2018年06月08日
ぶち生かす! 星組 「ANOTHER WORLD」
千秋楽はもう終わってしまいましたが、宝塚大劇場 星組公演は落語噺を題材にしたミュージカルと台湾公演へ持っていくショーの2本立て+104期生初舞台お披露目。
RAKUGO MUSICALって・・・と思っていたところへ、歌劇の殿堂入場券つきとかフルールのたこ焼き券つきとかいろんな企画チケットの案内が来て、チケットの売れ行き悪そうだし、どーなん?とおそるおそるという感じで観に行ったら・・・これがとてもおもしろくて楽しかった!
ゆるくてベタなのだけど、アハハと声を出してよく笑いました。
という訳でまずはお芝居の感想を。
宝塚歌劇 星組公演
RAKUGO MUSICAL 「ANOTHER WORLD」
作・演出: 谷正純
出演: 紅ゆずる 綺咲愛里 礼真琴 万里柚美 美稀千種 七海ひろき
如月蓮 天寿光希 音波みのり 夢妃杏瑠 十碧れいや 瀬央ゆりあ 有沙瞳
/汝鳥伶 華形ひかる ほか
2018年4月29日(日) 3:00pm 宝塚大劇場 1階16列上手/
5月24日(木) 11:00am 1階9列下手
(上演時間: 1時間35分)
物語: 大坂の両替商 誉田屋の若旦那・康次郎(紅ゆずる)は高津神社の境内で菓子屋 松月堂のいとさん・お澄(綺咲愛里)に一目惚れし、恋患いで死んでしまいます。あの世に来た康次郎はそこで出会った江戸のお大尽 徳三郎(礼真琴)や誉田屋出入りの職人 喜六(七海ひろき)たち一緒に、同じくあの世へ来ているお澄を探して旅します。ようやく巡り合った2人でしたが、閻魔大王(汝鳥伶)がお澄に横恋慕して・・・。
「地獄八景亡者戯」「朝友」「死ぬなら今」といった死後の世界を舞台にした落語噺を散りばめているということですが、元の落語を知らないのでどれくらい潤色されているのかわかりませんし、知ってたらもっとおもしろかったかもしれません。康次郎とお澄の出会いのエピソードとして語られる「瀬をはやみ~」だけは、朝ドラ「わろてんか」を観ていたので「崇徳院だ!」とすぐわかりました。
チョンパで幕が開くプロローグは日本物のショーふうで華やか。
紅さんはいつもメイクがとても上手いと思っているのですが、日本物のメイクも綺麗。
そしてやっぱり、礼真琴くんが歌い出すと「ハッ!」となります。
三途の川の渡し船に乗る場面で、渡し賃が値上がりして六両と聞かされた康次郎が「三途の川の渡し賃は昔から六文と決まっとります。そやから真田幸村はんかて六文銭を旗印にしていつでも死ぬ覚悟で戦場に臨みはったんや」と私の好きな真田ネタ披露してくれて「お!」となったり。
六道の辻の「冥途歓楽街」のシーン楽しかったな。
あの世には時の流れはなくて、早く来た人も最近亡くなった人も一緒の世界にいる、というところで、「小林一三さんが鉄道とデパートをつくってはる」から始まる冥土歌劇団のレビュー「冥途、我が心の故郷」は2月に観た「小林一三物語」思い出したりもして。
マルーン色の阪急電車からマルーン色の衣装を着たダンサーが降りてきてロケット踊るのも洒落ていました。ここに紅・礼・七海・華形が乱入とか楽し過ぎる。
「冥土歌劇団」の演目は月替わりで来月は植田 紳爾先生の「ベルサイユの蓮(はす)」(冥土には薔薇より蓮が似合うから)。
「あの先生、まだお元気やで」
「よう見てみ。近日来演て書いてあるやろ」・・・怒られないのか?(笑)
「極楽歌舞伎座」の演目は「忠臣蔵」
「出演: 市川團十郎 しか書いてないけど?」
「初代から十二代目までみんなこっちにおるから大星も塩冶判官も高師直も、勘平も定九郎も馬の脚もぜーんぶ市川團十郎や」・・・そんな「仮名手本忠臣蔵」 観てみたいと一人大ウケして爆笑する不肖スキップ (まわりの人、ここはあまり笑っていなかった)。
美人座で康次郎とお澄の恋物語を演じる「文楽・崇徳院心中」もよかったです。
紅さんと綺咲さんの人形振りに礼くんと有沙瞳さんの歌い語り、人形遣いが七海、天寿、十碧、ひろ香で、おとぼけな喜六封印した七海さんの端正な男前ぶりも堪能。
歌舞伎とか文楽とか、私がヅカ以外にも好きなものが何気に挿入されているのも私がこの作品お気に入りの要素でもあります。
最後の天下分け目の有橋渡で、追い詰められた康次郎が「来年の今月今夜の月を・・・」とお澄に言うと周りの鬼たちがゲラゲラ笑い始めたので、そんな古臭いこと言ってるから笑ったのかなと思っていたら、「康次郎さんが来年のこと言うから鬼が笑てます」とお澄さんが言って、「来年の話をする鬼が笑う」と気づくあたりは不覚にも爆笑してしまいました。
紅ゆずるさんは、こんなちょっと情けないけど憎めない愛されキャラが本当によくお似合い。
康次郎さんはぼんなので基本的にお育ちがよくて品があって人柄もいい。
徳三郎が喜六をバカにした一八に「謝りなさい!」と言うと、「喜八、すまんっ!」とそれまで散々喜八をバカにしていたにもかかわらず真っ先に謝っちゃうし、閻魔大王に「貧乏神の代わりに誰か一人地獄へ行け」と迫られると、お澄と離れ離れになるとわかっていても「わてが行きます」と名乗り出ちゃう。
恋は盲目でおとぼけだけどやるときゃやる、なええぼんぼんがピタリとハマっています。
もちろんネイティブなので関西弁のイントネーションも楽勝。
紅さんといえば、アドリブもお得意ですが、今回はわりと控えめ(?)だったのも好感。
ただし、瀬央ゆりあさん演じる赤鬼赤太郎との場面はアドリブ炸裂・・・どれが台詞でどこがアドリブなんだか(笑)。
ここは冥土だからぶち殺すんじゃなくてぶち生かすんだ!と金棒振りまわす赤太郎を怖がるふりしながらおちょくる感じの康次郎。
1回目の時は初日開いてすぐでしたのでそれほどでもなかったけれど、1ヵ月経った5/24に観た時は、証文を渡す素振りして渡さず、結局バラまいてしまって、それを拾おうとしてすべって転んでしまった赤太郎に「早く立て。時間ないんやから続きやれ」とか言ってました。
綺咲愛里さんのお澄さん。
康次郎さんがひと目ぼれするのもむべなるかなというビジュアル。
おしとやかなお嬢様と思いきや、蛇振りまわして殺すとか、現世に戻ってすっかり弱った閻魔大王一行を「丁稚としてこき使う」と迫ったり、なかなかのツワモノキャラも可愛らしさで難なくクリア。
現世で遊びつくして幇間と辰巳芸者四人を引き連れてあの世にやってきた徳三郎は礼真琴さん。
大店の若旦那で遊び人だけど気風も気前もよくて、歯切れのいい江戸言葉。
礼くん、粋でカッコよかったです。歌声はもちろん、台詞もいい声で聴きほれます。
七海ひろきさんの喜六は5日前の鯖食べて死んじゃうような迂闊な人間ですが、「隠してる悪事なんかなーんもないでぇ」という正直者でお人好し。とても可愛いキャラクター。
この作品一番のヒットじゃないかと思えるくらい意外なキャスティングですが、すごくハマっていました。
華形ひかるさんは極楽に行って福の神になることを夢見る貧乏神。
これも可愛いキャラクターでした。華形さん、普段のすかしっぷりはどこへやらで、やっぱりお芝居上手いな。
思えばこの作品に出てくるキャラクターはみんな可愛らしい。閻魔大王でさえも。
1回目観た時、阿修羅が誰かわからなくて、後でプログラムで確認したら如月蓮さんでびっくり。
リアル過ぎるでしょう(笑)。扮装もさることながら、瞳孔開きっぱなしな感じのあの目が何とも言えません(ほめてます)。
娘役では艶冶の音波みのりさんの美しさと大人のオンナぶりが印象に残りました。
虞美人なのね。こんなに綺麗なのに「おばあさん」「おばあさん」と連発するお澄さんってば。
音波さん、ビジュアルといい所作といい、娘役のお手本のようです。弱いと言われていた歌唱も短いソロですが聴かせてくれました。
他には冥土カフェの初音さんこと有沙瞳さん、美人座の座頭 阿漕の夢妃杏璃さんが目立った活躍。
いろいろドタバタの末に康次郎とお澄は現世に戻り(徳三郎や他の人たちはあの世・・しかも極楽に残ったんだよね?)、めでたしめでたしのハッピーエンド。
「生きてりゃどんな苦労も乗り越えられる。いっぺん死んだつもりでやってみなはれ。この世は極楽、命に感謝や!」という康次郎の言葉であの世この世入り乱れて ♪そーりゃ そりゃ そら ありがたや~ と楽しい総踊りで幕。
幕が下りて、「あー、楽しかった」となったところに響き渡る「チーン」というお仏壇のお鈴の音。
そこでまたゲラゲラ笑って、笑いながら席を立ったのでした。
お約束の公演カクテル。
康次郎とお澄の恋心をイメージしたカクテルで、日本酒をベースに
フランボワーズのシロップとソーダで割った「極楽」
私とこのブログにぴったりのネーミングですわね。
ありがたや、なんまいだ のごくらく度 (total 1921 vs 1926 )
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください