2018年04月13日
「修羅天魔~髑髏城の七人 Season 極」 ライブビューイング
実はこの日(と1週間前)のチケットを持っていたのですが、元々それほど前のめりでなかったところへ自分の観る回がライブビューイングと発表されると、シュルシュルシュル~と音をたてて舞台観に行きたい風船がしぼんでしまいました。
さらには上京して一緒に観る予定だった「ヘッダ・ガブラー」と「四月大歌舞伎」のチケットも手放すという体たらくでございます。
かくして、「舞台そのものを観ないで映像だけ観て舞台作品観た気になるなんて邪道よ」と忌み嫌っていたはずの禁忌を自ら破ることになった次第。
ONWARD presents
劇団☆新感線 「修羅天魔〜髑髏城の七人 Season 極」 ライブビューイング
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
美術: 堀尾幸男 照明: 原田保 衣裳: GROUP色 竹田団吾
音楽: 岡崎司 松﨑雄一 作詞:デーモン閣下
出演: 天海祐希 福士誠治 竜星涼 清水くるみ 右近健一 河野まさと
逆木圭一郎 村木よし子 吉田メタル 保坂エマ 川原正嗣 原慎一郎
三宅弘城 山本亨 梶原善 古田新太 ほか
2018年4月12日(木) 12:30pm なんばパークスシネマ シアター7
(上映時間: 3時間45分/休憩 20分)
「髑髏城~」の世界観、登場人物を活かしつつも完全新作の大人の男と女の愛憎劇として中島かずきさんが書き下ろした作品なのだそうです。
「大人の男と女の愛憎劇」という部分は些か物足りなく感じたものの、もうひとつの「髑髏城の七人」として、思っていた以上におもしろく拝見しました。
「捨之介も蘭兵衛も出ない髑髏城」で、主役は極楽太夫こと雑賀のお蘭。
鉄砲の遣い手である雑賀衆の生き残りという「髑髏城」での設定は活かしながら、渡り遊女、実は一匹狼の凄腕のスナイパーというキャラクター。
新しい登場人物として夢三郎こと伐折羅の夢虎、徳川家康の密偵・清十郎の二人が加入。
感触としては
極楽太夫: 極楽太夫+捨之介+少々蘭兵衛
夢三郎: 蘭兵衛+ほんのちょっぴり天魔王
という感じかな。
お蘭がかつて信長の命を狙っていたところ、その信長の器の大きさに惹かれて・・・という過去譚が挿入されて、その時信長が左腕に負った傷がキーポイントとなって、「あの時、お蘭が約束を交わしたのは本当の信長だったのか、影武者の天魔王だったのか」という謎とそれに対するお蘭の葛藤という筋立て。
その謎に狸穴二郎衛門こと徳川家康が一枚噛んでいることでより疑惑が深まるというのも物語のふくらみとしておもしろかったです。
ただ、ラストの天魔王との一騎打ちはちょっとあっけない。
まぁ、お蘭の武器が鉄砲だから一瞬で終わるのは致し方なしといったところですが。
この公演が発表された時、「修羅の道を行く極楽太夫と天魔王の愛憎劇」というふれこみでしたので、「阿修羅城の瞳」のラスト、病葉出門と阿修羅王の、死力を尽くした斬り合いなのに究極のラブシーンに思える命の獲り合いのような場面を期待していただけに、お蘭の心情的にも実際の決着にもいささか拍子抜けです。
天海祐希さんはさすがに舞台の真ん中に立つために生まれてきた女優さんらしい華と存在感。
寸分違わずピタリと決まるポーズのカッコよさ。
大画面のスクリーンで超アップになっても輝くような美しさ。
何度か発するキメ台詞の力強さ。
着流し姿はとても似合って素敵でしたが、ずっとアレってどうなの?(一瞬 華やかな太夫姿と過去の黒装束が出てきましたが・・・あと、太夫の時の髪型がマダムみたいでイケてなかった-早替りの都合もあるのかもしれませんが)
無界屋の主で男でありながらNo.1の若衆太夫・・・と思いきや実は天魔王の嫡子 夢虎で、父親に心酔して片腕として冷酷無比な殺人マシンという夢三郎の設定がおもしろく(天魔王に子どもがいたなんてびっくりだ!)、それとともに兵庫との関係も新鮮でした。
兵庫が「夢三郎の男気に惚れている」というあたり、「お、兵庫の相手は極楽太夫でなくて夢三郎なのか」と思っていたら、二幕で夢虎と身バレした後の兵庫とのやり取りや最期はワカドクロ以降の蘭兵衛・極楽太夫の関係を彷彿とさせて切なさ、哀しさに満ちていました。
欲を言えば、夢虎に父親一辺倒でななくて、その愛を欲しながら叶えられない葛藤とか、兵庫や無界の里への心残りみたいなものが描かれていればより深まったと思いますが。
福士誠治くんが男気も野性味もあり、ビジュアルもよくてとても好きなタイプの兵庫だったのですが、驚いたのは夢三郎の竜星涼くん。
名前は知っていたものの、ドラマ「アンナチュラル」の葬儀屋・木林南雲役でやっと顔を認識できたという役者さん。天海さんと同じ事務所だし、「バーターキャスティングかよ」と思っていたところ、こんなにできる子とは・・・お見それしました。
夢三郎と夢虎で身のこなしはもちろん声の出し方まで変えていて、その声もよく出ていて、動きにもキレがあって殺陣もこれだけ出来れば上々。長身小顔でビジュアルよくてこれからも楽しみ。歌はもう少しがんばってねという感じではありましたが。
清十郎は川原正嗣さん。
何だかお芝居している川原さん観たの久しぶりな気がします。
そしてあのキレッキレの殺陣もたっぷり。「そうよ、これよ、コレ」感がハンパない。
役自体もお蘭を見張りながら守るというオイシイ役柄で、髑髏城で極楽太夫、兵庫、沙霧、カンテツ、三五、ぜん三・・・と数えて「一人足りないじゃん」となった時、「清十郎生きてるのかっ?」と思ったら生きてて、ホントよかったです。
古田新太さんの天魔王
・・・の前に、織田信長の古田新太さんがとても好きでした。
あんな大きな男っぷり見せられたら、命を狙っていたお蘭もこの男の言葉を信じてみようかという気になるというものです。
天魔王については、何だろう、この「もっと」感は。
卑劣・冷酷・残虐なのはよしとして、今回イギリス海軍と共謀して云々という策略が削除されていることもあって、天魔王が何をしたいのかがわかり難かった印象。「影武者である自分を排除しようとした秀吉や家康」への私怨による行動のようにも思えて。
古田さん、若干お疲れ気味かな?時々噛んでたし殺陣も少し精彩を欠いているように見えました。カーテンコールでは盛大に水吹きやってくれていましたが。
三宅弘城さんカンテツが「タナカさん」と連発するのを聞いていて、「そうそう、アオドクロの時、あのカンテツの濁点とかタナカとかがツボってゲラゲラ大笑いしたなぁと懐かしく思い出したり、変わらぬ身体能力の高さに驚嘆したり。髑髏党のミュージカルパロディ(原慎一郎さんケタ違いの美声!)に手を叩いて笑ったりしながら、「髑髏城の七人」という作品のエッセンスをうまく転換して採り入れた部分もあれば、そこは無理に引き継がなくても、と思う部分もあって、「もうひとつの髑髏城」としての面白さと同時に難しさも感じたのでした。
「みんなで新しい無界の里をつくろう、今度こそ本物の『無界』の里を」というラスト。
最後にみんな散り散りにならないで、七人一緒に希望をつなぐラストはこれまでになかった終わり方。清々しい風が吹き抜けるような幕切れでした。
(天海さんのモノローグはちょっぴり「蒼の乱」思い出したけれども)
それでもやっぱりいのうえ歌舞伎の完全新作が観たい の地獄度 (total 1897 vs 1899 )
とはいえ、1年ぶりに豊洲まで出かけてきましたから、ふむふむ、と思えるのが嬉しい!
私も竜星くんにはいい意味でびっくりしました。テレビ(ひよっこ・アンナチュラル)の印象しかなかったので、いや、こんなにデキる子だったのか、みたいな。キラキラして見えたわー。あと、福士くんには、ちょっぴり馬木也風味を感じたりも。
そろそろメタルマクベスのことも考えなくちゃ、な時期ですが……やっぱり真夏と真冬はやめとこうかな、などと考えてます。そしてライビュがあってもやっぱり木曜よね、の地獄度max(爆)。
ライブビューイングっていつも木曜日でしたか。
「髑髏城」のライビュは上弦の月以外全部観たのに
全く気づいていませんでした。
竜星涼くん「ひよっこ」にも出ていたのですね。
この舞台開幕前に「A-Studio」に出ていて、
「お稽古大変だ」みたいなことをチャラい感じ(笑)で
言っていたので「大丈夫かいな」と思っていたら
あんなにできててホント、いい意味でオドロキでした。
そう言われてみれば福士くん、ちょっと馬木也さん風味
ありますね。だから好きな兵庫だったのかなぁ。
同じ作品で2回も3回も豊洲に足を運ばせよう作戦は
いい加減勘弁していただきたいと思いますが、まんまと
それにハマって、また「メタルマクベス」disc 1 2 3
コンプリートすることになるのでしょうか。
今回のシリーズではライビュは別の曜日になりますように。