2017年07月11日

花をもって太閤殿下をお諌めする 「花戦さ」


hanaikusa.jpg萬斎さんも猿之助さんも好きな役者さん。
信長から秀吉へと続く時代も得意分野。
この映画には大いに興味があるところでしたが、わざわざ映画館まで行って観るのはどうかなぁと思っていたところ、天からチケットが降ってきた(笑)。
ので、喜んで観て参りました。


「花戦さ」
原作: 鬼塚忠
監督: 篠原哲雄
脚本: 森下佳子
音楽: 久石譲
出演: 野村萬斎  市川猿之助  中井貴一  佐々木蔵之介  
佐藤浩市  高橋克実  山内圭哉  和田正人  森川葵  
吉田栄作  竹下景子 ほか

2017年6月24日(土) 3:00pm あべのアポロシネマ シアター8
(上映時間 127分)



物語: 十六世紀の京都。戦乱に荒れ果てた都に花を生けることで世の平穏を祈り、人々に生きる希望を与えんとする「池坊」と呼ばれる僧侶たち。
その中の一人、池坊専好(野村萬斎)。
織田信長(中井貴一)亡きあと天下を手中に収めた豊臣秀吉(市川猿之助)の圧政が人々を苦しめ、専好と心通じ合っていた千利休(佐藤浩市)が自害に追い込まれ、専好を支えてくれた幼なじみの吉右衛門(高橋克実)が捕えられ処刑されるのを目の当たりにして、専好は秀吉と戦おうと立ちあがります。力ではなく花の美しさで。


華道にも池坊にも疎く不勉強のため池坊専好という人が実在の人物ということも知りませんでした。
原作も読んでおらず、どこまで史実に忠実に描かれているのかもわかりませんが、この映画の中の専好さんは世事に疎くて人の顔や名前が覚えられず、ただ花を愛し、好きな花をいけていれば幸せといった風情の愛すべき人物でした。

その専好さんが、自らの意ではないまま池坊の執行に祀り上げられ、その立場ゆえに自らの奔放な「花」を封印していた頃、千利休と再会し茶室に招かれて一服いただいた時、涙を流して「しんどい」と本音を漏らす場面が一番印象に残りました。
その時、利休が「もう一杯飲むか?」「点てよか?」と言うやさしく温かな声も。


物語の後半で、秀吉と利休の確執がどうしようもなくなり、秀吉はもう利休憎しでいっぱいになっている時の回想シーンで同じ利休の言葉が流れて、「あぁ、かつて秀吉も、この利休のお茶に癒され救われたことがあったんだ」と思うと切なさで胸がいっぱいになりました。

中井貴一さんが信長で佐藤浩市さんが利休って配役逆じゃない?と観る前には思っていたのですが、憂いを湛えた瞳の佐藤浩市さんの千利休 とてもよかったです。

千利休が切腹する直接の原因となったと言われる大徳寺三門の利休の木像をはじめ、2日目で中止となった北野大茶会、秀吉の金の茶室や利休の草庵、黒楽茶碗など、私でも知っている史実が散りばめられて展開する物語は、池坊専好の物語であると同時に、千利休と秀吉のドラマであり、市井 vs 権力の闘いの話でもあり。
それらが美しい花々とともに描かれます。

戦国時代を舞台にしながら、主役は武将ではなく、いけばなに夢中の一風変わった僧侶であり、彼の周りにいる町家の人たち・・・六角堂に集って専好のいけた花をあれこれ評したり心配したり、時には世相を皮肉ったりする京の人々の明るく自由闊達なこと。
それだけに物語の後半で暴君と化した秀吉の粛清の犠牲になる吉右衛門や幼い少女 季(伊東蒼ちゃん!)の悲劇が際立っていました。

悪の秀吉・清廉な利休というステレオタイプな描き方にはいささか抵抗を感じたり、専好の一世一代のいけばなが信長の前と秀吉の前とで同じ結末ってどーよ?とか、れん(森川葵)が生きていたというラストのエピソードは蛇足じゃない?と思ったりもしましたが、野村萬斎さんが笑っちゃうくらい池坊専好にぴったりで、憎々しい猿之助さんも、終始おおらかな高橋克実さんも役によくハマっていて、全体を通しておもしろく拝見しました。

それにしても、序盤にチラリと出ただけで強烈な存在感を残す信長の中井貴一さんはじめ、前田利家の佐々木蔵之介さん、兄弟子 池坊専伯の山内圭哉さん、石田三成の吉田栄作さん、浄椿尼の竹下景子さんと、少しの出演の人たちがとにかく豪華。
そんな中、専好とは対照的に世情にも通じて常識的で、終始専好を支える弟弟子 池坊専武を演じた和田正人さんがその存在とともに光っていました。



ライビュでもゲキ×シネでもシネマ歌舞伎でもなく、純粋に映画を観に映画館に行くのはとても久しぶり のごくらく地獄度 (total 1240 vs 1249 )


posted by スキップ at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | movie | 更新情報をチェックする
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