2018年07月14日

劇場は夢を見るゆりかご  その 「夢の裂け目」 を考えるところ


yumenosakeme.jpg劇場は 夢を見るなつかしいゆりかご 
その夢の 真実を考えるところ 
その夢の裂け目を考える ところ


ラストで歌われるこの曲が心に響きます。
劇場に行くことは夢みること=非日常 を求めてしまいがちですが、楽しく夢みられる面だけでなく、その裏なのか奥なのかにある真実を、その夢の裂け目をちゃんと見なさいと、井上ひさしさんの声が聞こえてくるようでした。


新国立劇場開場20周年記念公演
「夢の裂け目」
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演: 段田安則  唯月ふうか  保坂知寿  木場勝己  
高田聖子  吉沢梨絵  上山竜治  玉置玲央  佐藤誓
音楽: クルト・ヴァイル  宇野誠一郎
音楽監督: 久米大作
演奏: 朴勝哲  佐藤桃  熊谷太輔  山口宗真

2018年6月28日(木) 1:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 
1階C列(2列目)上手   (上演時間: 3時間/休憩 15分)



子どものころ、お祭りの縁日に紙芝居が来ていて、おじさんから買う水あめが大好きで、割り箸についた水あめをねりねりしながら観たなぁとか、私が通っていた小学校では、6年生が1年生の教室にやって来て紙芝居を上演してくれる、という時間があって、毎週(?)いろんな紙芝居観たなとか、「紙芝居」で思い出すのはそんなことですが、いずれも遠い昔のおぼろげな記憶。

これはそれよりさらにさかのぼった時代の、紙芝居屋の親方が主人公の物語。


物語の舞台は昭和21年の東京の下町 根津。
紙芝居屋の親方 天声こと田中留吉(段田安則)はある日突然GHQから東京裁判に検察側の証人として出廷を命じられ、民間検事局の川口ミドリ(保坂知寿)ら口述書を取られます。家族や周囲の人々を巻き込んで「極東国際軍事法廷証人心得」を脚本がわりに予行演習をして、当日は戦犯である東条英機らの前で無事証言を済ませた天声は、東京裁判の持つ構造に重大なカラクリがあることに気づきます・・・東京裁判の仕組みは天声がつくった紙芝居「「満月狸ばやし」と同じ筋書きなのではないか・・・それを紙芝居の上演で声高に喧伝し始めた天声は再度GHQから呼び出され・・・。


井上ひさしさんが新国立劇場に書き下ろした「東京裁判三部作」の1作目で2001年に初演された作品ということですが、初見です。
ちなみに他の2作(「夢の泪」「夢の痂」)も観たことがなくて、井上ひさしさんの作品、まだまだ観ていないものがたくさんあるなと思いました。

井上流・重喜劇ということですがいつも通り、というかいつも以上に「音楽劇」という印象。
3月に観た「シャンハイムーン」が井上ひさしさんの戯曲にしては珍しく歌も踊りもなく完全ストプレだったのと対照的です。

音楽は生演奏で、張り出したステージ前方の床が切り抜かれオケピのようになっていて、ピアノ、パーカッション、サックスなどのバンドが開演前から演奏を始めていました。
jazzyなメロディに日本語の歌詞が乗って、歌うまさん揃いで耳に心地よい。
「あれ?これ、『三文オペラ』の曲?!」と思っていたら、音楽にクルト・ヴァイルがクレジットされていることに終演後気づきました。


戦争責任の在り方を問う東京裁判と市井の人々との対比。
庶民に、普通の人々に、果たして責任はないのか。

天声こと留吉さんはじめ登場人物は皆憎めない愛おしい人たち。
毎日をただ懸命に生きているこんな人々が巻き込まれたのが戦争で、また、彼らが避けることができなかった、あるいは、避けることをしなかったのも戦争なのだという冷徹な「真実」を、温かさにくるんで、笑いを散りばめて、見せてくれる・・・井上ひさしさんの差し出すものを、その重さを、果たして私たちは受け止めきれているのだろうかという思い。


上山竜治さん扮する元学者の闇ブローカー 成田耕吉が、天声の娘 道子(唯月ふうか)に、「学問とはこの世の『骨組み』を探すためのもの。見つけた骨組みを研いて次の人へ渡すためのもの」と学問の意味を説くシーンが印象的ですが、その成田と、GHQに捕えられた留吉とのやり取りもとても心に残りました。
市井の人々の責任を問う成田と相容れない天声。
「我々普通の庶民に責任はない」と口を揃える天声会の人々とそれを一身に受ける成田。

その後に続く、天声の苦渋の決断。
あぁそっちを選んだか、と思ったり、そうだよね、やっぱりそうするよね、と納得したり。
何となく、署名しないんじゃないかな?(or してほしくない)とも思っていたのですが、高潔な学者でも思想家でもない普通の市井の人の取る行動としてはこれが当然だという現実を突きつけるあたり、井上ひさしさん容赦ない。


段田安則さんの天声こと田中留吉さん。
頑固で職人気質の江戸っ子で紙芝居の腕は超一流。
実は小心者で小ずるいところもあるけれど、そんな矮小さや愛すべき愚かさ、そんなどこにでもいる普通の人間が生きようと必死もがく姿を体現していてお見事。
それにやっぱりいい声。「満月狸ばやし」を三郎くん(玉置玲央)に続けてやった時、あまりの上手さの違い、名調子に驚いたもん(そういう演出なのだとしても)。

木場勝己さん清風先生の重みと渋み、台詞も歌もよく声が通ってかわいい道子の唯月ふうかさん、少し声量落ちたかなとも感じましたが、難曲を歌いあげる川口ミドリの保坂知寿さん(シスター姿かわいかった)、色っぽい妙子姐さんの高田聖子さん などナド。役者さん皆充実。



butaitekkyo.jpgこの日は終演後「舞台撤去見学会」がありました。
終演後2階席舞台撤去の様子を見学できるというもの。
アフタートークははよくありますがこれは初めてで興味シンシン。
どんどんバラされる舞台装置を新国立劇場の方が解説してくださいました。
セリ上がってくる棚のような装置のために、兵芸で今回穴を掘ったそうですが、その穴の深さは装置の2倍強なのだとか。



そうそう、装置といえば、天声が東京裁判の仕組みに思い至る場面の星空のセットも素敵だったなぁ のごくらく度 (total 1935 vs 1939 )


posted by スキップ at 23:33| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください