさんのサヨナラ公演
とただでさえ話題満載なのに、今公演期間中に台風21号・24号の影響でなんと23年ぶりに公演が中止になったり、さらには、美弥るりかさん休演のため、フランツ、ルキーニといった大役が代役となるなど、とてもドラマチックで忘れられない公演となりました。
宝塚歌劇月組公演
三井住友VISAカード ミュージカル
「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション: ウィーン劇場協会
潤色・演出: 小池修一郎
出演: 珠城りょう 愛希れいか 美弥るりか 憧花ゆりの 光月るう 夏月都
紫門ゆりや 白雪さち花 千海華蘭 輝月ゆうま 晴音アキ 月城かなと
蓮つかさ 海乃美月 暁千星 美園さくら 風間柚乃 天紫珠李 蘭世惠翔 ほか
2018年8月25日(土) 11:00am 宝塚大劇場 1階2列センター/
9月6日(木) 11:00am 1階4列センター/9月29日(土) 11:00am 1階9列上手
(上演時間: 3時間/休憩 30分)
「エリザベート」という作品自体の感想は、これまでに宝塚版、東宝版ともに散々書いてきましたので、繰り返しては書きませんが、「やっぱりエリザ好きだな」というのがまずは、の感想。
大劇場ロビーの自動演奏のピアノが♪闇が広がる を奏でているのが聞こえるだけで気持ちアガリます。
楽曲のよさはもちろん、自由を求め、死に惹かれたエリザベートという女性の人生にハプスブルク家・・というよりヨーロッパの王族そのものの落日を重ねたストーリーも何度観ても深さを感じますし、彼女を取り巻く人々それぞれの思いが切ない。
今回の月組版で最も印象的だったのは総合力でしょうか。
専科から誰も特出せず、マックスパパもゾフィもすべて組子が演じていましたし、あまり役が多くないとはいえ、すべての役が手堅い。
合唱も「え?月組こんなにコーラスよかったっけ?」と思うほど。
1回目観た時は2列目センターだったこともあってか♪ミルク の迫力たるや凄まじかったです。
そんな総合力が存分に発揮されたのが、美弥るりかさん休演による代役公演。
フランツ: 月城かなと
ルキーニ: 風間柚乃
とNo.2・3の大きな役が代役となって、演技はもちろん難曲の数々を歌うご本人たちのプレッシャーの大きさは想像に難くありませんが、場面ごとの呼吸の合わせ方や衣装や段どりや、と周りで支えた共演者たち、スタッフ含めすべての人たちのどれほどの思いがあったのか・・・それでも幕は開けなくてはならない舞台の厳しさ怖さも改めて感じました。
全員が一丸となって取り組んだ結果として好評を博したことも、まぎれもなく月組の底ヂカラだと思います。
一番ツラかったであろう美弥るりかさんも4日間の休演を経て復帰。
東京公演千秋楽は全員笑顔で迎えられますように。
珠城りょうさんのトートは、初見の感想は「生きている人間みたい」でした。
端正なお顔立ちにクールな表情が映えるのですが、どことなく人としてのぬくもりも感じるトートだなぁと。
2回目に観た時は人外のもの感が増していました。
そして、珠城さんだとパワフルでエネルギッシュなトートを想像していましたが、控えめというかおとなし目のトートだったのが意外でした。
どちらかといえば、シシィが主役の東宝版に近いような・・・と考えてハッと気づたことが。
まだお稽古も始まる前、某紙のインタビューで、愛希れいかさんの退団について聞かれて、
「退団公演だから、というのは私的な感情。お客様には関係のないこと。組としてできることをお届けするのがお客様にとってもベストな送り出し方」と話す一方、「挑戦したかった作品だったようですし、彼女が満足できるよう、いいものをつくりたい」と語っていた珠城さん。意図してシシィが際立つ方向に持っていったのかもしれません。何て心の大きな、いい人なんだ。
歌が微妙にフラットするのも少し気になって、「ん?これ、私が知っているメロディと違うけど?」と感じたことも何度か・・・こちらも2回目以降はかなり修正されていましたが。
愛希れいかさんのシシィ。
シシィ自身が当時としては現代的な女性だったようですが、愛希さんのシシィもリアルで現代的。
少女時代はいかにもちゃぴちゃんという雰囲気でしたが、あんなに明るくのびのびと瑞々しかったシシィが皇后としての自覚と威厳を身につけるのと裏腹に苦悩が増していく後半は芝居の上手さが際立っていました。
凛とした立ち姿も美しく、歌もとても安定。
美弥るりかさんは軍服がよく似合う、いかにも王子様な正統派のフランツ。
シシィにも母上にも優しくて、結果として優柔不断でマザコンに見えてしまうという(実際そうだけど)。
繊細で悲哀を感じるフランツでした。歌は高音を裏声で歌っていて、改めてこの楽曲の音域の広さを認識。
3回目に観た時は休演復帰後で、プロローグで ♪わが妻 エリザベート と美弥フランツの低音が響いた時、涙出ました。どちらかといえば復帰後の方が声はよく出ている印象でした。
ルキーニは月城かなとさん。
エキゾチックな顔立ちに黒髪の髭が似合って、ビジュアルがまずは魅力的。歌は元々お上手。
マダム・ヴォルフにキスされても顔も向けず真顔、そしてちゃんと目の奥に狂気をはらんでいる。まさしくルキーニでした。
二幕冒頭のキッチュのアドリブ。
最初に観た時は初日から2日目だったのですが、「イヤだねえ『何言うんだろ?』っていうこの感じ。ここは俺の見せ場だけど、俺は芸人じゃないんだゼ」
ルドルフは暁千星さんと風間柚乃さんのダブルキャスト。
どちらもよかったですが、ワタシ的には暁千星ルドルフがとても好き。
いかにもお育ちのよいおぼっちゃまで、純粋で、そそのかされうまく利用された揚句、自分が陥った現実に耐えきれず絶望して死を選ぶ脆弱なメンタルがあのベイビーフェスにとてもよくハマっていました・・・風間ルドルフはそのあたり、もっと賢そうで強そうに見えました。
暁千星さんはダンスはお得意なので黒天使に翻弄されるダンスも目が離せないくらいステキ。
そして歌も飛躍的にうまくなっていました。
あと、役替りの時、「革命家の中に育ちのよさそうな美形がいる」と思ったら、暁さんエルマーだったというw
その他のキャストでは輝月ゆうまさんのマックスパパと海乃美月さんのヴィンディッシュ嬢、そして晴音アキさんのリヒテンシュタインが印象的。
マックスパパは相変わらず無責任な自由人だけど、シシィのことを愛しているのがよく伝わってきました。
何と言ってもビジュアルカッコいいし。
♪結婚は失敗だ~ 愚かな選択だ~ と歌う時、歴代マックスの中で一番怒っているように見えました。
この結婚に、そしてその結婚を阻止できなかった自分自身に。
海乃さんのヴィンディッシュ嬢は儚げで、狂気の中にいるのですがどこか子どものように純粋で、だからシシィとも心を通じ合うことができたのだろうと納得できる役づくりでした。
晴音アキさんは、お得意の歌はもちろん、落ち着いた演技で厳しさと優しさ、シシィに対する情愛と包容力を兼ね備えていて、歴代リヒテンシュタインの中でもかなり好きです。
晴音さんも輝月さんも月城さんも、そして愛希さんも95期。本当に人材豊富だな。
愛希さんシシィは、パパも侍女も自分を殺す人も(そしてつかの間の夫も)、すべて同期に囲まれているのですね。
フィナーレは「闇が広がる」の男役ダンスもよかったですが、何といってもデュエットダンス。
大きくてドレスの裾が美しい弧を描くリフトや、愛希さんが銀橋を走って行って、珠城さんが包容力たっぷりに両手を広げて迎え入れるところなど、このコンビならでは。今の各組トップの中でテクニカルな面でも一番のペアだと思います。もう観られなくなるのは本当に残念。
パレード:
エトワール 美園さくら
夢奈瑠音・海乃美月・輝生かなで
春海ゆう・蓮つかさ・風間柚乃/暁千星(役替り)/(代役・彩音星凪)
暁千星/風間柚乃 (役替り)
月城かなと (代役・風間柚乃)
美弥るりか(代役・月城かなと)
愛希れいか
珠城りょう


公演カクテルは2種類制覇
公演オリジナルカクテル「フルッチ ムーン」と「歌劇」創刊100周年記念メニュー「プードゥ スパークリングワイン」
10人のトートと乾杯したさ~
宝塚版を観ると東宝版が観たくなり、東宝版を観たら宝塚版が観たくなる無限ループ のごくらく地獄度




初演を含め、何度か見ていますが、正直今回が一番不安でした(^^;
もちろん、ちゃぴちゃんのエリザベートは楽しみだったのですが、組全体が若く、専科も出演しないということで・・・
蓋を開けてみれば、そんな不安も吹っ飛んで・・・と言いたいところでしたが、代役公演初日という、これまた驚くような日に観劇('◇')ゞ
それでも、逆に改めて「芝居の月組」の底力を見た気がしました。若手だけとは思えないほどの層の厚さ。そして、10作目で初めて(遅い?!)この演目の奥深さに気づかせてもらった気がします。
代役公演の劇場全体の緊張感が、かえって集中して見られた要因かもしれません。
今でもいろんな場面が目に焼き付いています。
ちゃぴちゃんと、すーさんの退団は本当に痛いですが、珠城くんのスター性が増して、これからますます楽しみな組になりました。
「エリザベート」は作品自体に力があるし、お稽古もとても厳しいと
聞いていますので、どの組でもクオリティの高い舞台を見せてくれますが
今回の月組はいろんなことが重なってさらに特別感がありました。
はぎおさんのご観劇日がまさにあの、代役公演の初回だったことも
今から思えば奇跡のようですね。
月組は若いトップを手練れの上級生が盛り立てる構図(宇月さんは
辞めてしまったけれど)がしっかりしていると思っていましたが
若手もどんどん育ってきて、ますます目が離せない組になりましたね。