2017年03月14日

倉持裕テイスト 乱歩の迷宮 「お勢登場」


osei.jpg倉持裕さんといえば「鎌塚氏」シリーズのナンセンス?ギャグものから最近では新感線の「乱鶯」、今年観た「磁場」といった作品まで、振り幅の広い作家さんという印象。

その倉持さんが「江戸川乱歩の『本格推理もの』『怪奇・伝奇もの』短編小説から厳選した8本を複雑な手法で編み上げ、一本の演劇作品として再構成した」という舞台。
興味シンシンでした。


「お勢登場」
原作: 江戸川乱歩 
作・演出: 倉持裕
美術: 二村周作 
照明: 杉本公亮  衣裳: 太田雅公
出演: 黒木華  片桐はいり  水田航生  川口覚  
     粕谷吉洋  千葉雅子  寺十吾  梶原善

2017年3月5日(日) 1:00pm シアター・ドラマシティ 3列センター
(上演時間 2時間20分)



モチーフとなっているのは、「二銭銅貨」 「二癈人」 「D坂の殺人事件」 「お勢登場」 「押絵と旅する男」 「木馬は廻る」 「赤い部屋」 「一人二役」の8篇。
いずれも読んだことがなく、舞台を観終わった今になっても、タイトルだけであの部分とわかるものもあれば、「どれ?!」と思う作品もあります。

8つのストーリーが順に出てくるのではなく、1つの物語の中に別の物語が入り込んだ入れ子構造になっていて、大正と昭和の時代を行き来しつつ、いろいろなエピソードや謎解きを混じえて8本が複雑にコラージュされて輻輳する世界。
全体が乱歩らしい妖しく幻想的な雰囲気に包まれていて迷宮感たっぷりです。

そしてその物語の軸となっているのが、お勢(黒木華)。
最初の登場シーンの鮮やかなこと。


年の離れた病身の夫を衝動的に長持に閉じこめる「お勢登場」
気のいい同僚の中年男に貢がせる「木馬は廻る」
自分の犯罪を隠すため隣室の画学生を夢遊病者に仕立て上げる「二癈人」
妖艶で色っぽかったり、無垢な少女のようだったり、得体の知れないしたたかさを見せたり。
倉持さんが「彼女が演じるならこういう女性だろう」と黒木華さんをイメージして書いたというお勢を見事に体現していました。
相変わらず口跡いいし、現代劇のイメージ強いですが、着物もよく着こなして所作もこなれているのに驚き。

他の役者さんは皆 複数の役を兼ねていて、倉持さん曰く、「妻の不貞に耐える夫を演じていた俳優が、次の場では浮気者になり、また、とある長屋でマゾヒストだった女優が、別の下宿屋では純朴な画学生になる」といった具合。
さすがに達者な役者さん揃いでどの役も見事に演じ分けていらっしゃいましたが、元々のストーリーを知らないので同じ人が別の役者さんが演じていて少し混乱することも。
「押絵と旅する男」の浅草十二階から双眼鏡で覗く兄(寺十吾)はお勢さんの夫の格太郎(寺十吾/格二郎(水田航生)の兄)とは別の人なの?的な。

とはいうものの、ストーリーはどれもおもしろかったです。
「二銭銅貨」 の謎解きのエピソードなんて、格ニ郎同様、私も松村くん(川口覚)にしてやられた気分。
夢遊病のくだりはお勢さんのでっち上げとすぐに思い至りましたが、ラストの旅館でのドンデン返しにはまたヤラレましたワ。

舞台は二階建構造になっていて、上手、下手に階段、中央に格子引き戸。
入れ子構造に合わせて3つに分割されたセットが前後にスライド。旅館の一室になったり下宿屋になったり。
格太郎が閉じ込められた長持の中など映像を使う場面もありましたがどこかノスタルジック。


この日は大千穐楽でカーテンコールでは倉持裕さん登場。
「複雑な構成の芝居で自分で書いていても果たして皆さんに理解していただけるか不安でしたが、連日たくさんのお客様に観ていただいて。今日もこんなにたくさん、温かい拍手をありがとうございました」と。
ラストはスタオベとなりました。




前作 「るつぼ」に続いて、私の中の黒木華ちゃん、すっかりしたたか悪女のイメージ の地獄度 (total 1718 vs 1721 )



posted by スキップ at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック