
それもすっかり忘れていたくらい劇団四季とはご縁の薄い不肖スキップですが、この作品を観たいと思ったのは、2016年5月の井上芳雄くんのコンサート 「YOSHIO INOUE sings Disney ~Dream Goes On!」で、彼の歌う「地獄の炎」(Hellfire)を聴いた時から。
悪役フロローのナンバーですが、井上くんの迫力の歌唱に惹き込まれ、「この曲、物語の中で聴いてみたい!」と思ったのでした。
当時「ノートルダムの鐘」は劇団四季の次回作と発表されていましたが、まだ上演前で、やがて始まった東京公演はチケット発売即完売。
京都に来るのを待って、やっと観ることができました。
劇団四季ミュージカル 「ノートルダムの鐘」
原作: ヴィクトル・ユーゴー 「ノートルダム・ド・パリ」
演出: スコット・シュワルツ
脚本: ピーター・パーネル
音楽: アラン・メンケン
作詞: スティーブン・シュワルツ
日本語台本・訳詞: 高橋知伽江
演出スーパーバイザー: 味方隆司 北澤裕輔
音楽監督: 鎮守めぐみ
出演: 田中彰孝 芝清道 岡村美南 清水大星 阿部よしつぐ ほか
2017年8月18日(金) 1:30pm 京都劇場 1階P列(13列目)センター
(上演時間 2時間35分/休憩20分)
劇団四季の役者さんは全く知りませんので日程のみで選びました。
しいていえば海宝直人さんのカジモドが観てみたかったけれど、1週間前に発表されてもなぁ・・・。
という訳で、この日のキャストはこちら。

物語の舞台は15世紀末のパリ。
ノートルダム大聖堂の鐘突き塔にカジモドという鐘つきが住んでいました。
カジモドはフロロー司教の弟の子供ですが、その弟は若い頃、教会を追放され、死の床でフロローに息子を託したのでした。
フロローはその子を引き取り、「出来損ない」という意味のカジモドと名付けました。カジモドは醜い容貌から、塔に閉じ込められ、外の世界と隔離されて暮らしていました。塔上から街を眺め、自由に生きることを夢見る彼の友だちは石像(ガーゴイル)と、鐘だけでした。ある日、はついに塔を降りて道化の祭りの街に出たカジモドは美しいジプシーの踊り子 エスメラルダと出会います。
ディズニー映画で有名な作品ですが、このミュージカルはその映画やミュージカル初演のベルリン版とは違って、より原作(ヴィクトル・ユーゴー原作の「ノートルダム・ド・パリ」)に近い設定となっているそうです。
映画もミュージカルも観たことはなくて、でも原作は読んだことある・・・と思っていたら、キレイに忘れてたよね~。
(これ、同じユーゴーの「レ・ミゼラブル」を観た時にも思いました。ユーゴーを読んだのは中学か高校生ぐらいだったと思いますが、ほんと、何読んでたんだか・・)
ノートルダム大聖堂の大助祭 フロローが「我々は生まれたときから罪人(つみびと)だということを、決して忘れてはならない」と説教しているところから始まります。
そこから時間は過去に巻き戻ります。
クロードとジェアンという孤児のフロロー兄弟が教会に引き取られ、敬虔で勤勉な兄に対して、遊び人の弟が教会を追放され、病の死の床で息子を兄に託し、兄が「神よ、あなたは私に試練をお与えになるのか」と苦しみながらその子を引き取るまでがアンサンブルの歌とともにテンポよく描かれます。
やがて舞台中央に歩いて出てくる一人の青年。
「どこに違いがあるのだろう?」と歌いながら、 自らの顔に醜さを表現する墨を塗り、背中のコブをつけ、フロローにボロの洋服を着せてもらい背中を丸めて・・・カジモドです。
ここから一気に物語の世界へ。
この「どこに違いが・・・」はすべてが終わったラストで、カジモドが顔の墨を取り、背中のコブをはずして、と時間を巻き戻すように普通の青年に戻っているところでもリプライズされますので、人と怪物(と呼ばれるもの)、聖職者と庶民、人種・・・それらのどこに違いが、といったあたりがこの作品のテーマとなるのでしょうか。
原作の内容は忘れているとはいうものの、何となく悲しい結末だったことは記憶にあって、全編を覆う切ない雰囲気。
当時のヨーロッパの聖職者の「絶対権力」感も重なって、物語が進むにつれて、カジモドやエスメラルダが追い詰められていくのが心に迫りました。
結末で、「数年後、ノートルダムの地下室からふたつの白骨が発見され、一人は背骨が酷く曲がった男だった。男は女を抱きしめるようにしていた・・・というところでは「アイーダ」のラストを思い出したりもして。
聴きたいと思っていた「HELLFIRE(地獄の炎)は一幕終盤に歌われました。
迫力たっぷり。
フロローがエスメラルダに心奪われ、その思いを「邪悪な欲望」と神の許しを請うフロロー。
自分にそんな不純な思いを芽生えさせたエスメラルダを呪い、「私を受け入れなければお前を ”地獄の炎” に送る!」と歌うのでした。
この場面の前にカジモドがエスメラルダを思って歌う「HEAVEN’S LIGHT (天国の光)」というナンバーがあって、同じようにエスメラルダを思っても、感じ方、心の持ち方で天国と地獄になるのだと、「対になってるんだ!!」とうれしい驚き。
こういうことはやはり舞台を観ないとわかりませんので、やっぱり観に行ってよかったなと思いました。
カジモドの田中彰孝さん、フロローの芝清道さんはじめメインキャストの皆さんの歌唱はもちろんすばらしかったのですが、特に感じたのはアンサンブルやクワイヤのすばらしさ。
コーラスはとても重層的で表情豊か。
カーテンコールで全員揃った時、「これだけの人数であのコーラスを?」と驚いたくらいです。
今さらながら劇団四季の底力を知った思い。
京都劇場はオープン当初に行ったような気がするのですが(2002年 こけら落としの「オペラ座の怪人」観たのかなぁ?)、全く記憶になくて、駅ビルのもっと上の階だと思っていたらすぐ上の階で、客席もいい感じに階段状になっていてとても見やすくてよい劇場でした。
キャスト発表のシステムとチケットの取り難さを何とかしてくれたら劇団四季ももっと観に行くのに の地獄度


