2018年09月24日

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部


kabukiza201809.jpg初代中村吉右衛門の芸を顕彰する秀山祭。
御贔屓の松本幸四郎さんが出演されるというばかりでなく、私にとっては播磨屋さん伝来の大歌舞伎や義太夫狂言を楽しみつつ歌舞伎演目の勉強ができる貴重な機会となっていて、毎年楽しみに拝見しています。
今年の秀山祭は、中村福助さんの5年ぶりの舞台復帰という慶事も重なりました。


歌舞伎座百三十年
秀山祭九月大歌舞伎 昼の部
2018年9月19日(水) 11:00am 
歌舞伎座 1階1列センター



一、 祇園祭礼信仰記 金閣寺
出演: 中村梅玉  中村児太郎  松本幸四郎  
坂東亀蔵  坂東彌十郎  尾上松緑  中村福助 ほか
(上演時間: 1時間39分)


天下を狙う松永大膳(松緑)は、将軍足利義輝の母である慶寿院尼(福助)を金閣に幽閉しています。共に幽閉している雪姫(児太郎)に思いを寄せる大膳は、夫の狩野之介直信(幸四郎)に代わり金閣の天井に龍を描くか、自らに従うか迫っています。そこへ此下東吉(梅玉)が現れ大膳の家臣として召し抱えられます・・・。


福助さん復帰の舞台であるとともに、ご長男の児太郎くんが歌舞伎三姫のひとつ、雪姫に初挑戦することでも話題の演目。

その児太郎くんの雪姫。とてもよかったです。
可憐で美しくはかないけれども芯の強さを持つ姫。
健気な中に口惜しさも滲ませ、台詞はもちろん所作や首の動かし方など、丁寧につくり込んだ芝居で、ずい分前に拝見した福助さんの雪姫と重なるところも多々ありながら、若い児太郎くんならではの現代的な感覚も垣間見えて、すごく勉強、努力したんだろうなぁと感じられました。

大量に降り注ぐ桜の花びらの中に一人立つ姿の美しさ。
あの大きな歌舞伎座の舞台で、たった一人で場を支えられる真女形の姿がそこにありました。


大詰で登場する慶寿院尼の福助さん。
客席からは万雷の拍手。
座したままで右手は合掌もままならないというご様子でしたが、お声や台詞はしっかり。
福助さんご復帰 本当におめでとうございます。
聞けば初日から比べると日々動けるようになっていらっしゃるとか。役者さんには舞台に出ることが何よりの回復の道なのだと信じたいです。

私が観た日の前夜に児太郎くんの「歌舞伎夜話」が開催されて、「八月納涼歌舞伎の期間中に福助さんがご挨拶にいらっしゃった時、幸四郎さんはお化粧とれてしまうくらいボロボロ泣いた」とか「ご自分の出番が終わって『紅葉狩』の顔をして、すぐに鳥屋に来て揚幕の向こうから福助さんの出番を見守ってくれている」といったお話のレポを読んでいましたので、私も胸いっぱい。

その幸四郎さんは雪姫の夫 狩野之介直信。
捉えられ縄に縛られたまま、一場面だけの登場ですが、自分の命の終わりを覚悟し、雪姫の行く末を案じるはかなく切ない風情が印象的でした。

いつもの台詞のくせがあまり気にならず、大きさも力強さも出した松緑さんの大膳、端正で品よく若々しい梅玉さんの此下東吉、豪肝な雰囲気いかにもニンな十河軍平実は佐藤正清の彌十郎さんはじめ、周りの役者さんも揃って、福助さんのご復帰、児太郎くん初役の大役を盛り立立てているような「金閣寺」でした。


image1 (2).jpg  image2.jpg

私の足元にも大量に舞い散ってきた桜の花びら
赤い床の上だと白っぽく見えますが、帰宅してバッグの中から出てきた花びらは綺麗なさくら色


二、 鬼揃紅葉狩
出演: 松本幸四郎  中村錦之助  市川高麗蔵  中村米吉  中村児太郎  
澤村宗之助  中村隼人  大谷廣太郎  中村玉太郎  中村東蔵 ほか
(上演時間: 54分)


開演前に舞台写真コーナーで後ジテで鬼女たちが花道七三でザ・ポーズする写真を見つけて、「カッコいいじゃん」とお買い上げ。その時は幸四郎さん以外、隈取の鬼女たちは誰かわからず。

舞台が始まって、更科の前ご一行様が静々と現れた時、「あれ!?米吉くん!それに児太郎くんも・・・そうだったのかー」となりました(←相変わらず、事前に配役チェックしなさい、というヤツです)。
終演後、更科の前と揃った侍女たちが並ぶ写真も買い足したよね。


綺麗どころが揃った侍女たち。
帰ろうとする平維茂を押しとどめる侍女ぬるでの米吉くんの手が指先までとてもしなやかで綺麗で、見惚れました。
後ジテで鬼になった侍女たち。
児太郎くんが毛ぶりしながら舞台を横に移動するの、すごいなぁとこれも見惚れる。

幸四郎さん更科の前は美しく華やかな中にも貫録たっぷり。
ときどきチラリと見せる鬼女の一面が妖しく鋭く。
鬼女になってからは大きさもあってラスボス感たっぷり。

迎え討つ側の平維茂チームは、錦之助さんの品よい維茂にキリリとした隼人くん月郎吾というイケメン主従+廣太郎くん。
楽しい幕でした。



kochiyama201809.jpg三、天衣紛上野初花  河内山 
出演: 中村吉右衛門  松本幸四郎  中村歌昇  
中村種之助  中村隼人  中村米吉  中村吉之丞  
中村又五郎  中村歌六  中村魁春 ほか
(上演時間: 1時間35分)


七月松竹座 白鸚さんの河内山で観たばかりの演目。
その時の感想(こちら)に、「苦手な演目でいつも寝てしまうのに寝なかった。おそるべし!最前列の威力(違)。」と書きましたが、今回も寝ませんでした。おそるべし 最前列の威力 再び(笑)。


今回は、河内山が松江邸へ乗り込む前に「上州屋質見世の場」がついて、松江邸へ浪路を取り返しに行くいきさつと、河内山の才知にたけた悪漢ぶりが描かれていてよりわかりやすくなっています。

この場で浪路の母 おまきを演じた魁春さんがいかにも大店のおかみさんといった風情に品格があって素敵でした。


吉右衛門さんの河内山は風格と愛嬌を併せ持ち、悪漢で欲は深いけれども卑ではなく、痛快。
台詞も所作も大仰なところはなく、力が抜けた感じなのですが、ユーモラスなところは茶目っ気たっぷりに、締めるべきところは締め、うたうところは名調子で聴かせて、と緩急自在な台詞まわし。
松江家の家臣の名乗りを聞きながら一々うなずくなど、相変わらず細やかな芝居に目が離せませんでした。

河内山が松江邸書院で焚くお香がとてもいい匂いでお香フェチとしては気になりました。
七月松竹座の時とはまた違っていて、これ、役者さんによって、もしくはお家によって変わるのかしら。

松江侯の幸四郎さんは、登場の時のいかにもふてくされた顔が何とも愛おしい(←)。
わがまま放題で短絡的なお殿様で、ぶんすか怒っているのですが結局やり込められてしまうところも愛おしい(← 贔屓目過ぎ)。

浪路の米吉くん、数馬の歌昇くんがいずれも若々しく綺麗で、特に数馬は眉目秀麗、口跡爽やかでいかにも仕事もできそう。
きっとモテモテだろうし、浪路との不義を疑われるのもむべなるかなと思いました。


こうして役者が揃えばおもしろい演目で眠くもならない(←)ということを再認識。
そんなふうに思わせてくれる力の入ったお芝居観られるのも秀山祭の醍醐味です。


前日4時間弱しか寝ていないのにどの演目も全然眠くなりませんでした のごくらく度 (total 1964 vs 1966 ) 


posted by スキップ at 22:15| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください