2018年10月04日

若さの暴走か若気の至りか SHINKANSEN ☆RS 「メタル マクベス」 disc 2


disc2.jpgdisc 1は千穐楽含め2回分チケット取っていたものの諸般の事情によりどちらも観に行けず(涙)。
髑髏城には8回も登城したのに、鋼鉄城へは7月23日の開城から2ヵ月遅れて初めての登城です。


ONWARD presents
SHINKANSEN ☆RS 「メタル マクベス」 disc 2
作: 宮藤官九郎
(W. シェイクスピア 「マクベス」 松岡和子翻訳版より)
演出: いのうえひでのり
音楽: 岡崎司
振付&ステージング: 川崎悦子
美術: 堀尾幸男  照明: 原田保  
衣装: 伊賀大介  中野幸子  映像: 上田大樹
出演: 尾上松也  大原櫻子  原嘉孝  浅利陽介  高田聖子  河野まさと  
村木よし子  木場勝己  逆木圭一朗  市川しんぺー  徳永ゆうき  岡本健一 ほか

2018年9月20日(木) 12:30 IHIステージアラウンド東京 7列下手
(上演時間: 3時間55分/休憩 20分)



「メタル マクベス」の初演は2006年。
宮藤官九郎さんが初めて劇団☆新感線に脚本を書いた作品です。

「シェイクスピアの『マクベス』」の世界観は変えず、2206年の退廃した近未来と、空前のバンドブームに沸いた1980年代の日本を二重構造に置き換え、役名もギターのメーカー名からヒントを得たというロックテイストあふれる大胆な脚本」 というのが当時の謳い文句。
シェイクスピア好きとしては、「うわぁ、マクベスってこんな風にできるんだ」と驚き、クドカンワールド全開しつつ、しっかりマクベス、がっつり新感線な舞台に、「クドカン、天才!」と感嘆したものです(感想はこちら)。

今回は、未来が「世界が崩壊した後の2218年の豊洲」に置き換えられていましたが、ここと80年代バンドブーム期という二つの世界を行き来しながら、「マクベス」の世界感を表現するという骨子はそのまま。
長いし、ここいらないんじゃない?と思うギャグ場面も散見されますが、「やっぱりよくできてるな~」というのが私の第一印象です。

独特のクドカンワールドの好き嫌いはもちろんのこと、シェイクスピアの「マクベス」を知らない人にこの作品の面白さがどれくらい伝わるのか量りかねるところではありますが-実際、グレコの「帝王切開で生まれた」のくだりで、笑い声や「そんなオチ~?」という声も聞こえましたので、「マクベス」読んだことない人多いのではないかな。でもそれはそれで何も先入観持たずに観られて楽しそう-異なる二つ時代、設定の中で形は違えど二組のカップルの栄光と転落がデュアルに描き出されることで、ランダムスター(マクベス)夫妻の悲劇がより色濃く浮かび上がり、二人が手に入れようとした王国が脆くも崩れ去っていく切なさが痛いくらいに感じられました。


初演版の記憶が曖昧な部分もあるのですが、今回は主演2人により重点がシフトした印象を受けました。
2人それぞれの歌が増えて、その分、他の歌が何曲かカットされていましたかね・・・元きよしくんが歌う「七光り三度笠」とか、「ダイエースプレー買うてこいや」「リンスはお湯に溶かして使え」・・・メタルマクベスのアルバムの中の曲として台詞には出てきましたが。
レスポールJr.とグレコと場面もなくなっていました。
あの場面、好きでしたし(初演で演じていたのが森山未來くんと北村有起哉さんという大好きな役者さんたちだったこともある)、レスポール Jr.ことマルカム王子にとっては大切な場面だと思うのですが。

映像はさらに多くなっていましたが、12年前とは比べるべくもないほど進化していることもあり、使い方が効果的であまり気にならなくなりました。
舞台の回転より映像で上下する方が結構コタエましたね、私には。USJの「スパイダーマン」を初めて体験した時のことを思い出しました。

「回転する客席」については、「髑髏城」の時より使い方がステップアップしていました。
「髑髏城」では一場面終わると客席が回転して、それに合わせて前の場面が閉じて客席が向いた新しい場面が開く、という、ある意味紙芝居的な使い方だったのが、今回はとても立体的になっていて、舞台を二つ開けて現在と過去の場面を対比して見せたり、ラストなんて、舞台4面?全開にして端から端まで使って電気がビリビリ~と流れる様を電飾で派手にやらかしてくれたり。
この劇場機構ならではという感じで、2作目にして「ほほぅ、やるじゃん」と思いました。エクスプローラーがバイク乗り回す場面も間口あってこそなので、やはりこの劇場ならではということになりましょうか。


第一声を聴いた時、「あれ?松也くんってこんなに甘い声だったっけ?」と思った尾上松也くん。
いのうえさんが惚れ込んだ歌の上手さはもちろん(そりゃ真正ミュージカルスターとはいかないけれど)、映像含めて歌舞伎以外の仕事も多いので、台詞の発声も歌舞伎っぽいクセはほとんどなくてさすがでした。なのに見得をしてみせたり、海老ぞりまで見せる演出の遊び心。パーティ会場での見得には「音羽屋っ!」と大向うかかっていました。

夫人役の大原櫻子さん(小さな体にパワー溢れる歌唱や激振ヘドバン、後半の破滅していく感すばらしい)ともども若いので、ランダムスター夫妻の若さの暴走、というか若気の至り感が強調されていて、若い野心の赴くままにあまり深く考えずに突っ走ってしまった結果に、自分たち自身が一番驚き、戸惑い、不安に思っているような感じ。
心を病んだランダムスター夫人と彼女に寄り添うランダムスター 2人の孤独感が際立っていました。「小さい方を選べばよかった」は表現は違えど何度観ても名シーンです。

大きさの中にいく分の傲慢さも見せた上にギターの弾き語りまで聴かせてくれたレスポール王の木場勝己さん、芝居が上手いのは知っていたけれど意外にも、といっては失礼ながら、歌えるし動けるし殺陣もイケる、なグレコ 浅利陽介さん、12年前と同じグレコ夫人を演じた高田聖子さんの変わらぬ気風のよさ・・・役者さんは皆よかったですが、キャストの中で断トツに好きだったのは岡本健一さんのエクスプローラー(バンクォー)。

“狂犬エクスプローラー”の通りのキレッキレぶりに目を奪われて何ならあのハゲのエピソードいらなくない?と思いました。父親としての顔のギャップがまたねー。
ギター生演奏する姿なんて、往年とちっとも変わらないカッコよさ、色っぽさでシビレました。
岡本健一さんがグレコでも・・と思わなくもないですが、松也ランダムスターとの年齢的なバランスもあったのかな。

もう一人 レスポール Jr. の原嘉孝くん。
私、メタマクの中で一番好きなナンバーが 「明けない夜はSO LONG」で、初演時その曲のためにブログに記事をひとつアップしたくらい(こちら)。
歌ったのが森山未來くんでしたので、当然のことながら私の中でハードルが高くなる訳です。
が、原嘉孝くん、ダンスはキレッキレで歌声ものびやか。Jの子おそるべし!



楽しく拝見しましたが、平日マチネということもあってか、客席は20列以降がほぼ空席という大変厳しい状況でした。
disc 1でもアフタートークやリピーターチケットなど、これまでの新感線では考えられないようなプロモーションをしていて、チケット販売苦戦しているのが見えました。
作品の違いやキャストの知名度の低さなどがあるにしても、同じ演目をキャストを変えて数パターン連続上演するとか、絶対ライブビューイングやるとか、同じ手口を二公演続けるのは些か傲慢だったのではないか、と感じた次第です。




disc 3のチケットは買っていないので、メタマクはこれが最初で最後かな の地獄度 (total 1966 vs 1972 )


posted by スキップ at 23:47| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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