
今月の松竹座と同様、二代目 松本白鷗、十代目 松本幸四郎の高麗屋襲名披露興行となった六月の博多座。
昼の部は幸四郎さんの「伊達の十役」。
幸四郎さんが「伊達十」を演じるのは三度目ですべて観ていますが、さすがに襲名披露興行の今回は二度と観らねないのではないかと思えるくらい豪華配役の大顔合わせとなっています。
二幕、幸四郎さんの政岡に仁左衛門さんの八汐、魁春さんの栄御前なんて、このまま歌舞伎座の「伽羅先代萩」で上演できそうです。
六月博多座大歌舞伎 昼の部
慙紅葉汗顔見勢 (はじもみじあせのかおみせ)
三代猿之助四十八撰の内 「伊達の十役」
十代目松本幸四郎十役早替り宙乗り相勤め申し候
発 端 稲村ヶ崎の場
序 幕 鎌倉花水橋の場/大磯廓三浦屋の場/三浦屋奥座敷の場
二幕目 滑川宝蔵寺土橋堤の場
三幕目 足利家奥殿の場/ 同 床下の場
四幕目 山名館奥書院の場/問註所門前の場/同 白洲の場
作: 四世鶴屋南北
脚本・演出: 奈河彰輔
演出: 市川猿翁
出演: 松本幸四郎 (口上・仁木弾正・絹川与右衛門・赤松満祐・足利頼兼・
土手の道哲・高尾太夫・腰元 累・乳人 政岡・荒獅子男之助・細川勝元)/
片岡仁左衛門 中村鴈治郎 片岡孝太郎 市川笑也 中村壱太郎
市川笑三郎 松本錦吾 市川猿弥 中村魁春 中村梅玉 松本白鷗 ほか
2018年6月23日(土) 11:00am 博多座 1階A列センター
(上演時間: 4時間30分/幕間 30分・15分)
幕開きの博多弁まじえての口上をはじめ、構成はこれまでと同じ。
感想も前2回でほぼ書いてしまったので、こちらをご参照いただくとして詳細の繰り返しは避けます。
2014年5月 明治座 「伊達の十役」
2015年2月 博多座 「伊達の十役」
今回すごく感じたのは、幸四郎さんの充実&奮闘はもちろん、冒頭にも書きましたが、襲名披露興行ならではの二度と観られないような大顔合わせで物語にさらに厚み深みが増したこと。4時間半あっという間でした。
一幕はとにかく早替りが相変わらずすごくて、客席からどよめきがおきることしばしば。
>まだ歌舞伎を観始めの頃は早替りにいちいち「どうなってるの?」と驚いていたものです。
>その最たるものは「怪談乳房榎」のあの花道の傘とござの早替りなのですが、今回同じ
>早替りがありましたが、間近で観たのに本当>に目にも止まらぬ速さで、久しぶりに
>「どうなってるの?」アゲイン(笑)。
これ、2014年に明治座で初めて観た時の感想に書いたものですが、これと同じこと今回も思いました。幸四郎さんは凄味を増しているのに全く成長していないぢぶん←
あの花道での土手の道哲と与右衛門の傘の早替りは、「来るゾ、来るゾ!」と思って観ていたのに目にもとまらぬ速さでやっぱりわからなくて、「どうなってるの?」サードタイム・・いや、フォースタイムか(笑)。
この後、舞台中央で道哲が言い放つ「これだから敵役はやめられえねえ!」が実にカッコよくて気持ちよさそうで、悪役フェチとしては幸四郎さんの悪役たまりまへん

そう、悪役といえば、仁木弾正も。
仁木弾正は悪役の中でも特に好きな役のひとつで、最初に「先代萩」で観た仁左衛門さんのイメージが強いのですが、今回の幸四郎さんのふわり空を行く宙乗り仁木弾正は妖しさも色っぽさも満点。そして大きさも。襲名で役者ぶりが一回りも二回りも大きくなったと感じました。
二幕の政岡は、まずその美しさに驚きました。
いや、幸四郎さんの女方はもともと美しいし、今回の高尾太夫や腰元累も綺麗なのですが、政岡の女っぷり、美しさは格別でした。
そして、凛とした立ち姿やあまり多くを語らず内に秘めた佇まいからにじみ出る強さの迫力がハンパなかったです。
仁左衛門さんの八汐、魁春さんの栄御前を向こうにまわして、一歩も引けをとらず、毅然と乳人として立つ政岡。
わが子千松が八汐になぶり殺しにされるのを、鶴松君をかばって立ちながら顔色ひとつ変えずに見下ろす政岡。
栄御前が去った後、千松の亡骸にすがりついて「でかしゃった、でかしゃった」と慟哭する政岡。
今思い出しても胸が疼いて泣きそうになります。

「本日はこれぎり~」と舞台に正座して切り口上する幸四郎さんに梅玉さんが拍手とグッジョブサインを贈るという心温まる光景で幕となりました。
博多座1階の柱には今回のお役とご本人のポスターが。
幸四郎さん昼の部は仁木弾正
何度観ても「伊達十」は楽しい のごくらく度


