2018年08月30日
これが観納め? 八月納涼歌舞伎 第二部 「東海道中膝栗毛」
八月納涼歌舞伎に3年連続で登場となる「東海道中膝栗毛」。
もう今年で最後じゃない?という噂も飛び交う中、なーんと、喜多さんの葬儀から始まりました。
第1弾からずっと観ていますが、今回が一番好きだったな。
歌舞伎座百三十年
八月納涼歌舞伎 第二部
「東海道中膝栗毛 再伊勢参!? YJKT 」 〈またいくの!? こりないめんめん〉
市川猿之助・中村 獅童・中村七之助・市川中車 早替り
松本幸四郎・市川猿之助・市川染五郎・市川 團子 宙乗り 相勤め申し候
原作: 十返舎一九
構成: 杉原邦生
脚本: 戸部和久
演出・脚本: 市川猿之助
出演: 市川猿之助 中村獅童 中村七之助 市川中車 市川右團次 坂東新悟
大谷廣太郎 中村米吉 中村橋之助 中村福之助 中村歌之助 中村鷹之資
片岡千之助 市川染五郎 市川團子 市川右近 中村鶴松 市川弘太郎
市川寿猿 澤村宗之助 松本錦吾 片岡亀蔵 市川門之助 松本幸四郎 ほか
2018年8月9日(木) 3:00pm 歌舞伎座 1階2列センター/
8月27日(月) 3階3列下手
(上演時間: 1時間50分)
相馬山大鼻寺門前。
喜多さん(猿之助)の大きな遺影が飾られています。
喜多さんは大阪・松竹座に高麗屋三代襲名興行の手伝いに出かけ、「女殺油地獄」の後かたづけの最中に油に滑って柱に頭を打ち付けてあの世へ・・・って、幸四郎・猿之助共演の松竹座 「女殺油地獄」の記憶も新しく、妙にカブる(笑)。
喜多さんがいない世の中なんて、俺もあの世へ行く~と嘆き悲しむ弥次さん(幸四郎)に梵太郎(染五郎)と政之助(團子)は喜多さんを偲ぶためにもう一度お伊勢参りに行きましょうと3人で旅立ちます。成仏できず幽霊となった喜多さんは、このままでは地獄行きとなるところですが、大切に思う人に「ありがとう」と感謝の言葉を言ってもらえれば極楽へ行けるというご先祖さまからの言葉に従って3人を見守りながら共に旅します。が、弥次さんは富士川の渡しで地獄の使者の舟に乗ってしまい、喜多さんともども地獄へと落ちていくのでした・・・。
第1弾に出てきた新悟くんお稲の茶店や旅籠五日月屋が登場したり、第2弾の歌舞伎座の座元 釜桐左衛門や女医 羽笠が出てきたりと、さながら総集編の様相で、やっぱり今回で最後なのかな、と思いました。聞くところによると今回は映像化(シネマ歌舞伎)の予定もないとか。
五日月屋の花魁 赤尾太夫の場面がまんま「籠釣瓶花街酔醒」だったり、気づいたもの気づかないもの含めて、いろいろな歌舞伎演目が顔を出す構成。
地獄の場での鬼たちとの立ち回りでは、染五郎くんが金剛杖を持った「勧進帳」の弁慶よろしく腕数珠をくるくる巻きつけて見得をしたり、團子くんは「黒塚」の鬼女のしゃがんだ姿勢で膝でダンダン進むやつ(←語彙力)、さらには百回り、と、若い二人の将来が見えるような何とも胸熱で心憎いばかりの演出が随所に。
千穐楽には猿翁さんもスーパータンバリンを手に観劇されていたとか。
将来 五代目として猿之助の名を継ぐであろうお孫さんをどんな思いで見つめていらしたのでしょう。
染五郎くん、團子くんについては初登場の3年前と比べて出番も台詞もグンと多くなりましたが、その成長ぶりには目を見張るものがあります。この年頃の3年って、大人のそれとは明らかに時間軸が違うと実感しました。
このお二人ばかりでなく、地獄踊りの場面では、橋之助・福之助・歌之助の三兄弟をはじめ、千之助くんや市川右近ちゃんまで、若い人たちにスポット当てるあたり、若手の成長を大切にする猿之助さんらしいなぁと思いました。
それにしても、大きな歌舞伎座の舞台で、お兄さんおじさんたち引き連れて一番前の真中でまっすぐ前を見て踊る右近ちゃん小鬼。驚異の8歳です。しかもとびきり可愛いときてる。
地獄踊りでは若者らしくハキハキした踊りが目につくのですが、中で、手の表情や足の上げおろしがとてもやわらかで周りとは一線を画しているような人がいて、「老成してるな。誰?」と思ってよくよく観ると鷹之資くんでした。なーるほど。
閻魔大王(右團次)がリアル愛息の小鬼くんの踊りにデレデレして写メしたり、妻の彌美(新悟)さんはムチを手に「ワンピース」のサディちゃん再現したり、何の役の時だったか、中車さんが弥次さんに「邪魔!」と言ったり(「ブラックペアン」かよ)と小ネタも効いています。
加えて、獅童・七之助・中車3人早替りの容赦ない(笑)使い方もいかにも猿之助さんらしい。
冒頭の葬儀の場で、大岡忠相(獅童)、女医 羽笠(七之助)、釜桐左衛門(中車)として花道に登場した3人が「奥へどうぞ」と通されて消えて行ったら、まるでその続きのように久松(獅童)、お染(七之助)、母 貞昌(中車)になって花道に登場・・・というのが3回繰り返さた時には初日の客席大ウケでした。
拵えが違っているのは当然のことながら、科白の言い回しや声色まで役に合わせて変えてくる3人、お見事でした。
特に将軍 徳川家斉の御台所 寧姫(七之助)がお気に入り。
そして、何といっても弥次さん・喜多さん・・というか、幸四郎さん・猿之助さんのラブラブぶりですかね。
喜多さんを偲んでずーっと泣いていたのに、その涙を忘れたように赤尾太夫にイカれてしまう弥次さんですが、その二人、中の人同じだし(笑)。
一方の喜多さんも、「ありがとう」を言ってもらうべき大切な人こそ弥次さんただ一人と気づいて、その弥次さんにありがとうを言われて二人揃って天国へって、どんなラブストーリーなんだよって思いました。
家庭画報に連載中の「松本幸四郎の矜持」で、6月くらいだったかな、猿之助さんのことを書かれた回が「まるで猿之助さんへのラブレター」と歌舞伎クラスタの間で話題になりましたが、この舞台でのお二人を観ていると、ただ好きというだけでなく、互いを認め合いリスペクトし合っていて、本当に「相思相愛」なんだな、と改めて感じ入りました。
以下は千穐楽スペシャル(初日と楽しか観ていないのでもしかしたらスペシャルではないかもしれませんが)メモ
・釜桐左衛門さん 大きなカマキリを持って登場
弥次 「大きなバッタだなぁ」
釜桐 「バッタじゃないっ!」
→千穐楽を1階でご覧になっていた方からの情報によると、この時だけ揚幕がカマキリ柄になっていて、早替りで次の登場の時にはもういつもの幕に戻っていたのだとか。
・五日月屋大座敷で中車さん遣手お仲 「立て!立つんだ、弥次さん!」(丹下段平の声)
→言われた弥次さん、笑っちゃって全然立てず。周りの皆さんも全員笑ってました。
・同じく五日月屋大座敷 米吉くんおさきと中車さんお仲で美少年梵太郎の隣を争い、おさきさんが隣に座って手を握る→台詞のため前に出た隙にお仲さんが着物の袖で隠しながら梵太郎の手をずーっと握ってた→戻ってきたおさきにたしなめられる (美少年終始困惑顔)
・さらに同じく五日月屋大座敷 弥次さんの赤尾太夫へのセクハラがエスカレートしてた。
赤尾太夫の腕を鍵盤に見立てて弾くマネしたり。なすがままにされる赤尾太夫(笑)。
・地獄踊りの舞妓さんの中に髑髏メイクの人がいた
・「そんなに泣くなよ、喜多さん」で弥次さんホントに泣いてた→それ観てワタシもナミダ
・門之助イエス様 「Happy 仏滅!Happy 千秋楽!」→客席やんやの拍手
・ラスト宙乗りは、弥次さん喜多さんが黄色いスーパータンバリンを振り、天使たちはボン吉、ぼんを手に。
あー、楽しかった!
「またいつかお会いしましょう」っていつ? のごくらく地獄度 (total 1955 vs 1958 )
皆に見せ場を与えてさすがのプロデューサーでもあり、お三方の早変わりは笑えるし(*^^*)本当に楽しい第2部でした♪
1度しか観られなかったのが心残りです。
クオリティ高くて(?)おもしろかったですね~。
見どころもたくさんで目が足りなくくらいでしたので
ぜひ映像化していただきたいところですが・・・。
かまきりの揚幕は気づいた時にはもう普通の幕に戻って
いて、観ていた方も「いつの間に?」と思ったそうです。
主役の2人よりむしろあの3人や(笑)梵太郎・政之助の方が
目立っていたり、いろんな人に活躍の場があり、さらには、
ちゃんと自分たちの見せ場もつくるって、すばらしいですよね。
これで区切りとかではなく、毎年でなくてもいいので
シリーズ続けていただけることを願っています。