
「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」
弥次郎兵衛 喜多八 宙乗り相勤め申し候
原作: 十返舎一九
構成: 杉原邦生
脚本: 戸部和久
脚本・演出: 市川猿之助
振付: 尾上菊之丞
出演: 市川染五郎 中村勘九郎 中村七之助 市川中車 市川笑也 坂東巳之助 坂東新悟 中村隼人 中村児太郎 松本金太郎 市川團子 市川寿猿 市川笑三郎 市川猿弥 市川弘太郎 片岡亀蔵 市川門之助 坂東竹三郎 市川猿之助 ほか
シネマ歌舞伎: 2018年6月27日(水) 11:25 なんばパークスシネマ シアター11
八月納涼歌舞伎第二部: 2017年8月27日(日) 歌舞伎座 1階10列センター
(上演時間: 1時間45分)
初演(2016年)の感想はこちら(舞台)とこちら(シネマ歌舞伎)
幕が開くと、スクリーンに2016年版のダイジェストが映し出されます。
そのラストで花火とともに打ち上げられた弥次さん喜多さんがラップをBGMに宙乗りで3階から登場。
一文無しになった二人はたっつけを着て歌舞伎座でアルバイトをしているという設定です。
歌舞伎座では、「義経千本桜 川連法眼館」の初日を明日に控えて稽古中。
初役で狐忠信を演じる若手役者の吉沢綾人(隼人)が緊張気味の中、舞台装置の中で弟子の役者が何者かに殺されるという事件が起きてショックで寝込んでしまいます。さらには綾人の代役を勤めた先輩役者の瀬野川伊之助(巳之助)まで殺されてしまい、殺人事件の謎を解くべく弥次さん(染五郎)喜多さん(猿之助)が立ち上がる、というストーリー。
前作は途中からラスベガスに行っちゃったり、ハチャメチャながらもお伊勢参りの道中モノでちゃんと「東海道中膝栗毛」でしたが、今回はずっと歌舞伎座の中で物語は展開して、もはや「道中」ですらありません(笑)。
謎解きにあたっては、綾人の付き人・小歌(弘太郎)と座元・釜桐座衛門(中車)の妻・お蝶(児太郎)という疑わしい二人のどちらを取り調べるか、「どっちを取り調べまSHOW」と称して、その日の客席の拍手で決めるというもので、その後の展開にA・B二つのパターンがあって役者さんも裏方さんもたーいへん。
私が観た日は「B 小歌」となりました。シネマ歌舞伎もB。
取り調べようとしたところ小歌は殺されていて、真犯人はお蝶、実は化け猫だったという結末。
事件が解決し、晴れて「義経千本桜」の幕があがり、荒法師役が足らないために舞台に上げられた弥次さん喜多さんは、狐忠信の代わりに宙乗りして去って行く・・・というもの。
「義経千本桜 川連法眼館」通称「四の切」が劇中劇となっていて、演じるのは隼人忠信と巳之助静という注目の若手。
特に巳之助くん静なんて、この先観ることあるかしら?という感じです。
もっとも、巳之助くん演じる瀬野川伊之助はなかなかゴーマンな役者で、相手役が下手だと言って怒り、準備ができていないといっては怒鳴り散らし、着物の裾まくりあげて外股歩きでドスの効いた声、という歌舞伎の裏側見せてくれました、な楽しさ満載。
歌舞伎の裏側といえば、殺人事件の謎解きのところで「四の切」の早替りの仕掛けを見せながらのトリック解説するところも、「あそこから狐忠信出てくるのはああなっているのかなぁ」と興味シンシン。
さすがに「出があるよ!」の声や揚幕のシャリ~ンという音に惑わされて鳥屋を振り返ったりすることはもうありませんが、狐忠信の登場シーンの仕掛けも、「ここで必ず足をこうやってぐっと踏ん張るから毒を塗った釘はここに仕込むんだ」という猿之助さん喜多八の解説に「ほほぅ」と感心することしきり。
ここで、「喜多さん、詳しいね~」と弥次さんナイスつっこみ!
静の代役を「静御前は50年ぶりだよ!」と、関為三郎こと竹三郎さんがやったのにも大ウケ。
弥次さん喜多さんが床机に座る後ろを赤い着物で静の扮装した竹三郎さんが歩いている舞台写真、買っちゃったもんねー。
中車さんのカマキリネタ、半沢直樹ネタをはじめ小ネタも満載ですが、全体的に観ると楽屋オチ的な笑いも多くて、ミステリーとしてもコメディとしても若干ユルめ。
でも楽しいからいいじゃない、とすべて許せてしまう、ひと夏のお祭りのような舞台です。


ちなみにこれ、この演目の間だけかけられたカマキリの揚幕。右は通常のもの。
そんな中、ワタシ的イチバンは
(これはシネマ歌舞伎にはなかったので千穐楽スペシャルだったと思います)
ラスト宙乗りで空を行く弥次さん喜多さん。
喜多(猿): おめぇ 今度名めぇが変わるんだって?名めぇが変わってもまた俺と一緒に飛んでくれるかい?
弥次(染): 名めぇが変わってもずっとおめぇと一緒だよ~
染猿尊い。
見上げながら涙出ました。
あの後、猿之助さんの思いもよらない事故があって、幸四郎さんの襲名があって、1年経って、言葉通りにまた一緒に宙乗りする二人に今年も会えたこと、まるで奇跡のように感じられたのでした。
「歌舞伎座捕物帖」 ふりがなつけるの募集していて、「こびきちょうとりものそうどう」って応募したの、結構惜しくない?・・・採用されたのは「こびきちょうなぞときばなし」全然惜しくない のごくらく地獄度



