2018年03月11日

悪いことがしたい いい子でいたい 月組 「BADDY」


baddy.jpg2013年 「月雲の皇子 -衣通姫伝説より-」で演出家としてデビュー以来、すべての作品がハイクオリティでヒット連発のストーリーメイカー 上田久美子先生が初めて手がけたショー。

ストーリー仕立てでいささかぶっ飛んだ面もあって、「わけわかんない」とか「宝塚のショーらしくない」という向きもあるようですが、最初に言っておきたいのは、私はこのショーが大好きということです。
エネルギッシュで斬新で、でもちゃんと宝塚のショー。
まさに、「上田久美子がつくればショーもこうなる」という感じ。


宝塚歌劇 月組公演
ショー・テント・タカラヅカ
「BADDY -悪党(ヤツ)は月からやって来る-」
作・演出: 上田久美子
出演: 珠城りょう  愛希れいか  美弥るりか  憧花ゆりの  綾月せり  
宇月颯  紫門ゆりや   早乙女わかば   月城かなと  暁千星 ほか

2018年2月15日(木) 11:00am 宝塚大劇場 1階26列下手/
3月10日(土) 11:00am 1階3列センター (上演時間:55分)



世界統一され、戦争も犯罪も全ての悪が鎮圧されたピースフルプラネット地球の首都 TAKARAZUKA-CITY。ここに、月に逃げていた大悪党バッディ(珠城りょう)が帰ってくるところから物語は始まります。
束縛を嫌うバッディは手下たちを率い、つまらない世の中を面白くするためにあらゆる悪事を働くことにします。彼の最終目標はタカラヅカ・ビッグシアターバンクに眠る惑星予算を盗み出すこと。しかし、万能の女捜査官グッディ(愛希れいか)が彼を追いつめます。


悪とされる事象がすべて排除され、愛と平和に満ちたピースフルプラネット。
子どもたちは「ワルイ」という言葉の意味さえ知りません。
この時点で、ここがディストピア感たっぷりの未来型管理社会だと想像がつきます。
しかもこの平和な社会が「103年」続いていて首都の名前が「タカラヅカシティ」って、上田先生が込めたアイロニーですか?と思うのはうがち過ぎでしょうか。

「天国なんて行きたくない 天国なんて じぃさんたちのたまり場だろ」と歌うバッディ。
「悪」はすべて消滅し、「善」と「正しいこと」だけの清潔な世界・・・そんなの、つまんねぇだろ?という問いかけに貫かれたストーリー。


人間だから生きていれば綺麗ごとだけではすまないことはたくさんある。
人を愛するばかりでなく、怨むことも憎むことも、妬むことだってある。
いつも笑ってばかりではなく、泣いたり怒ったり悩んだり苦しんだりもする。
善だけの人間なんて存在しない。

「悪いことがしーたい いい子でいーたい」(この曲、歌詞もメロディもキャッチーですごく好き)というグッディチームとバッディチームの中詰の迫力の大合唱。
それぞれが互いの魅力に気づいて惹かれていく・・・どちらか一方しか知らないなんて人間じゃないという感覚がビンビン伝わってきました。


こんなふうにすごくくっきりしたテーマとストーリーがあるのに、宝塚のショーのセオリー通りに仕立てられていて、ちゃんと中詰があって、ロケットも男役群舞もデュエットダンスもきちんとあって、それらがまたストーリーにきっちりはめ込まれいることに感動さえ覚えました。そう、フィナーレのパレードさえストーリーの一部になっていて完璧、お見事と言うほかありません。

特にロケット。
「グッディの怒り」と題された、愛希グッディセンターの怒りのラインダンス(振付:御織ゆみ乃)。
惑星予算が盗まれお札をばら撒くバッディを見て怒りに震えるグッディ。
その怒りをそのままラインダンスで表現する展開の鮮やかさに目を見張りました。
平和に穏やかに生きてきたグッディはじめ地球人たちが「私 怒ってる」と初めて知った「怒り」や「悲しみ」を全身で表現するダンス。怒りにまみれながらそれが生身の人間の持つ感情であることを実感しているよう。
上田先生は「(怒りなどの)ネガティブな感情であっても、心が揺り動かされることで『私は生きている』と強く実感できる。ネガティブな感情が必ずしも悪いものではない、というメッセージを込めた」そうです。
ほんと、その通りのシーンになっていて、凄いとしか言いようがありません。

デュエットダンスも最高でした。
互いに魅かれながらも憎み合うような、「追う者」と「追われる者」との格闘のような激しさを持つドラマチックなダンス。
ここだけ切り取ってもまるでドラマの一場面を観ているよう。
珠城さんの大胆な片手リフトも凄かったな。もちろん綺麗にリフトされる愛希さんも。
宇月颯さんの影ソロもよかったなぁ。



image1.jpg  image2.jpg

開演前にゆ~ったりと流れる幕



珠城りょうさん 悪役カッコよすぎ。
短髪もサングラスもくわえ煙草も似合いすぎ。
珠城さんとしてこれまであまり観たことがないようなキャラクターで、悪の魅力全開。
銀橋に座って指揮者からタクト取り上げて振ってみたり、2人の美女はべらせて膝枕してもらって寝転んだり・・・3列目で観た時、この場面がまさに目の前で、本舞台も観たいのに銀橋から目が離せなくてコマッタ。

愛希れいかさんのグッディは本来ならトップスターが演じるような正義のヒーロー。
それがまたよくお似合いです。
射撃の腕は超一流で何ヵ国語も話せて文武両道、才色兼備。
優等生を絵に描いたようなグッディが「グッディっていうの?可愛いね…」というバッディの言葉に簡単にときめいちゃうあたり、学級委員長が不良に言い寄られてイチコロ、的な(笑)。

美弥るりかさんのスイートハートは男でもあって女でもある両性具有的な存在。
王子様のようでもあり小悪魔のようでもあり。それがまた美弥さんの中性的な持ち味にピタリとハマってとても魅力的。

宇月颯さんはやっぱりカッコよくて(アナザストーリー的にちらりと挿入される早乙女わかば王女様との切ない恋もステキでした)、暁千星くんは相変わらずカワイイ。
すっかり月組になじんだ月城かなとくんは善悪の振り幅もくっきり。

バッドボーイたちはどこまでもクールで、頭に地球儀乗せた憧花ゆりのさん女王様やパトロールバードたちの衣装がひたすら可愛く、 ロブスターやオマールやオイスターの楽しいかぶり物が出てきたり、あっと驚く輝月ゆうま宇宙人とか(初日にスチール写真公開された時、「まゆぽん」がTwitterのホットワードにランクインしてて笑っちゃった)、「・・・もうとっくに開演してるらしいぜ~」という開演アナウンス、扇なんだけど畳んだらタバコになるシャンシャンとか、細部にまでこだわって盛りだくさん、なのに楽しくて本当に体感時間の短いショーでした。


宇月颯さんの退団が返す返すも残念(大切なことだから2回言いました)。
フィナーレで銀橋に並んだ時、目の前だったので思わず手を振ってしまいました。
チラリと視線くれた(ような気がする)。


パレード:
夏月都・白雪さち花・天紫珠季 (エトワール?)
暁千星
海乃美月・美園さくら
月城かなと
美弥るりか
愛希れいか
珠城りょう




このショーをお芝居にしても観たくなります のごくらく度 (total 1886 vs 1889 )


posted by スキップ at 23:20| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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