
まるで高麗屋さんの門出をお祝いするような澄みきった青空のもと、
高麗屋三代襲名披露興行 初日の幕があがりました。
2018年の観劇をこの公演から始められること、何て幸せなんでしょ。
歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎 襲名披露
壽 初春大歌舞伎 昼の部
2018年1月2日(火) 11:00am 歌舞伎座 3階1列センター

箱根山中施行の場/同 白滝の場
作: 司馬芝叟作
監修: 石川耕士
出演: 中村勘九郎 片岡愛之助 中村七之助
中村吉之丞 片岡秀太郎 ほか
(上演時間: 1時間10分)
物語: 飯沼勝五郎(勘九郎)は妻の初花(七之助)とともに兄の仇である滝口上野(愛之助)を探して箱根山中の阿弥陀寺へとやってきます。勝五郎は病のため足が立たなくなっていました。そこへ初花の母 早蕨(秀太郎)を人質に取った上野が現れ、夫と母の命を救って欲しければ自分のものになれと迫ります。進退極まった初花が上野とともに去った後、弔いの念仏を唱える勝五郎と早蕨の前に突然 初花が戻ってきて・・・。
初見でした。
「義は我にあり」だけど何とも弱い主人公 vs 極悪非道でやたら強いヒール という歌舞伎らしい図式の演目。
初花が2人の前に再び現れた時から「これ、亡霊だよね」と思っていたらその通り物語が進むのもいかにも歌舞伎らしい。
病のため「足萎え」になってしまった夫を荷台に乗せて初花が引っ張るところとか、どこかで観た感もありますが、役者さんたちの熱演でおもしろく拝見しました。
七之助さん初花の夫や母を思う健気さ、か弱い中の思いの強さ。
勘九郎さんの足が急に治って、ぴょんと人形みたいに立って、秀太郎さん早蕨が「クララが立った~」みたいになるところでは笑いが起こったりも。
愛之助さんは滝口上野と奴 筆助の二役で演じ分け鮮やか。
特に上野。白塗りの悪役、本当によくお似合いで上手い。
夜の部でも二役をお勤めでしたが、猿之助さんの代役のため忙しそうでした。
本来の配役は、飯沼勝五郎役:猿之助/滝口上野役:中村勘九郎 だったそうで、この配役でも観たかったなと思いました。
にしても、初春公演の初っ端がこの演目?とは思いましたが。
二、七福神
改訂: 今井豊茂
出演: 中村又五郎(恵比寿) 中村扇雀(弁財天) 坂東彌十郎(寿老人)
市川門之助(福禄寿) 市川高麗蔵(布袋) 中村芝翫(毘沙門) 中村鴈治郎(大黒天)
(上演時間: 17分)
よく宝塚劇で2.5次元の再現率ハンパない(最近では「はいからさんが通る」や「ポーの一族」・・どちらも花組だ)と話題になりますが、歌舞伎役者さんの再現能力にも感心します。本当に「動く七福神」だったもん。
ラストの乗合船なんて、このまま持って帰りたいくらいでした。
これ、幕開きの演目でもよかったのにね。
七福神好きで「七福神ぜーんぶ言える」と日ごろから自信を持っているのに踊る七福神を観て「あれは恵比寿、こちらは大黒。芝翫さんは毘沙門天ね・・・」と考えていて、どうしても一人(というか一神)思い出せず、それが気になって後半踊りが頭に入って来ないという。
浮かばなかったのは「布袋」でした。福禄寿も寿老人もすぐわかったのに、なんでメジャーな布袋を忘れる?

襲名祝幕。
昨年11月の襲名披露パーティの時にすでにお披露目されていましたので
「わぁ!」という感動はあまりない(^^ゞ
そして昼の部の襲名披露演目。


三、菅原伝授手習鑑
車引
出演: 染五郎改め松本幸四郎 中村勘九郎 中村七之助
大谷廣太郎 中村亀鶴 坂東彌十郎 ほか
(上演時間: 30分)
観終わってすぐ、「絵面が綺麗~」と思わず言葉が。
松王丸、梅王丸、桜丸 三人の並び、見得が錦絵のように美して見惚れました。
凛として怜悧な美しさを放つ七之助桜丸。
全身に力漲り、躍動する勘九郎梅王丸。グッと低く重心を落としてキマる型の見事さ。
その二人を向うにまわして重厚感と迫力で受け止める幸四郎松王丸。
いつまでも観ていたいような、今まで観た中で my best!と思えるすばらしく魅力的な「車引」でした。
寺子屋
出演: 幸四郎改め白鸚 中村梅玉 中村魁春 中村雀右衛門
市川猿之助 大谷桂三 市川寿猿 中村東蔵 市川左團次 坂田藤十郎 ほか
(上演時間: 1時間25分)
新白鸚さんが幸四郎襲名披露の際に演じた同じ役を37年の時を経て白鸚襲名披露でも勤める松王丸。
梅玉さんの武部源蔵はじめ、千代に魁春さん、戸浪は雀右衛門さん、園生の前は藤十郎さんという錚々たる配役の大歌舞伎となりました。
朗々と台詞を語る印象がある白鸚さんですが、今回の松王は静かな語り口の中により深い悲しみが潜んでいるようでした。
周りを固める役者さんたちも盤石で見応えたっぷり。
魁春さんで千代を観るのは初めてだったのですが、表情の変化少な目な中に時折見せる動揺がわが子を思う母の悲しみが痛いほど感じられました。
藤十郎さんが園生の前を演じられるのも珍しい印象ですが、これも襲名披露興行ならでは。
配役が発表された際、涎くり与太郎を猿之助さんが演じることが大きな話題となりました。
他の役は全部降板されてこの役のみのご出演でしたが、登場の時から客席の耳目を惹きつけて、お元気そうなお姿を拝見できてうれしかったです。
今回、寺子屋へ子どもたちを迎えにくる百姓役の豪華さも併せて注目の的でしたが、涎くりのお父さん 百姓 吾作は東蔵さん。人間国宝ですよ。
泣いている涎くりに「歌舞伎座の高麗屋襲名披露興行の切符こうたる」
与太郎「昼も夜ももうこうたーる」で笑いを取って、花道を帰る時には与太郎の左手を取って
吾作「けがはもう大丈夫なんか?」
与太郎「めでたい襲名の舞台に出るために精を出して、一生懸命リハビリしたんじゃ~」
でやんやの大喝采でした。
やっぱり持って行くよね~。
昼の部もケチらないで1階で観ればよかったかしら のごくらく地獄度



