2017年05月23日

王道少女マンガ 「王家の紋章」


ouke7.jpg原作は1976年に連載が始まった少女マンガで今も連載中なのだとか。

昨年8月帝国劇場で初演されて大人気で即チケット完売。
初日に2017年の再演が発表されましたが、そんなこと最初から決まっていたに違いないのに勿体ぶらずとっとと発表していればあんなにチケ難にならなかったのでは?・・・というのはさておき、原作を読んだことなくてストーリーも知らず、もちろん初演も観ていないままの参戦です。


ミュージカル 「王家の紋章」
原作: 細川智栄子あんど芙~みん
脚本・作詞・演出: 荻田浩一
作曲・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
音楽監督: 鎮守めぐみ
振付: 原田薫  新上裕也
美術: 二村周作
出演: 浦井健治  新妻聖子  平方元基  伊礼彼方  濱田めぐみ  
山口祐一郎  愛加あゆ  出雲綾  矢田悠祐  木暮真一郎 ほか

2017年5月17日(水) 6:00pm 梅田芸術劇場 1階10列(6列目)下手
(上演時間 2時間55分)



oke5.jpg

キャロルとイズミルがダブルキャスト。
ミュージカル俳優さんのことはあまり詳しくないのですが、ワタシ的にこの組合せ一択でした。



oke6.jpg

ロビーに展示されていた原画をコラージュしたもの。
こうして見るとイズミル カッコいい。


物語: 考古学好きなアメリカ人の少女キャロル(新妻聖子)はエジプトでピラミッドの発掘調査をしていた時、呪術によって古代エジプトにタイムスリップしてしまいます。そこで若きファラオ メンフィス(浦井健治)やその姉アイシス(濱田めぐみ)に出会ったキャロルは、奴隷扱いされながらもその黄金の髪と白い肌が人々を魅了し、現代から持ち込んだ歴史や医学の知恵を発揮して「ナイルの娘」と巫女のような存在となっていきます。やがてキャロルはメンフィスと愛し合うようになりますが、エジプトと敵対するヒッタイト国の王子イズミル(平方元基)に拉致され・・・。


いわゆるシンデレラストーリーで、舞台はエキゾチックな古代エジプト、衣装含めビジュアルは華やか、王子たちはイケメン、何度もピンチに陥りつつ何とか切り抜ける、と、いかにも少女マンガの王道という設定で、少女(なのか?)読者に長く支持されていることも変わらぬファンがいることもよく理解できます。

キャロルが現代から古代エジプト→現代→古代エジプトと行き来するためのファクターがよくわからない(示されていない)、とか、言葉の問題は?とか、ツッコミどころは多々ありつつも、全くストーリーを知らずに観てもわかりやすく、物語的には楽しんで拝見しました。


ただ、一つの舞台作品として捉えた時、脚本的にあまりうまくいってないのではないか、と感じました。
原作は多分、キャロルが主人公なのだと思いますが(少女漫画だし)、このミュージカルでは浦井健治さん演じるメンフィスが主人公です・・・よね?(誰に聞いているのだか)

冷酷で独裁的で孤独なファラオが自分の世界とは異なった価値観を持ったキャロルと出会い、愛を知り、人間的にも成長していく、というあたりがこの作品のテーマになってくるのではないかと思うのですが、残念なことに私にはメンフィスの心の動きが感じられませんでした。
ついでに言えば、キャロルがメンフィスを愛するに至る気持ちの変化も今ひとつわからず。

もしそれが私が原作を読んでいないことに起因すると言われる向きがあるならば、一つの舞台作品として世に出す以上、原作があろうがなかろうが、3時間弱の舞台の中でそれを観客に見せる、感じさせるのが演出や脚本の腕の見せどころであり力量なのではないかと申しあげたいです。

一幕前半は歌も台詞も説明に終始していて意識失いかけるし(←私が)、二幕に入って、もう少し2人のドラマが深く描かれるのだろうと期待していたら主要キャストがソロや複数でやたら歌い上げる場面が続いて、単調のあまりまた意識失いそうになるという・・(またか)。

楽曲も聴きやすいけれどもあまりキャッチーでなくて印象に残らないなぁと思っていたら、リーヴァイさんだと後で知ってびっくり。
せっかくミュージカルなのだからソロで歌い上げる曲ばかりでなく、アンサンブルのコーラスがぶわぁ~と歌う中、ソロの人が違うメロディで割って入る、みたいな(リーヴァイさんの曲で言えば「エリザベート」の「最後のダンス」のような)曲が何曲かあればもっと盛り上がったのではないかしら。
もっとも、そのあたりは作曲者というより演出家や音楽監督のテリトリーかとも思いますが。
まぁ、そもそもアンサンブルの数が少ないですわね。
エジプトとヒッタイトの戦闘?をダンスで表した場面なんて「しょぼっ!」と思いましたもの。


とはいえ、メインキャストは歌うま揃いで聴き応えありました。
浦井健治さんはエキゾチックな顔立ちに青いシャドーを入れたメイクが難なくハマって王子様でした。
黒髪もよくお似合いで豪華なコスチュームに着負けすることなく堂々。
マントさばきが上手いとかカッコイイとか評判になっているようでしたが、宝塚を見慣れた目からはまぁフツーかな(笑)。
前述したように脚本的に書き込み不足(と思われる)なので、心情表現とか大変だったのではないかなと思いますが、キャロルを愛するようになってからは歌声が優しい感じに聞えたり、キャロルを抱きしめる手が本当に愛おしい(ここの2人の身長差、萌えるよね)という風情でステキでした。
それにしても浦井くん、歌う時二重あごになっていたけれど、あれは私の目の錯覚か・・・錯覚だと信じたい。

キャロルの新妻聖子さんはさすがに歌唱はすばらしくて、ずっと聴いていたいようなのびやかな声。
口跡よくて、お芝居も細やかで的確。
しかしながら如何せんキャラ違いとしか言いようがありません。「実はデキる女がブリッコしてる」ようにしか見えませんもの。
メイクや髪型ももう少しがんばっていただきたい。

新妻さんはキャラクターとしてはアイシスだと思うのですが、濱田めぐみさんのアイシスがこれ以上ないほどハマりすぎているのがツラいところ。
神秘的で強くて哀しいアイシス。
アイシスのメンフィスへの思いは強く一方的のように見えますが、メンフィスはそれに気づいていたのでしょうか。そしてどう思っていたのかな。
このメンフィスとアイシスの関係をもっと深く描くことでメンフィスのキャラクターも主役としてもっと立ち上がってきたのではないかと思いました。


いや~、それにしても「ヒッタイト」って久しぶりに聞いたよね(←最初の感想そこ?)
多分、高校卒業以来聞いたことも口にしたこともない言葉でしたが「ヒッタイト」と聞いただけで「鉄器の国だ!」と思い出したもんね。三つ子の魂なんとやら、です。




「まだ終わらないのかな」と上演中に時計観たの久しぶりだわ の地獄度 (total 1217 vs 1223 )


posted by スキップ at 23:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
待ってました!
おっしゃるとおりです、本当に!
原作を読んだときのドキドキがまったく感じられない舞台でありました。
Posted by parco30 at 2017年05月24日 16:11
♪parcoさま

あの折はありがとうございました。

私は原作のことは全くわかりませんが、ミュージカル作品
としてももう少しトキメキがほしいところです。
他にも書きたいことはいろいろありますが、これくらいで
勘弁しといたりました(≧∀≦)
Posted by スキップ at 2017年05月25日 07:41
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック