
エキゾチシズムと退廃。
華やかさと暗闇。
時代の光と影。
cube 20th. presents
音楽劇 「魔都夜曲」
作: マキノノゾミ
演出: 河原雅彦
美術: 松井るみ
音楽: 本間昭光 バンドマスター: 立川智也
出演: 藤木直人 マイコ 小西遼生 壮 一帆
松下洸平 秋夢乃 高嶋菜七 コング桑田
春風ひとみ 山西 惇 村井國夫 橋本さとし ほか
2017年8月11日(金) 1:00pm サンケイホールブリーゼ 1階K列下手
(上演時間 2時間45分)
物語: 1939年 上海は欧米や日本など列強各国が租界(行政自治権や治外法権を持つ外国人居留地)を設け、外国人が多く住み、「魔都」と呼ばれる゙異国情緒が溢れる華やかな都市となっていました。一方でアヘン売買が゙蔓延、現地の中国人たちは貧しい生活にあえいでいました。
そんな上海に遊学している白河清隆(藤木直人)は、ある日、中国人の父と日本人の母を持つ兄妹 周志強(チョウ・チーチャン/小西遼生)と周紅花(チョウ・ホンファ/マイコ)と出会い、友情を育んでいきますが、清隆はいつしかホンファに惹かれていきます・・・。
ブリーゼのロビーに入るとスモークをたいたように煙っていて、それは舞台から客席へと流れていました。
私が会場に入った時には舞台上ですでに生バンドの演奏が始まっていて、ほどなく歌手(秋夢乃)が登場。華やかにパンチ溢れるヴォーカルを聴かせてくれて、気分は一気に上海のジャズクラブへ。
上海の街角から始まって、白河清隆の邸宅へと移りますが、主な舞台は新田日出夫(橋本さとし)が支配人を務めるクラブ「ル・パシフィーク」。
ここのお客になる条件は「この店では上機嫌でいること」。
冒頭のバンドも歌手も、このクラブの出演者たちで、クラブのショーとして楽曲が入るので、あまり唐突感がなく、「音楽劇」としては流れが自然だなぁと思いました。
秋夢乃さんは存じ上げませんでしたが四季ご出身ですばらしい歌唱を聴かせてくれますし、コング桑田さん、春風ひとみさん、橋本さとしさん、小西遼生さんと歌うまさんが揃っているので音楽だけでも楽しい。
お医者さん役の村井國夫さんがル・パシフィークのステージで歌を披露してくださったのもとてもうれしく耳福でした。相変わらずいい声だ。
劇中、効果的に使われる唱歌(「旅愁」だったかな?ふけゆく~ 秋の夜~という曲)や 李香蘭が歌う「蘇州夜曲」も印象的でした。
主人公の白河清隆は、近衛文麿首相のご長男 近衛文隆さんをモチーフとして彼の人生からインスピレーションを得てつくられた物語ということですが、甘粕正彦や川島芳子、蒋介石の名前も出てきて、フィクションの中に史実を散りばめたような構成です。
マキノノゾミさんの名前が頭の片隅にチラリと残っていたので、作・演出かと思っていたら、演出は河原雅彦さんだと幕間に知りました。
「まちゃぴこ、丸くなったよね~」というのがイチバンの印象。
時代背景からもチーチャンとホンファが本人たちの言うように商人でも兄妹でもないことも、何か目的があって清隆に近づいたことも容易に想像がつきます。
ホンファが自分の使命と恋心の板挟みになって・・・というのも予想通りの展開。
軍靴の音が聞こえるような時代ながら、ル・パシフィークは華やかな別世界で、ドロドロ血が流れたり悲惨なことが起きたりもしません。
ラストの銃撃戦?には少し驚きましたが、すべて川島芳子さんの企みということで、誰も死ぬことなく、ホンファを清隆に取られたチーチャンもいい人で、めでたしめでたしのハッピーエンド。
ね、まちゃぴこ、丸くなったでしょ?(笑)
想像していたほど「魔都」ではなかったけれど、最後まで楽しく拝見しました。
キャストもみんなよかったですが、壮一帆さんの川島芳子がとりわけ印象に残りました。
配役を知らなかったのですが、壮さんが男装して出て来た瞬間「川島芳子だ!」と思いました。
男装の麗人で男役時代を彷彿とさせるのはもちろん、退団して女優としての活動を経てこその柔らかさも深みも加わって、、
藤木直人さんの清隆はいかにも正統派のおぼっちゃまがよくお似合いで、端正で品よくお行儀よく。
誰に対してもやさしくて疑うなんてことを知らず、ポジティブなところもいかにも育ちがよくて苦労知らずといった雰囲気。
白いスリーピースがあんなに似合う人、そうそういないと思います。
李香蘭はダブルキャストでこの日は高嶋菜七さん。
可愛かったけれど、李香蘭役は出番は短くてもその場を圧するような存在感が欲しいところで少し残念でした。
この日はアフタートークがあったのですが、コングさんの進行で藤木さん以外は全員女性だったことから「ガールズトークで」となって、最年少の高嶋菜七さん(20歳!)大活躍でした。
西田(村井國夫)と芽衣(春風ひとみ)について、「微妙に夫婦感 漂ってる」「過去に何かありました」とか、新田(橋本さとし)と川島芳子(壮一帆)は「あの後、絶対付き合ってます」とか(笑)。
そんな中、藤木直人さんが、「サンケイホールブリーゼは僕が初めて舞台に立たせていただいた場所です。こちらのこけら落とし公演で」とおっしゃって、そうそう、「冬の絵空」ね、懐かしい・・となりました。
もう9年も前なんですって(遠い目)。
前から7列目?までのプレミアムシート S席+4000円でお土産つきってどんな商法よ の地獄度


