
いのうえ歌舞伎もRXもおポンチも、ぜーんぶひっくるめて、「これが新感線」「新感線はこうでなくっちゃ」を見せていただいた感じです。
派手で楽しくてそれでいてドラマはしっかり立ち上がり。
キャストが違うとはいえ同じホンをこうも変えてくるなんて。
中島かずき&いのうえひでのり おそるべし!
ONWARD presents
劇団☆新感線 「髑髏城の七人」 Season 鳥
Produced by TBS
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
美術: 堀尾幸男 照明: 原田保
衣装: 堂本教子 音楽: 岡崎司 作詞: 森雪之丞
振付: MIKIKO
殺陣指導: 田尻茂一 川原正嗣 アクション監督: 川原正嗣
映像: 上田大樹
劇中歌: 神田沙也加 滝和祥 金子鉄心(笛)
出演: 阿部サダヲ 森山未来 早乙女太一 松雪泰子 粟根まこと 福田転球
少路勇介 清水葉月 梶原善 池田成志 右近健一 山本カナコ 村木仁 ほか
2017年7月3日(月) 1:00pm IHIステージアラウンド東京 10列センター
(上演時間 3時間30分)
Season 花 の感想はこちら (① ② ③ ④)
歌やダンスの他にSeason 花ともこれまでの髑髏城とも違っていた点は
・捨之介に天魔王を憎む明確な意志(そこに至る理由)があること
・天魔王が蘭兵衛こと蘭丸への、ひいては信長への屈折した思いを明言したこと
だと思います。
外枠の部分では、兵庫に息子がいた、なんていうのもありますが。
そして歌&ダンスが加わった分、カットされているシーンが散見。
冒頭の沙霧を助ける場面に兵庫&荒武者隊が登場しないとか、天魔王が捨之介に夢見酒をしみ込ませた鎧・仮面をつける場面はあっさりなくなっていました。
歌では松雪泰子さんの活躍が目立っていました。
右近健一さんや山本カナコさんの歌声を聴いているといかにも新感線の公演を観ているという気分になりますし、「劇団員も歌えるキャスト揃えてきたな」とも思います。
末來くんも夢見酒のシーンで相変わらず素敵なヴォーカル聴かせてくれていました。
カッチョイイダンスも披露してくれていましたが、もう少し観たかったな。
太一くんは歌わず・・・歌えるのに。蘭兵衛のキャラ的にNGだったのかな?
信長・捨之介・天魔王が天・地・人という枠組みは変わりませんが、今回の捨之介はまさに地を行く、というか草の者とも呼ばれる忍びだったという設定。
その忍びが光秀謀反を察知して、知らせようと急ぐ道に立ちはだかったのが天魔王の謀略。
この謀略の内容が設定としては少し甘いかなぁという気もしますし、忍びがそんな心の弱さ(やさしさともいえる)でどうする、と思わないでもないですが、ともかくそのせいで捨之介は知らせに行くのが遅れ、結果として本能寺に間に合わず、「あいつだけは生かしておけねぇ!」と天魔王に対して拳握りしめている・・・というのがかなり新鮮。「ぜーんぜん 『・・昔の縁も三途の川に捨之介』じゃないじゃん」とは思いましたが。
一方の天魔王。
三人が天と仰ぐ信長は彼らにとって絶対神のような存在で、憧れであり畏怖の対象でもあったはず。
天魔王はその思い入れが人一倍強かったのではなかったか。
その信長が光秀謀反の業火の中で「蘭丸は生き延びて自分の人生を歩め」とその寵愛する者の名だけを口にするのを聞いた時、自分のことはその存在すら眼中にないと悟った時、その胸中はいかばかりだったか。
きっとそれまでにも同じ思いをしたことがあって、蘭丸への嫉妬心、ひいては自分を愛さない信長への渇望、転じて怒りが天魔王を突き動かし、あんな人は殿ではない、信長を消し去って己が天に代わる者となるという考えに至ったのではないでしょうか。
この屈折した思いを天魔王が自虐的に蘭兵衛に吐露する場面・・・”本当に殿の寵愛を受けていた” 蘭兵衛が「俺を謀ったか(たばかったか)」と応ずる場面の切なさ哀しさ苦さ。
この後の未來天魔王 vs 太一蘭兵衛のシビれる殺陣含めて、髑髏城史上に残る名場面だと思います。
天魔王と蘭兵衛の関係がこれまでにも増して濃密に描かれている分、捨之介と蘭兵衛の関係性はかなり淡泊な印象。
また天魔王にとっても(捨之介が一方的に憎悪しているとはいえ)捨之介は取るに足らぬ存在として歯牙にもかけていないように私の目には映りました。
うまい言葉が見つからないのですが、捨之介と天魔王を一人二役でやっていた均衡感が完全に払拭されたというか、もはや二役は考えられないという感じ。
何度も書いていますが、私はあくまでも捨之介と天魔王は一人二役派ですが、Season 鳥はそれを分けた形でのある種完成形と言えるのではないかしら。
その意味では、原点回帰ともいえる Season 風でどんな一人二役を見せていただけるのか、これまた楽しみです。
兵庫の改変は私はあまり納得できなかったな。
転球さんがどうというより、兵庫を諫めに来る存在が息子・・というか目下の者というあたりで2人の力関係も、諫めに来た者が逆に兵庫を助け励ますというニュアンスも変わってくると思うのですが。
というか、個人的には花、鳥とも兵庫がウィークポイントかなぁという印象です。
阿部サダヲさんのこれまでの捨之介像を一蹴するような役者っぷりは、そういう描かれ方であり演出のされ方だということを差し引いてもお見事の一言につきます。両手で持つ剣も逆手づかいも見せてくれる身体能力ハンパなく、笑いとシリアスの緩急も鮮やか。
未來・太一の二人の世界といい、松雪泰子さんのさすがのいい女っぷりといい、梶原善さんの食えなさっぷりといい(ほめてます)、池田成志さんの体張りっぷりといい、粟根まことさんの算盤さばきといい(「またつまらぬものを数えてしまった」久しぶりに聞いたよね)、いろいろ言いたいキャストについては長くなりそうなのでまた次回観た時に書きたいと思います。
今回映像が下から上へバ~ッと駆け上がるという感じで上下に流れるシーンが何度かあって、よりアトラクション感がありまして(USJの「スパイダーマン」的な)、三半規管が弱い私はちょっと頭クラっときました。
あと、衣装の感じが前回とは違うなぁと思っていたら、今回の衣装担当は竹田団吾さんではなく、堂本教子さんだったのですね。
笑いも切なさも涙も、歌もダンスもあって、「新感線を観た」「これが新感線の舞台よ」と心から感じられる作品。楽しかったです。
それなりにツッコミどころもあるのですが、「楽しいから許す」という気分にもなります。
キャストも剛腕揃いですが、年齢バランス的には少し微妙に感じる面も。
私が観たのは開演して間もなくでしたので、この先の進化も楽しみです。

ロビーには Season 花 出演者全員?のサイン入りパネルが
そして私はやっぱり早乙女太一の無界屋蘭兵衛が好きだ~



