2018年05月15日
柿葺落四月大歌舞伎 夜の部
柿葺落四月大歌舞伎 夜の部は昼の部から座席をそのまま1列後ろにずらしただけのセンターブロック通路横からの観劇となりました。
柿葺落四月大歌舞伎 夜の部
松本幸四郎改め 二代目 松本白 鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎 襲名披露
2018年4月20日(金) 4:00pm 御園座1階2列センター
一、梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場
出演: 中村吉右衛門 中村歌六 中村雀右衛門 中村歌昇 中村種之助
中村米吉 中村吉之丞 嵐 橘三郎 澤村宗之助 中村又五郎 市川左團次 ほか
(上演時間: 1時間20分)
「石切梶原」はこれまで何度も観た演目で、もちろん吉右衛門さんの梶原平三も何度も観ています。
にもかかわらず、今回が一番おもしろかった。
すごく感動するとか泣ける、という訳でもないのに。こういうのを「筋より役者で見せる狂言」というのかしら。
それから、前の方の(高い)席で観ると気合入って戯曲に入り込める、という自分の性分もいい加減何とかしたい。
いかにも大きさのある吉右衛門さんの梶原平三ですが、「二つ胴」や「石切り」で見せる殺陣の豪快さは言うに及ばず、懐紙をくわえて刀を目利きする姿、刀の柄に下げ緒を巻く手つきなど、どれをとっても美しい。
六郎太夫・梢 父娘と大庭三郎や俣野五郎のやり取りをじっと聴いているところでは、台詞はないながら、六郎太夫や梢の言葉にうなずいたり微笑んだりと細やかに反応する芝居をされているのに今回初めて気づきました(今まで何を観ていたんだ、自分)。
歌六さん六郎太夫、雀右衛門さんの梢、左團次さんの大庭、又五郎さんの俣野、と、周りの役者さんたちも鉄板で当代のはまり役を揃えた感じ。
特に歌六さんの六郎太夫が滋味にあふれ、いかにも娘思いの情愛深い父でありながら源氏に与する気骨も見せてすばらしかったです。
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳
出演: 松本白鸚 松本幸四郎 大谷友右衛門 市川高麗蔵
大谷廣太郎 松本錦吾 中村鴈治郎 ほか
(上演時間: 1時間10分)
白鸚さんこと九代目幸四郎さんの弁慶を拝見するのは何だか久しぶり・・とブログ検索してみたら、2008年10月 東大寺奉納歌舞伎で1000回目となる弁慶を演じられた時以来10年ぶりでした。そんなに長い間観ていなかったかしら。
とても忠義一途な弁慶。
ひたすら義経のことを思い、この関所を無事に通り抜けることだけを念頭に気合漲る弁慶-弁慶というのはいつもそうなのだけれど、特にそれが強く感じられました。
新幸四郎さんの弁慶が記憶に新しいので、勢いやスピード感、舞いの軽やかさなど些か乏しいような印象を受けますが、型の大きさ、豪快さ、石投げなどの見得の決まり方は白鸚さんならでは。白鸚さんの気迫に溢れた弁慶を観ていると、「役」の年齢とそれを演じる役者さんの年齢とは全く別物なのだと改めて感じました。
花道の飛び六方で手拍子が起きることはやはり違和感。
他の役者さんの弁慶の時には起きないことから「白鸚さんの弁慶が手拍子を誘導している」という批判をよく目にしますが、そうかな。この日は「待ってました」ばかりでなく、「たっぷりと」「大きく飛んで」などとても聞くに堪えない大向うもかかって、観る側の姿勢も大切なのではないかと思いました。
白鸚さんの弁慶が10年ぶりなら、新幸四郎さんの富樫も10年ぶりということになります。
幸四郎さんが演じる富樫は元々好きなのですが、富樫が最初に登場する時の、あの浅黄色の衣装の似合いっぷりは天下一品だと思います。一月歌舞伎座で吉右衛門さんの絶品富樫を間近で学んで、よりスケール感の増した富樫になっていました。声がやっぱりずい分太くなったよねぇ。
義経は鴈治郎さん。
配役見た時は「ええ~っ↓」と思いましたが、さすがに品格があって、「判官御手」は型の美しさばかりでなく、」弁慶への情も感じられるすばらしい義経でした(何ごとも見た目で判断してはいけませんー反省)。
三、廓文章 吉田屋
出演: 松本幸四郎 中村壱太郎 中村寿治郎 中村歌六 片岡秀太郎 ほか
(上演時間: 50分)
「吉田屋」の伊左衛門といえば、何といっても片岡仁左衛門さん、少し前なら坂田藤十郎さんで、上方歌舞伎の十八番ですが、幸四郎さんは今回、清元をつかう江戸前の「吉田屋」をやりたいと、澤村藤十郎さんに教えていただいたそうです。その清元には延寿太夫さん(右近くんのお父様ね)登場。
常磐津と清元の違いもあまりよくわかっていない不肖スキップですが、上方と江戸の「吉田屋」の違いはいろいろ見えておもしろかったです。
一番大きな違いは、夕霧を待つ間、伊左衛門のひとり芝居の時間が長いところでしょうか。その分、喜左衛門・おきさ夫婦(歌六・秀太郎)の出番が少ないのはちょっぴり残念でしたが。
幸四郎さん伊左衛門の可愛らしさ炸裂。
昼の部の次郎左衛門に続いてこちらも初役ですが、こんなあほぼんの役、似合うに決まってると思っていました。
夕霧を待ちわびながら、所在なげに床の間に寄りかかったり、三味線を爪弾いたり(←これ、上方版にはないところ)。
もうすぐ夕霧がやってくるとなって、そわそわして奥をのぞいてみたり、襖の陰に立ったり、座布団に座ったり・・・一つひとつの仕草が可愛らしいにもほどがある。しかも色っぽくて、大家の若旦那と云う風情も失わず、勘当された身の上の哀感も漂うという。新たな伊左衛門役者の誕生です。
壱太郎くんの夕霧は、儚げで華もあって綺麗でした。伊左衛門がふわふわしているのでちょっぴり姉さん女房風味。
ラストの豪華な打ち掛けが藤の柄だったけれど、あれは山城屋さんのかな?
秀太郎さんのおきさが大好きなのですが、今回の江戸版は出番が少なくてあのじゃらじゃらした感じが味わえないのは惜しい。最後は、おきささんの音頭で、客席も一緒に大阪締め。多幸感あふれる打ち出しでした。
幕間には2階に上がって、アイスもなかも食べました。御園座は2階席からもとても見やすそう。
たくさんの祝花の中にこんな真っ赤な胡蝶蘭が。「御園座レッド」と勝手に名づけてインスタにアップしたら、御園座レッドは本当にそう言うのだとか。
御園座昼夜 堪能いたしました のごくらく度 (total 1912 vs 1914 )
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