2018年01月09日

堕ちていく月 「髑髏城の七人」 Season 月  上弦の月


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昨年3月に開幕した「髑髏城の七人」。
季節とともに花鳥風と巡り、ラストを飾る月は上弦・下弦の2チーム。
(ま、その後に「極」がオーラスというトラップが待っていた訳だけれども)


dokkurojotsuki.jpgONWARD presents
劇団☆新感線 「髑髏城の七人」 Season 月 上弦の月
Produced by TBS
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
出演: 福士蒼汰  早乙女太一  三浦翔平  須賀健太  平間壮一  粟根まこと  山本カナコ  村木仁  
市川しんぺー  高田聖子  渡辺いっけい ほか

2017年12月3日(日) 12:30pm IHIステージアラウンド東京 20列センター
(上演時間: 3時間55分/休憩 20分)



今回の髑髏城シリーズは、花鳥風月とそれぞれ描き方や役のキャラクターに変化を持たせていますが、それがオリジナル作品でいえば「あて書き」の部分になっていて、その意味で一番成功したのは Season 鳥 の阿部サダヲ捨之介だと思っています。その背景含めて、これまでにない捨之介像がサダヲちゃんの持ち味にピタリとハマッていました。

その Season 鳥 で、森山未來天魔王とこれ以上ないというシンクロぶりを見せてくれた蘭兵衛の早乙女太一くん。
まるで蘭兵衛が乗り移っているかのように感じられた太一くんが演じる天魔王が、私にとって Season 月の一番の楽しみであり、一抹の不安でもありました。

果たしてその太一天魔王。
「天の形は見る人によって様々だ」という捨之介の台詞がありましたが(霧丸に言った言葉だったかな)、追い続けた天が歪んで堕ちてくるような、切なくなるくらい哀しい天魔王でした。


冒頭、「本能寺では・・・」という文字ナレーションとともに登場するまだ天魔王になる前の「人の男」。
天魔王で始まるパターンはこれまでにもなかった訳ではありませんが、「人の男」が「天魔王」となっていく様が描かれるのは初めてではないでしょうか。

「六欲天をご存知か?」と欲界を数えながら、一枚一枚鎧を身にまとい、「人」から「魔王」へと変貌していく天魔王。
まるで月が満ちていくように。
その変化に呼応するように、冠・教祖コンビのロックなシャウトに乗せて、髑髏党従えてのダンス。
ここまでが怒涛の流れすぎ、カッコよすぎで、「あれ?天魔王 主役?!」と思いました。

が、皮肉にも、これは残酷な伏線だったことを私たちは物語の最後に知ることになるのです。

ラストの捨天対決。
六枚刃を仕込んだ捨之介が、「第五天 化楽天っ!」「第四天 兜率天っ!」(←言葉と漢字がわからなかったので後で調べた)と斬りつけながら、天魔王の鎧を、まさにあの冒頭のシーンで身につけていった鎧を、一枚一枚剥がして、元の「人」へと引きずり降ろしていくのでした。
天魔王にとって、その身を斬られるより、これ以上ない残酷。
鎧をすべて断ち切られ、身ひとつになって天を仰ぐ天魔王の声にならない慟哭。
満ちた月が、まるで堕ちていくよう。

ここで!?最初のあれが!!と唸る思い。
中島かずきさん、やっぱり凄いです。


殺陣の美しさ、速さは絶品。
華麗にして重厚な太刀さばき、酷薄な表情に映える白塗りメイク。
時に傲慢に、時に繊細に響く声。
冷酷、脆さ、孤独、哀しさ。
その存在感含め、若い人中心の今回のキャストの中では別格感漂う太一天魔王(太一くんも十分若いですが)。
私が観た時点(初日から10日目)では言葉や仕草の端々に未來天魔王の面影が脳裏をよぎりました。それを敢えて、といういのうえさんの演出なのか太一くん自身の演技プランなのかはわかりませんが、これまで二度「髑髏城」で蘭兵衛を演じて、二度とも天魔王は森山未來くんだったことを思うと、無意識のうちに太一くんの中に強烈個性の未來天魔王が入り込んでいるのかなとも思いました。
が、太一天魔王はその後劇的に変化したと聞いています。
「早乙女太一の天魔王」として、どんなふうに髑髏城に君臨しているのか、観たい気持ちでいっぱいです。

今回、生駒の最期も際立っていました。
追い込まれた天魔王に斬りつけられ、最初は驚愕の表情を見せながら、やがて天魔王のすべてを受け容れるように、自ら刀をわが身に突き立てた生駒。
最大にして最期の忠誠を示した生駒が哀しくも誇り高く見えました。
どうかその思いが天魔王の氷の心を少しでも癒してくれますように。
山本カナコさんの生駒、大好きです。

・・・と、ここまでほぼ太一天魔王語り(笑)。


捨之介は福士蒼汰くん。
これが初舞台だそうですが、初舞台が新感線の、「髑髏城」の主役だなんて・・・という気負いなど微塵も感じさせないのびのび明るく爽やかな捨之介。
手に持つのは「血の雨を受けて地に流す」番傘ですが、そこまでのバックボーンはさすがに感じられないものの、声もよく出ていて動きもいいし、華もあって、上々のデビューではないかしら。
「女好き」といった感じは全くしないし(むしろ脚本や演出からそこのところは削除されていますよね?)、色気とか、着物の着こなしや裾捌き、殺陣のキメ方など課題も散見されますが、これからの伸びしろ含めて、また観たくなる捨之介でした。

今回の捨之介で気になったのは、福士くんの演技より、天魔王を倒すのではなく「止める」という設定でしょうか。
捨之介が天魔王に「豊臣の軍門に降れ」みたいなこと言うのがとても違和感。
それ「殺されろ」と言っているのと同じだし、「鳥」の捨之介のように「天魔王だけは生かしちゃおかねぇ!」と言い放っている方がどれほど説得力あるか。

蘭兵衛は三浦翔平さん。
「ペラペラよくしゃべるイケメン」(失礼!)くらいのイメージしかなかったのですが、こんなにデキる人だったとは。
蘭兵衛にしては少し野性的かなとも思いましたが、夢見酒では「堕ちる」というより自ら「覚醒した」という印象を受けました。
だから、その後の無界屋襲撃の冷酷さが一層映えるのだわ~と。

兵庫は須賀健太くん。
「ええ~っ!あの須賀健太くんが兵庫っ!!」って今回二番目に驚いたキャスティング(一番はもちろん天魔王)。
いつまでも「人にやさしく」のあきらくんのイメージだったのですが、もう23歳ですかそうですか。
須賀くんは芝居が上手いのはもちろん、思った以上に動けるしちょっと子犬感もあって可愛いし、兵庫単独としては全く不満はありませんが、どうも極楽太夫とのバランスがなぁ~。
高田聖子さん(カッコいい!)の極楽太夫が「雑賀衆の女」寄りの、より肝の据わった太夫なのでなおさら。
ラストは必ずしも恋愛に持って行かなくてもよかったのでは?

今回、沙霧ポジションが女性ではなく、男の霧丸となったのも初めての試み。
演じるのは平間壮一さん。
「バイオハザード」に出てたよね~というくらいの印象でしたが、この方もよく動けるのにオドロキ。
百人斬りは捨之介・贋鉄斎に霧丸が加わって3人でしたが、コンビネーションもよくて見応えありました。
霧丸が復讐に生きようとするのを、捨之介が止めるというこれまでと逆の構図はおもしろかったですが、正直のところ沙霧(女)を霧丸(男)にする必然性はあまり感じませんでした。
沙霧役ができる若くて可愛くて動ける女優さんがもういなかったのかしらと穿ってみたり。


いっけいさんとか市川しんぺーさんとか粟根さんとか村木さんとか。
他にも書かないといけないことがあるような気もしますが、あまりにも長文になりましたのでこのあたりで一旦終了(一旦って、次はあるのか)。
いずれにしても、「髑髏城は楽しい」ということで。



Season 月 ナマの舞台はこの1回きりなのぉ の地獄度 (total 1858 vs 1859 )


posted by スキップ at 23:37| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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