2017年05月09日

中村屋 with オモダカーズ 「五月花形歌舞伎 昼の部」


hanagata201705.jpg松竹座 五月花形歌舞伎は、市川猿之助さんと中村勘九郎さん、七之助さんが2009年2月花形歌舞伎以来、8年ぶりに大阪で共演。
しかも、昼の部は三代猿之助四十八撰という澤瀉屋さんの演目に中村屋兄弟が出演して、夜の部は勘三郎さんお得意の中村屋由縁の演目に猿之助さんが出演という豪華共演です。

猿之助さん+中村屋兄弟だけでこんなにガッツリからむというのはあまり記憶にないくらいで観る側の期待も高く、チケットの売れ行きも上々。
ゴールデンウィーク中は昼夜とも完売していました。


大阪松竹座新築開場二十周年記念
五月花形歌舞伎 昼の部

2017年5月3日(水) 11:00am 松竹座 1階2列下手
(上演時間 3時間50分)


一、戻駕色相肩 もどりかごいろにあいかた)
出演: 中村勘九郎  中村児太郎  中村歌昇


菜の花や桜が咲き乱れる京の紫野。
浪花の次郎作(勘九郎)と吾妻の与四郎(歌昇)が担ぐ駕籠が島原から戻って来ます。
二人はひと休みして互いに上方と江戸のお国自慢を始め、駕籠の中から禿(児太郎)を呼び出し、京、大坂、江戸それぞれの廓話を語っていきます。やがて、次郎作と与四郎の懐から連判状と香炉が落ちて・・・。

これ、初見で舞踊なのですが、とても楽しかったです。
大詰で次郎作と与四郎が身バレして見得するところなんて、拍手しながら「いいね、いいねぇ~」と心でつぶやいていました。


まず、昼夜それぞれ通し狂言だと思っていましたので、「金幣猿島郡」の前に何かあるのか、と会場に着いてから知った訳です。
当然配役も把握していなくて、幕開きいきなり歌昇さん、勘九郎さんが揚幕から駕籠かついで出てきて、七三で長々とやり取りをするとか、聞いてないよ~状態。ほぼ真横で二人を見上げる形でずっとヘラヘラ笑っていたと思います、私。

歌昇さんは白塗り、勘九郎さんは赤っ面っぽい拵え。
二人とも踊りはキビキビ、台詞はハキハキ。
歌昇さんが遊女役になって勘九郎さんに寄り添う、なんてご馳走も。
児太郎くんは禿にしては少しお姉さん過ぎる気もしましたが綺麗だから許す。
いやしかし、この三人並びの絵面は美しいわね。

互いのお国や郭遊び自慢が続いて、こういう楽しい舞踊劇なのねと思っていたら、二人が懐から何か落としたところで状況が一変。
歌昇さん与四郎が「真柴久吉~」と名乗ったところで、「あ、そういうこと。じゃあこっちは五右衛門だ」と思ったら勘九郎さん「天下の大泥棒 石川五右衛門っ!」と。
いかにも歌舞伎らしい「〇〇 実は・・」で楽しく幕となりました。


ニ、三代猿之助四十八撰の内 金幣猿島郡 (きんのざいさるしまだいり)
大喜利所作事 双面道成寺(ふたおもてどうじょうじ)
市川猿之助宙乗り相勤め申し候
作: 四世鶴屋南北
補綴: 武智鉄二
補綴・演出: 石川耕士
演出: 市川猿翁
出演: 市川猿之助  中村勘九郎  中村七之助  中村歌昇  市川弘太郎  
     市川笑三郎  市川猿弥  市川門之助 ほか


謀反の末討たれた平将門の妹 七綾姫(七之助)は宇治の通円堂に匿われて、ここで恋人の頼光(勘九郎)と再会します。通円堂の堂守 如月尼(門之助)の娘 清姫(猿之助)はかつて出会った男を恋慕うあまり泣き焦がれて盲目となっていました。しかし源氏の重宝・村雨丸の威光により目が見えるようになると、思いを寄せていた男頼光と七綾姫が恋仲だったとわかり、七綾姫への嫉妬に狂って蛇体と化します。
一方、七綾姫に横恋慕したため官職を追われた藤原忠文(猿之助)も嫉妬心から鬼と化し、やがて忠文と清姫の霊が合体し空へと飛び去っていきます・・・。


「伯父(猿翁さん)が復活した狂言の中でも完成度の高い作品」と猿之助さんはおっしゃっていましたが、まさしくザッツ歌舞伎エンタテインメント!
ドラマとしてのおもしろさはもちろん、踊りあり立廻りあり宙乗りありぶっ返りあり押し戻しあり・・・次々繰り出されて飽きるヒマがありません。

そしてザッツ猿之助オンステージ!
女方・立役・蛇体・怨霊、軽々宙乗りに超絶技巧の舞踊からドヤ顔まで、猿之助さんのアレコレをたっぷり楽しむことができます。
いや~、楽しい

2014年10月に新橋演舞場で観た演目。
内容は比較的覚えていたのですが「照明がいつもの歌舞伎に比べて立体的で綺麗だなぁ」と思って幕間に確認したら原田保さんで、「あー、そうだった」と思い出しました(2014年の感想にも同じこと書いてる)。

七綾姫の身替りにと諭され納得もしていた盲目の清姫が、目が見えるようになって恋しい人が頼光だとわかった途端、手のひらを返したように「死ぬのはいやじゃ」と言い出し、恋敵の七綾姫にライバル心むき出しにして叩いたりひっぱり回したりするところはやはりおもしろくて笑ってしまいます・・・清姫の心情を考えると切ないのだけれども。
ちょっとぼんやりしていて七姫にまんまと逃げられてします忠文も猿之助さん的には他ではあまり観ることのできない役どころだと思います。

大詰の大喜利所作事 双面道成寺の三つ面の踊りが、四月歌舞伎座で観た「奴道成寺」と重なっていて、あの時「もう1回観たーい!」と思ったばかりでしたので、何だか得した気分。

それにつけても、白拍子花子(実は清姫の霊)と狂言師升六(実は忠文の霊)の踊り分けはもちろん、太鼓持ち・お大尽・おかめ の三つの面を瞬時につけ替えて、お面をつけ変えるたびにガラリと変わる踊り分けの鮮やかなこと。

前回演舞場ではモニターを通してしか観られない座席でしたので、今度は絶対花横で、と思っていた花道の百回り。
グルングルンという回転が起こす風がブワッと頬に感じられる迫力。
最後ジャンプする時、「ッシャーッ!!」という気合の声を発した猿之助さん。
あの声を聞けただけでも花横座った元とったワ、と思いました。


間狂言の能力白雲、黒雲は弘太郎さんといてうさん。
「おきゃーがりこぼし」とくるんくるん回るところ、身体能力高い二人で見せてくれました。

「押し戻し誰?」と思っていたところ、力強い隈取も綺麗にキマった歌昇さんで「ひょ~」となりました。
歌昇さん、小柄ではありますが、動きが大きく、とてもいい声で、素敵な田原藤太でした。

猿弥さん、門之助さん、笑三郎さんと安定の実力派オモダカーズが並ぶ中(門之助さんは屋号違いますが)、この座組に勘九郎さん、七之助さんが加わっていることがやはりとても新鮮に映りました。
清姫や忠文がどんなに嫉妬の炎をたぎらせても、頼光・七綾姫カップルはどこ吹く風といつもラブラブでビジュアル綺麗。
そこだけ涼やかな風が吹いているような勘九郎さんの頼光はあくまでも凛々しく爽やか。
こんなに綺麗ならそりゃ男はみんな惚れるし守りたくなるよね、な七之助さん七綾姫ととてもよくお似合い。
七之助さんはとても綺麗な海老反りも見せてくれて、女子力ならぬ女方力高いなぁと改めて思いました。


澤瀉屋さんの中に入った中村屋さんを堪能。
これからもこんなシャッフル、時折見せていただきたいです。



hanagata2.jpg

合体した忠文と清姫の霊が空へと去った後の花道。キラキラでした。



帰宅したらバッグの中にもキラキラがまぎれ込んでいて何だかうれしくなりました のごくらく度 (total 1209 vs 1213 )



posted by スキップ at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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