2017年02月19日

「お気に召すまま」 キャスト編


asyoulikeit1.jpg柚希礼音さんがロザリンドをやると知った時、最初に思ったことは「ロザリンドって男装もするからちえちゃんにぴったり!でも最後のウエディングドレスどうするんだろ?」ということ。
「しかもストプレって・・・」

でもそんなあれこれはあっさり飛び超えてくれました。
くるくると動く瞳がとても表情豊かでチャーミングなロザリンド。

「お気に召すまま」
作: ウィリアム・シェイクスピア
演出: マイケル・メイヤー
音楽: トム・キャット
翻訳: 小田島雄志
美術: 松井るみ
出演: 柚希礼音  ジュリアン  橋本さとし  横田栄司  伊礼彼方  芋洗坂係長  
平野良  古畑新之  平田薫  入絵加奈子  青山達三  マイコ  小野武彦 ほか


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物語の冒頭、宝塚時代にもここまで明るい金髪は珍しいようなベビーブロンド(メイヤーさんの指示なのだとか)、これまた目の醒めるようなブルーのミニワンピースに白手袋、白タイツで現れた時には少し驚いちゃいましたが、背筋がピンと伸びていて、いかにもお嬢様然とした物腰で、後半の男装のギャニミードとの演じ分けも鮮やか。

「長年培った男役をいかすのではなく、ロザリンドががんばって男の子になる女心を表現したい」とインタビューでおっしゃっていましたが、男役時代の柚希さんを知っているファンにとっては、仕草も声も「あ~」と思う場面がたくさんありました。
ギャニミードのハットにデニム(脚長ーい)といういでたちは、どこかで見たちえちゃんだし(笑)、フリフリではなく、ソフスティケイトされた雰囲気の大人なウエディングドレスもステキでした。

ロザリンドが男性を演じる時とロザリンド本人とできちんと声を使い分け、ギャニミードの中に時折ホンモノのロザリンドが顔を(声も)出すという細やな演技。
コミカルでキュート。宝塚時代と変わらない輝くオーラはそのままで、本当にずっと観ていたいようなロザリンドでした。


ジュリアンさんは舞台、映像を通じて多分初めて拝見したと思います。
すごく細身で小顔なことに驚きましたが、筋肉質で体脂肪率低そう(笑)。
台詞も歌もよく声が出ていて、心配していた日本語も全く違和感なかったです。
そういう演出なのか、ご本人がそうなのか、手の仕草や感情を表す動作がアメリカ人っぽいなぁと思いました。
結構クールでスパッとしているオーランドーで、「ロザリンドを思って切ない」という雰囲気はちょっぴり薄めだったかしら。


マイコさんは初めて観た舞台「No.9 -不滅の旋律-」の時にもよい印象があるのですが、今回のシーリアもとてもよかったです。
ややオーバーアクション気味のコミカルな造形のシーリア。
ロザリンドとのバランスもよくて、柚希さんに負けず劣らず表情豊かでコケティッシュ。


シェイクスピア作品には数々出演されているのに「お気に召すまま」はこれが初めてという横田栄司さんはオーランドーの兄 オリヴァー。
嫉妬深く腹黒い前半と、打って変わって善人になる後半。
さすがに達者な演技で凄みの中にユーモアも見せて客席を沸かせてくれました。
「バイオハザード」に続いての共演。
柚希さんロザリンドがカーテンコールで口上の歌を歌っている間じゅう、いつもやさしそうな眼差しでずっと見つめていらした姿が印象的。
ありがとう 横田さん(ワタシがお礼を言うことではないが)。


ワシントンでおかしな動きをするアフロヘアの男性(ルボー)が出てきた時には「あれって、さとしさん?」と驚いたものですが、本役は後半のジェークイズ。
どちらも出番は多くありませんが、常に笑いを振りまくルボーと皮肉屋で憂鬱なジェークイーズ。あの有名な台詞を言う役。振り幅の広い演技でさすがの存在感でした。
オーランドーと大きなクッションを投げ合うシーンで、いつもは1回ずつなのに千穐楽スペシャルで何度も応酬していました(結局ヤラレちゃうんだけど)。


そして二役といえば小野武彦さん。
ロザリンドのお父様である前公爵とその弟で彼を追放したフレデリック(シーリアの父)の二役。
フレデリックの時はピシリとスーツを着こなし、いかにもキレ者の政治家かビジネスマン風。
一方、前公爵は「日曜日のお父さん」?みたいなゆるりとしたセーター姿。
自分に敵対する者をすべて排除しようとするフレデリックと、自分に課された運命を受け容れながら誰に対しても慈悲の心を持つおおらかな前公爵・・・片や眼光鋭く、一方はいつも柔和な表情。口調もガラリと変わっていてさすがです。


キャストでもう一人 オードリーに恋するウィリアムを演じた古畑新之くん。
アミアンズの伊礼彼方くんたちと一緒にギター演奏していたのでてっきりバンドメンバーだと思っていたら、「蜷川さんの『海辺のカフカ』でカフカ役をやった人」とお友だちに教えられて、「えっ!あの子だったの?!」とびっくり。再演のカフカ少年でした。



こんなふうにバラエティに富んだ役者陣も、時代や場所の設定も、ご都合のよい大団円も、あの祝祭感あふれるハッピーエンドとキャストの笑顔の前ではすべてがハッピーで許せてしまう。
没後400年経ってなお、私たちを楽しませてくれるシェイクスピア作品の普遍性と柔軟性、そして多様性。
それをこんな形で私たちの前に提示してくれたマイケル・メイヤーさん。
やっぱりこの作品、お気に召しました!



終わってみればすべて楽し♪ のごくらく度 (total 1706 vs 1708 ) 


posted by スキップ at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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