
国内外のアーカイブ映像をもとに、20世紀の歴史をまとめるNHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀」シリーズ。
キャッチコピーは「映像は人間の罪と勇気を照らし出す」。
その番組内で使用された楽曲の生演奏とともに歴史を記録した映像を上映するコンサートです。
2016年初演で今回で3演目だとか。
大阪で開催されるのは初めてのようですが、それにしてもこのコンサート、どうして今まで私のアンテナにひっかからなかったのでしょ。
NHKスペシャル 映像の世紀コンサート
音楽・ピアノ: 加古隆
指揮: 岩村力/大阪フィルハーモニー交響楽団
ナレーション: 山根基世
【スクリーン映像】
第一部 映像の始まり
第二部 第一次世界大戦
第三部 ヒトラーの野望
第四部 第二次世界大戦
第五部 冷戦時代
第六部 ベトナム戦争、若者たちの反乱
第七部 現代の悲劇、未来への希望
2018年9月17日(月) 3:00pm フェスティバルホール 2階3列下手
(上演時間: 2時間10分/休憩 20分)

チケット買ったのは前日で数席しか残っていませんでしたが、映像だからそんなに前でなくてもいいやと1,000円ケチってA席にしました。
私の席からはこんな眺め。肉眼ではスクリーンはもっと大きく見えましたし、十分でした。
フェスティバルホールってやっぱり綺麗なホールだわね。
「映像の世紀」観たことがない人でも♪パリは燃えているか は聞き覚えがあるのではないかと思います。
オープニングでその曲が演奏されて、スクリーンに全編のダイジェスト映像が流れただけですでにウルウル。
スクリーンに広がる現実の映像の凄味とあまりの厳しさ、そこに重なる加古隆さんが奏でるピアノの旋律の美しさ切なさ。
ああ、これ、見逃さないでよかった、と心から思いました。
最初に、世界初の映像(動画)であるリュミエール兄弟の映画から。
それが1985年ということに少し驚き。映像が世に出てまだ120年位しか経っていないんだ。
子ともたちの笑顔や、デトロイトの自動車工場、そしてライト兄弟の映像から世界は航空機の時代へと移っていきます。
ほろびゆくヨーロッパの王朝の時代では、ロシア帝国 ロマノフ家のニコライ二世夫妻とその皇女たち、オーストリア・ハンガリー ハプスブルク家のフランツ・ヨーゼフ一世の映像が流れて、「『神々の土地』やん」「『エリザベート』じゃん」と、宝塚脳で楽しく観ていたのはここまで。
「史上初めてその全貌が映像に記録された戦争」といわれる第一次世界大戦。
戦闘機、戦車、毒ガスなどの大量殺戮兵器、巻き込まれる市井の人々、折り重なるように倒れていく兵士たち。
目をそむけたくなるような映像が続きます。
やがて第一次世界大戦が終わり、疲弊したヨーロッパに代わって世界に躍り出たアメリカ。
その繁栄を享受した時に襲ってきた1929年の世界恐慌。
失業と貧困にあえぐ人々の前に現れた強い目をした男・・・アドルフ・ヒトラーの登場までが第一部。
第二部は、加古隆さんの♪パリは燃えているか のピアノソロで始まりました。
映像流れていないのに、一音一音研ぎ澄まされたようなピアノの旋律を聴いているだけで涙があふれてくるという・・・。
加古さんは譜面は使っていらっしゃらなくて、ピアノの左上に小さいモニターが取り付けられていてスクリーンの映像が映し出されていました。
そして第二次世界大戦。
目をそむけたくなるような映像再び、ですが、最も悲痛だったのは神風特攻隊の映像。
笑顔で手を振って見送られて飛び立って、次々撃沈していく戦闘機。
敵方の戦艦に体当たりするものもいれば空中で撃破されるものも。
映像観ているうちにNODA・MAP「逆鱗」の人間魚雷も心に蘇ってきて、このあたりほぼ号泣でした。
ここの曲もとても印象的だったのですが、♪神のパッサカリア という曲でした。
ナチスの強制収容所、ガス室。それが連合軍によって解放されて運び出される人、裸で、人間ってこんなに痩せられるんだと思うくらい骨と皮だけに変わり果てた人々の姿には言葉を失う思いでした。
第二次世界大戦後もキューバ危機に代表される東西冷戦、フルシチョフが一日にしてつくり上げたベルリンの壁、核戦争の恐怖からベトナム戦争へと繰り返される愚かな争いの中、まるで救いのようにはさみ込まれるアポロ11号の月面着陸、そして青と白の地球の映像。
「地球は見える姿の通りにならなければならない
共産主義者も資本主義者もない青と白の姿に
金持ちも貧乏人もいない 青と白の姿に」
というマイケル・コリンズ乗組員の言葉とともに。
終盤は私たちの記憶に新しいテロの映像。
2001年9月11日 アメリカ・ニューヨーク
2013年 ボストンマラソン
廃墟のようなシリアの都市 アレッポの今
2015年11月 パリ
・・・と続く映像の中で、テロ直後のパリで目隠しをした男性が「私はイスラム教徒です。信じてくれるなら抱きしめて」と書いた紙を脚元に置いて立っていると、パリの人々が一人、また一人と男性に近づいてハグするところでまたしても涙が。
人類の歴史は愚かな戦争の歴史といった感のある映像が続きましたが、人の心を信じられるエンディングでした。
映像に合わせた楽曲はとてもドラマチックで、それをフルオーケストラの生演奏で聴けるという贅沢。
番組中でも今回のコンサートでも繰り返し流れた ♪パリは燃えているか はもともととても印象的で好きな曲でしたが、今日でますます好きになったとともに、この曲を聴くともれなく涙がついてきます、という旋律になりました。
「映像の世紀」 もう一度最初から全編観たくなりました のごくらく度


