
今回は現在 松竹座で「ワンピース」に出演中の尾上右近くん登場ということで、張り切って行ってきました。
講座の申込みが満席でキャンセル待ちになるほどの人気ぶり。
花形トーク 「きらめきの花形 尾上右近」
講師: 歌舞伎俳優 尾上 右近
聞き手: 古典芸能解説者 葛西 聖司
2018年4月16日(月) 6:30pm NHK文化センター梅田教室
(講演時間: 1時間30分)
午前9時30分から整理券配布ということでしたが、仕事あるからもちろんそんな時間に行ける訳もなく。
午後6時少し前に到着して74番でした。
ロビーで番号順に呼ばれるのを待っていると右近くん登場。たまたま私が前にいた部屋が打ち合わせ室だったらしく、葛西さんとともに目の前を入って行かれました。細身の黒いスーツにイマドキの髪型の右近くん。「やせたね~」というのが第一印象でした。
トークはそんなダイエット話から
■ ダイエット
昨年、演舞場の「ワンピース」で猿之助さんの代役を勤めてから急激に痩せたと思っていたのですが、意図して身体を絞ったのだそうです。
めちゃくちゃよく食べるのを減らすくらいで、元々太りやすく痩せやすいのでそれほど苦労には感じないけれども、食べないとなると全く食べなかったりするのでそこのところは気をつけないと、とご自分で戒めていらっしゃいました。
一番太っていた時は75㎏あった体重が今は10㎏ちょっと減ったとおっしゃっていましたので、62~3㎏といった感じでしょうか。
中車さんが役作りですごくやせた時、「どうやったんですか?」とお聞きしたら「グルメ本見て食べたつもりになる」とおっしゃっていたとか・・・私ならかえって食べたくなって絶対ムリ!
■ 大きな縄跳び
「ワンピース」に出演したのは2年前の松竹座から。
初演の時は観客として観ていました。お稽古も見学させていただいたりしましたが、勉強するのも忘れちゃうぐらい楽しんじゃってました。
大阪公演のオファーを受けた時は、あれだけ完成された芝居の中で役もふくらませていただいて、自分が入ることでより芝居もふくらんだと言われないといけないと思いました。
みんなが跳んでいる大きな縄跳びの中に入っていく感覚。
宙乗りは猿之助さんのような「役者力」ではなく、若さの力にまかせて、という気持ちでやっています。
「僕はまだ若手だし、若手だし」とわざと2回繰り返していました。
葛西さんが「上から客席の隅々に視線送ってるよね」とおっしゃると、「そうですか」とすまし顔で、「客席の様子もよく見えます」と。
お客様が立ち上がって楽しんでいらっしゃるのを見るとすごくうれしいです。立ちたいけど恥ずかしいなって人は見ててすぐ分かります。顔に葛藤が見える。
宙乗りをやる劇場で一番好きなのは博多座かな。
すごく高くて稽古の時なんか怖いけれどお客さんがいると安心します。
松竹座はお客様が近くて凝縮された空間という感じ。
猿之助さんから早替りについてなどいろいろアドバイスをいただきます。
・・・と少し話しながら、「あんまりそんな話すると、『そんなふうに言われながらけんけんはやってるんだ』と思われるからやめよう、忘れてください」ですって。
附け打ちで、マグマのシーンで一つだけ別のものを使っていて違う音がするところがあるそうです。
気づかなかったな。今度気をつけて聴いてみたいと思います。
歌舞伎以外の役者さんたちとの共演はかなり新鮮。
歌舞伎役者が舞台で洋装でも部屋着は基本的に浴衣なのに対して、Tシャツに短パンだったりスエットだったり。発声練習していたり。
■ 研の會
「自分がやりたい」と言って始めた會。
第1回目は「鏡獅子」と「吉野山」
それを昼夜って大変だよ、と言われました。
自分でできるとは思っていなかったけど、できるようになるためにスタートしなければならないと思った。
-この話は以前にも伺ったことがあります。
この歳に「鏡獅子」をこれくらい踊れるようになるためには逆算してこの年齢から始めなければ、と。
あの時も右近くんの歌舞伎や舞踊に対する並々ならぬ意志が感じられて感心したものでした。
猿之助さんの自主公演「亀治郎の会」をずっと観てきたのが大きい。
だから自分が自主公演をやる時にはぜひ猿之助さんに出ていただきたくてお願いしました。
「吉野山」の静をお願いした時
猿之助さん 「僕でいいの?」
右近くん 「僕がいいんですっ!!」
清元をお願いしたお父様は「もっと若手が出た方がいいんじゃないか」とおっしゃったそうですが、「お父さん、チラシ刷っちゃいました」と言ったそうです。
絵がお得意なことももあって、チラシのデザインや構図、色にもこだわりを持つ右近くん。
第1回目の「研の會」のチラシ見ながら、「よくできたチラシですね。やりたくてやりたくて、という思いが出てる」と自画自賛。
第2回目は「船弁慶」と「仮名手本忠臣蔵」の勘平。
勘平は菊五郎さんに教えていただきたくてこの演目を選びました。
本当に手とり足とり教えていただいてありがたかった。
「船弁慶」は静と知盛の二役をやりますが、静は愛する義経と別れなければならず、知盛は義経を討とうとして討てない。別人格になってそれぞれがうまくいかない、と幸四郎さんがおっしゃったことが心に残っています。
「自分がやる時は今日yこそ義経を海に沈めようと思って出て行くんだけど、今日もダメだったと思うくらいでちょうどいい」と。
初日に右近くん知盛の長刀の刃が折れた時、幸四郎さんは「あれでいいと思うよ。教えてもらったという気持ちでやったんでしょ?」と言ってくださったとか(このあたり、幸四郎さんの口マネ)。
ちなみに、四月御園座話題でも「吉田屋」は清元でやるのでお父様の延寿さんご出演。「栄寿さんはいないの?」と幸四郎さんに言われた、と口マネ。
他の役者さんの時は普通に話すのに何で幸四郎さんだけいつも口マネ?(笑)
今年の研の會は壱太郎くんと「封印切」をやるということで、「今まで一番好きな梅川・忠兵衛は?」という質問に
迷くことなく「藤十郎のおじちゃま」と。
團菊祭を松竹座でやっていた時、藤十郎のおじちゃまと菊之助さんでやった梅川・忠兵衛が忠兵衛が一番印象に残っているそうです。
-私も、好きでした。
調べたら2012年5月でした。
八右衛門さんは三津五郎さんで、團十郎さんももちろんご存命で(涙)。
■ 二足のわらじではない
歌舞伎と清元の両方をやることについては、「決して二足のわらじではない」と。
「実家と嫁ぎ先みたいなもので、清元は僕の中になったもの」とおっしゃっていました。
お父さんに最初に言われた時は少し考えさせてください、と言いました。
時間の管理もあって、センスが問われること。
大変になるのは明らかで、大変になると楽しいのも明らかで、やるっきやない、と。
つらい、大変な思いは基本的に好き、とも。
襲名披露「延寿會」の口上の時の後ろの絵は青く立ち上がる波が描かれたもの。
クールベの水平線のない海の絵が好きで、その話を歌舞伎座の大道具さんにしたところ、こんなに素敵なものを描いてくださったそうです。
他に好きな画家は岡本太郎さんと即答。
最後に「歌舞伎という果てなき道を一生通して歩いていきたいと思っております。皆さんに後押ししていただきますようよろしくお願いいたします」とご挨拶をして、松竹座の舞台にいるルフィと同じポーズをして締めくくった右近くん。
歌舞伎、伝統芸能に造詣が深く、かつ気心の知れた葛西さんの滑らかな進行もあって、終始リラックスした様子。
いかにも弟キャラの若者ながらお話はきちんと整理されていて聡明さが伺えます。
客席のあちらこちらに視線を走らせる気づかいを見せたかと思えば、「イマドキの若者だなぁ」という発言が飛び出したり。
歌舞伎の実力もさることながら、人間的な魅力も諸先輩はじめ周りの方々から愛される要因かと思いました。
初めての主演舞台「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」は期待していた通り8月に大阪公演ありと発表されました。
こちらも楽しみです。
今年の「研の會」行けるかなぁぁぁ のごくらく地獄度



