
お友だちのファザコンサリーちゃんに誘っていただいて、こちらの公演に行ってきました。
招待者のみのクローズドでこの日限りの特別公演。スペシャル感満載です。
市川染五郎特別公演 「歌舞伎舞踊への誘い」
第一部 長唄 都名所 市川染五郎
ご挨拶とトーク 市川染五郎 尾上菊之丞
長唄演奏 長唄名曲集 「四季」
第二部 歌舞伎舞踊 操り三番叟
市川染五郎 (後見 尾上菊之丞)
演奏 長唄 杵屋栄八郎社中
鳴物 藤舎貴生社中
2017年10月10日(火) 1:00pm セルリアンタワー能楽堂 脇2列
(上演時間 2時間/休憩 15分)

セルリアンタワー東急ホテルに能楽堂があるのは知っていましたが、
足を踏み入れるのは初めて。
地下二階にあるとは思えない、本格的な能舞台でした。
■ 「都名所」
「船弁慶」の静御前の踊り「都名所」は素踊りで。
舞台に長唄や鳴物の社中が並んで演奏が始まる中、橋懸りから登場した染五郎さん。
中ほどで立ち止まり、「立ち舞うべくもあらぬ身の~」とひと節。
舞台に進み出て、静として舞います。
拵えも顔もしていないのにちゃんと女方。
四季折々の京都の名所を楽しかった義経との思い出ともに踊る静の心が浮かびあがるよう。
細やかな振りの一つひとつ、やわらかい手の表情や指先までの美しさもさることながら、肩を落として腰を折っての踊りは体力的にも消耗するだろうなぁと思いました。
舞台と客席が近いせいもあってか長唄もよく聞き取れて、「春の曙白々と」とか「糺の森に秋立ちて」とか、都の四季を彩る詞章の美しさにも聴き惚れました。
■ トーク
この公演の構成・振付を担当された菊之丞さんの進行で染五郎さんとのトーク。
染五郎さんは茶色の濃淡の着物と袴。踊りの時とはお着物を着替えての登場です。
染五郎さんの方が少し年上ですが、幼なじみでもあり、数々の舞台をともにつくり上げてきた気心知れたお二人。
20分くらいだったでしょうか。リラックスした雰囲気でとても楽しいトークでした。
今回のように正面にも横にも客席がある能舞台で踊るのはどうですか?という菊之丞さんの質問に、染五郎さんは「罰ゲームみたいなものです」。
「正面から観ていかに美しく完成されているか、という踊りですので、それを横から観られるというのは・・罰ゲームです」と。
「罰ゲーム」を2回繰り返すあたり、相当嫌だったのかな(笑)。
「氷艶」の話題に結構時間をさかれたのですが、「まずスケートから始めないといけなかった」という染五郎さんに、「でも染五郎さんは以前ドラマでアイスホッケーの選手の役をやったじゃないですか」と菊之丞さん。
ドラマのオファーはまずスケジュールを押さえる(連続ドラマなので3カ月半くらいを先に押さえる)ところから始まって、クランクインの1カ月か2カ月前くらいになって初めて「今度の役はアイスホッケー選手の役」と言われたのだそうです。
「降りようかと思ったけど、その間の生活を考えたらそうもいかず(笑)、ホッケーが下手なアイスホッケー選手はいるけれどスケートができないアイスホッケー選手はいないから」とそこから特訓開始だったとか。
「氷艶」では夜の8時ごろから朝まで稽古、ということが多く「稽古終了時間30時、というのを初めて経験しました」と菊之丞さん。
「歌舞伎役者は右には回れるけど左には回れないとか、前へは行けるけどバックするのは無理とか、いろんな制約があって・・・僕は右へ行きたいのになぜか左へツーッと進むのは僕のせいではなくて足のせい」と染五郎さん。
笑也さんは学生時代にアイスホッケーをやっていてスケートはお得意なのでハンディキャップをつけなければ(笑)と一番重い衣装を着せ、毛振りもしていただいた、と。
「そんないろんな制約がある中、すばらしい舞台に仕上がった」と菊之丞さんが言えば、「振付をしたのは菊之丞さんですから、これは自画自賛です」と染五郎さんのツッコミ。
染五郎さんは14メートルの宙乗りで最初に上に上がった時、「何てばかなことを考えたんだ」と後悔したそうです。演出担当で宙乗りを決めたのも染五郎さんなので。
高所恐怖症として知られる染五郎さんですが、歩道橋も真ん中でないと歩けないほどなのだとか。
菊之丞さんが「ちなみに、この中で『氷艶』をご覧になった方いらっしゃいますか?」とおっしゃった時に「ハイ!」と張り切って手を挙げたサリーちゃんと私。
「おお」と菊之丞さん、染五郎さんの視線をいただいてうれしいやらドキドキするやら

(ご贔屓さんがそれほどいらっしゃる客層ではなかったため挙手した人はほとんどいなくて、かなり目立った・・・かもしれません(^-^;)
■ 長唄演奏 長唄名曲集 「四季」
能舞台の斜めに緋毛氈が敷かれてそこにズラリと社中が並ぶ編成。
邦楽だけをじっくり聴く機会はあまりないので、おもしろかったです。
長唄の曲にも詞章にも疎い私ですが、聴いていると「あ、今季節が変わった」とか「これは祭り囃子ね」とかわかるので不思議なものです。
■ 操り三番叟
こちらも素踊りかなと思っていたら、染五郎さん、拵えをしての登場でテンションあがります。
染五郎さんの「操り三番叟」といえば、昨年、10年ぶりに踊られた歌舞伎座公演(こちら)が記憶に新しいところですが、大好きな演目の一つです。
まるで人形に命が宿ったように勝手に踊り出したり、また糸がからまったり。
くるくる回ったり、片足だけで立ってゆらゆらしてみせたり。
軽々とした跳躍、舞台を踏みならす力強さ。
一つひとつの動きが踊りの力量と身体能力の高さに裏打ちされて、観ていて「楽しい」以外の言葉が思いうかびません。
菊之丞さんの後見も多分初めて拝見したのですが、さすがに息ぴったりで。
染五郎さん三番叟の動きだけを凛とした視線で見つめて、寸分の互いなく同時にダンダンッ!と足を踏みならすところとか、惚れるわ(笑)。
今回、能舞台の脇正面、つまり舞台を横から観る位置だったのですが、染五郎さんの「罰ゲーム」発言にもあった通り、歌舞伎役者さんの踊りを横から観ることはこの先もそうあることではなく、とても貴重で、新鮮でした。
多分 菊之丞さんが能舞台ということを考えて振付してくださったのか、時折私たちの方に向かって踊る場面もあって、めでたくも美しい三番叟のお姿、お顔も十分堪能できました。
■ レセプション
終演後には場所を変えて立食形式のレセプション。
中ほどに染五郎さんと菊之丞さんのご挨拶がありました。
必ずしも歌舞伎に馴染みある方ばかりではない招待客を前に、「いかがでしたでしょうか」とおっしゃって万雷の拍手をあびた染五郎さん。
「ぜひ僕を入口にして歌舞伎の世界へいらしてください」とおっしゃると、、それを受けて、「ぜひ染五郎さんのおっしゃった入口から、出口のない扉を開けてください」と菊之丞さん。
最後までコンビネーション抜群でした。

お土産に、高麗屋格子の染五郎さんの手ぬぐいいただきました。
これ、以前染五郎さんがディナーショーのプレゼントに出されていて、私はもちろん当たらなかったのだけど、欲しくてたまらなかったものなのです。ウレシイ

レセプション含めて全部無料ご招待って、主催企業さん太っ腹。
そして、ファザコンサリーちゃん、誘ってくれてどうもありがとう

諸般の事情によりこの公演のためだけの上京でしたが、全く悔いなし のごくらく度



こちらこそ、お付き合いいただき、ありがとうございました。
どんだけ染五郎さんが好きでも、あの雰囲気、あの客層、とても一人では行けませんでしたわ。
舞台を横から観るって、中村座の桜席もそうだけど、あの位置、足元がよく見えて、本当に良かったわぁ。弟、でかした!
サリーちゃん&弟さんのおかげで普通では味わえない
極上の時間を過ごすことができました。
本当にありがとうございました。
あの席、染五郎さんにとっては「罰ゲーム」でも私たちにとっては
またとない席でしたね。