2018年03月10日

合言葉はブレイクスルー! 月組 「カンパニー」


company.jpg月組公演は昨年出版されたばかりの小説が原作の現代劇と上田久美子先生 初演出ショーの2本立て。

お芝居はサブタイトルが長い上に、タイトルが「カンパニー」なのにサブタイトルにまた「仲間たち(カンパニー)」って入るとかセンス疑うわ~と思っていたところへこのポスターが発表されて、「ダサダサやん」とがっくりしたものです。
が、意外にも、といっては失礼ながら、どちらも楽しかったです。
特にショーは、タカラヅカにとって、エポックメイキングな作品の一つに数えられるのではないかしら。


宝塚歌劇 月組公演
ミュージカル・プレイ
「カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-」
原作: 伊吹有喜 『カンパニー』
脚本・演出: 石田昌也
出演: 珠城りょう  愛希れいか  美弥るりか  憧花ゆりの  綾月せり  
宇月颯  紫門ゆりや   早乙女わかば   月城かなと  暁千星/京三紗 ほか

2018年2月15日(木) 11:00am 宝塚大劇場 1階26列下手/
3月10日(土) 11:00am 1階3列センター 
(上演時間: 1時間35分)



物語: 製薬会社 総務部勤務のサラリーマン 青柳誠二(珠城りょう)は2年前に妻を亡くして一人暮らし。同僚で陸上選手のトレーナー 瀬川由衣(海乃美月)をかばったため2人一緒に社長の娘 紗良(早乙女わかば)がプリマを勤めるバレエ団に出向を命じられます。青柳が全く門外漢のバレエ団で、世界的プリンシパル 高野悠(美弥るりか)が踊る「新解釈版・白鳥の湖」の公演を成功に導くため、様々な困難を乗り越え奮闘する姿を、バレエ団のアンダースタディ 高崎美波(愛希れいか)との淡い恋もからめて描きます。


石田先生の脚本は説明台詞多くて、あまり笑えないゆる~いギャグや時事ネタの挿入も相変わらずですが、原作がしっかりしているのでストーリーの面白さで持って行った感じでしょうか。
会社合併やリストラといった環境、青柳さんのサラリーマンぶりや、上司(紫門ゆりや)・後輩(輝月ゆうま)の会話が結構リアリティあって「そうそう、会社ってあんな感じだよなぁ」と思いました(ま、実際にはあんな小ギレイな部長も男性社員もめったに見かけるものではありませんけれども)。
バレエ団の実情もやっぱりそうなのねぇと思ったり。チケットノルマとか、「お金出す人がいい役をもらえる」とか・・・某TK歌劇団もそんな感じ?


全編を通して「白鳥の湖」がいろいろなアレンジで流れて、それにあわせてバレエシーンが展開するのが楽しい。
白いチュチュを着てトウシューズで綺麗に立って白鳥を踊るつ愛希さんの美しいこと。ここぞとばかりに本領発揮の暁千星くんの踊りののびやかなこと。
バレエシーンはもっとたくさんあってもよかったな。特にラストの一幕は観てみたかったです。

あとバーバリアンがとにかくカッコいい。
有明製薬のCMソングを担当するイメージキャラクターのヴォーカル&ダンスユニット。
リーダーの宇月颯さん筆頭に、どこのEXILEですか、という男っぽいイケメン揃いの7人組。
そしてメンバーの那由多くん(月城かなと)はバレエ公演に出演。
有明製薬に貼ってあるバーバリアンのポスターが超クールで、あれリアルに販売すればかなり売れると思います・・・というか私もほしい。

一方では気になる台詞も散見。
高野悠が海外でプリンシパルを張るのは「外国人横綱みたい」とか、男性同士の愛をバレエで描くのは「歌舞伎でアニメを取り上げるようなもの」とか。
物語の発端となる女性アスリートの妊娠のくだりも「社会で生きるより母となって家庭に入ることが女性としての幸せ」的な描かれ方なのも違和感覚えるところでした。
公演のチケット売れないから動画をSNSにあげたりフラッシュモブで宣伝しよう→フラッシュモブ大好評でチケット完売、というあたりは「そんなにうまいこといくかいな」と思ったり。
・・・原作を読んでいませんのでどこまで脚色されているのかわかりませんが、

1回目観た時、愛希さんが浴衣着て歌う「東京五輪音頭」で始まるあれがフラッシュモブとは全くわからなかったのですが(笑)、それは別としてあの場面は楽しくて目が足りないくらいです。
浴衣を脱ぎすててキラキラのミニワンピになった愛希さん、海乃さんと同じ衣装で踊る憧花ゆりの組長 カッコよすぎだし、スーツみたいなコスチュームで綺麗に踊る美弥さんクールだし、バーバリアンはもちろん超カッコいい。
その中で青い道着着て空手の型をしたり踊る珠城さん。いや、似合っててカッコいいんだけど、「真面目で不器用な体育会系サラリーマンが一生懸命やってます」的な


そんなこんなで(どんなだ?)無事公演も成功し、青柳さんは会社に戻れることになり、美波は代役の成功が認められてヨーロッパ留学が決まり、青柳・美波、高野・瀬川、那由多・沙良の3カップルが何だかいい感じになって、夏目漱石が「I love you」をこう訳したという「今夜は月が綺麗ですね」を青柳さんが美波に言って幕、というハッピーエンドでした。


誠実で正義感が強く、少し不器用だけど温かい心を持っていて、武道と書道の達人でもある青柳誠二。
珠城りょうさん。今の宝塚でこの役がこれほどハマる人が他に思い当たりません。  
縁の下の力持ちで狂言回し的な役どころ。すごく見せどころがあってドラマチックという訳ではないのに主役としての存在感を失わないのはさすが。
美波に亡くなった奥さんのことを「あなたに少し面影が似ている」と言って、「じゃあ 美人ね」と言われて「いいえ!」と即答してしまうあたり、いかにも青柳さんでいかにも珠城さん。二度観て二度とも大笑いしました。

美波の愛希れいかさんは、明るくて可愛くて元気な若手バレエダンサーって、ぴったり、と言いたいところですが、当たり前すぎて少し物足りなく感じました。もちろん愛希さんの演技に不足があるはずもないですが、愛希れいかの器がこの役ではもったいないという印象。

バレエといえば暁千星くんの蒼太くんがいかにも弟キャラで人懐っこくてかわいい。なのに超絶技巧。
公演で道化役で踊ってくるくる回るピルエットの美しさに毎回拍手が起こっていました。
レッスン場の奥で座り込んでアップしている時とか、那由多にバーレッスンしている時にもさり気なく脚を天井まで挙げていて目が離せませんでした。

美弥るりかさんの高野悠は役自体がとてもいい役で、カリスマ性があって芸術家肌でプライドが高く、傲慢さと繊細さを兼ね備えたスターダンサー。
それが美弥さんにとてもよくハマっていて、美しさも品も男としての色気あってタダモノではないオーラダダ漏れ。
瀬川さんに対するツンデレぶりもカワイイ。羽根がいっぱいついたロットバルトの妖艶な衣装もとてもお似合いでした。

色気といえばバーバリアンのリーダー 阿久津の宇月颯さん。
いかにもリーダー然とした雰囲気で聡明で度量があってメンバーから一目も二目も置かれているよう。
カッコよさと色気 ハンパない。アンシンメトリーにウェーブかかったあの髪型がまたね~
宇月颯さん この公演で退団だなんて、返す返すも残念すぎる

バーバリアンのヴォーカル 水上那由多は月城かなとさん。
人気アイドルにぴったりの美しいビジュアルとカッコよさ。
自信満々なのに紗良さんを怪我させてしまったショックでトイレにこもって泣いてばかりいるというヘタレっぷり。
月城さんのこんな役 新鮮でした。

社長令嬢で気位は高いけれどプリマバレリーナとして努力も惜しまない紗良の早乙女わかばさんもこれが退団公演。
終始ジャージ姿でがんばるトレーナーの瀬川由衣は海乃美月さん。トレーナーとしての仕事に使命感を持つ女性を好演。
バレエ団のマネージャ的な役割かつ現役ダンサーでシングルマザーとという乃亜の憧花ゆりのさん。
娘役の活躍もうれしいところです。


様々な困難の中、バレエ公演を成功に導くことで青柳自身も成長する物語。
ブレイクスルー=壁を越える を合言葉に、一人では越えられない壁も、仲間と力を合わせることで突き破れるかもしれないという、面と向かって言われるとちょっと引いてしまう青臭い言葉を自分も信じていた頃があったかもしれないと思わせてくれる作品でした。

 

ショー「BADDY」の感想へつづく 

posted by スキップ at 23:19| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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