2017年01月06日

愛と憎しみのアラベスク 花組 「雪華抄/金色の砂漠」


konjiki.jpgこの公演が始まったころ、ヅカファンの方たちがSNSで「コンサバ」「コンサバ」とおっしゃっていたので、何のことかなと思っていたら、「金色の砂漠」=こんじきのさばく→略してコンサバでした^^; すごいよね~、短縮力。

花組トップ娘役 花乃まりあさんのサヨナラ公演。
ただ今絶賛東京公演中ですが、私が宝塚で観たのはもう1ヵ月以上も前です。


宝塚歌劇 花組公演
宝塚舞踊詩 「雪華抄」 
作・演出: 原田諒
トラジェディ・アラベスク 「金色の砂漠」
作・演出: 上田久美子
出演: 明日海りお  花乃まりあ  芹香斗亜  柚香光  花野じゅりあ  瀬戸かずや  
天真みちる  鳳月杏  桜咲彩花  仙名彩世/松本悠里  英真なおき ほか

2016年12月3日(土) 11:00am 宝塚大劇場 1階2列センター



宝塚舞踊詩 「雪華抄」

「現代的なエッセンスを加え、宝塚風にアレンジした日本古来の伝説なども織り交ぜながら、四季の美しさと艶やかさを華やかに謳い上げた日本物レビューの意欲作」だそうです。
衣装デザイン・監修を丸山敬太さんが手がけたことも話題でした。

まずは、原田諒先生が日本物のショーを作・演出することにオドロキ。
なるほどスピーディで現代的。
伝統的な宝塚の日本物レビューでありながらメリハリの効いた各場面がテンポよく展開します。
KEITA MARUYAMAの衣装ももちろんモダンで素敵でしたが、装置もいつもの日本物より立体的でスタイリッシュな印象・・と思ったら美術は松井るみさんでした。


幕開きはいつものチョンパ。
舞台(銀橋)にとても近い席でしたので、暗転のうちにサワサワと銀橋に人が出てくる気配がわかりましたが、それでも「花の踊りはヨーイヤサ~」でパッと明るくなった舞台の目を見張るほど華やかなこと。
紅白の梅が満開で、銀橋にも舞台にもこれでもかというくらい美しい人々がいて、銀橋センターで歌う明日海さん若衆の美しいこと。

前半後半に1回ずつ松本悠里さんの場面がありましたが、日舞のことよくわからない素人目に見ても、衣装の着こなしといい所作といい裾さばきといい、もちろん舞といい、別格感ハンパない。
松本悠里さんって、私が少女時代、宝塚観見始めた頃からずっとああいう雰囲気でいらっしゃるのだけど、全く年齢不詳だわ。

印象に残った場面をいくつかピックアップ。


鷹と鷲:
岩山で鷲たち・・瀬戸かずやさん筆頭に花組男役見せどころとばかりの群舞。
その後、明日海 鷹が乗り込んできて、柚香 鷲ボスとの一騎打ちへともつれ込みます。
ここの羽根の衣装が丸山敬太さんデザインなのかな。すごく凝った衣装でした。
跡でプログラム見たら、振付は藤間勘十郎さんでした。

波の華:
芹香さん&仙名さん 彦星織姫の幻想的な星の世界に続くのは、民謡メドレー。
瀬戸かずやさんの「大漁追い込み節」に始まって、スターさんたちが次々歌い継ぐ耳慣れた民謡が楽しかったな。
芹香さん中心の「串本節」なんて客席から手拍子起こっていました。

清姫綺譚:
知らずに観ていて、花乃さん演じるお姫様が「安珍様・・」って言うのを聞いて「安珍清姫かっ!」と。
何とこの場は尾上菊之丞さん振付。
ちゃんとストーリー仕立てになっていてドラマチック。
最後は蛇体となった花乃さん清姫のぶっ返り・・と歌舞伎なら言いたいところですが、早替りもあっておもしろかったです。
人海戦術使って紅い旗を振って炎を、水色の布で日高川の波を表現したかなり大掛かりな演出、振付面で見応えありました。

場面変わって、満開の桜が舞い散る中で明るく華やかなフィナーレ。
こんなにテンポのよい日本物ショー初めて、というくらいあっという間に終わりました。
原田先生がつくると二本物ショーもこうなるのね。



トラジェディ・アラベスク 「金色の砂漠」

古代の砂漠の中にある架空の国 イスファン王国が舞台。
自分がどこから来たのかも知らず、王女タルハーミネ(花乃まりあ)の奴隷として育てられた少年ギィ(明日海りお)。
やがてギィは美しく傲慢な王女に心惹かれるようになります。タルハーミネの方もギィを憎からず思っていましたが、王女の立場と何より彼女自身の矜りが奴隷を愛することを許しませんでした。タルハーミネとガリア国の王子テオドロス(柚香光)の結婚式の前夜・・・。

「愛と憎しみの壮絶なアラベスク」と解説にありました。
「何よ、アラベスクって・・」という感じですが、とてもとても見応えあっておもしろかったです。
千穐楽近くに観たので、感想なども出回っていましたが、ほぼスルーしていましたので、「ほえ~、そおなの?」「次は、どうなるの?どうなるの?」という感じでずっと惹き込まれて観ました。
ま、明日海ギィの真実が明らかになった時は、「そりゃトップさんがほんとに奴隷な訳ないわな」とは思いましたが。

上田久美子先生は本当にストーリーメーカーだな。
これまでの3作品(「月雲の皇子」 「翼ある人びと」 「星逢一夜」 にこの「金色」 全部大好きだもん。
そして全部切なくて胸がキュッとなります。
本当にすばらしいです。

衣装も素敵だったし舞台装置もよかったな。
黄砂に覆われたような砂漠の美しさ・・・本当にタルハーミネが見たいと願っていた「金色の砂漠」が見えるようでした。


物語は、イスファン国の奴隷 ジャーが語り部となって綴られます。
「なぜ僕が話すのかって?・・・それはみんないなくなってしまったから」という言葉がすでに悲しい結末を予感させます。

愛と憎しみが表裏一体。お互いに激しく惹かれ合いながら憎しみを燃え上がらせることになるギィとタルハーミネ。
タルハーミネの妹で穏やかなやさしい心を持つ第二王女ビルマーヤ(桜咲彩花)と彼女が結婚してもなお慕い続け献身的に仕える奴隷ジャー(芹香斗亜)。
この2つのカップルの対比に
王女たちの父である国王ジャハンギール(鳳月杏)と、彼に国を奪われ命を落とした前国王の妃でありながら今はジャハンギールの妻となっている王妃アムダリヤ(仙名彩世)
の物語を加えて色濃く展開します。

悪役フェチかつ大人のオトコ好きなので、個人的には鳳月杏さん演じるジャハンギールにヤラれてしまったのですが、物語としてとても見応えありました。
それにしても鳳月さんジャハンギールの死に様カッコよかった。

物語として上手いなと思ったのは、明日海ギィの出自の秘密がわかって・・というところにクライマックスを持ってくるのではなく、その砂漠の賊長となって復讐に燃えてイスファン王国を奪いに来たギィが、かつてジャハンギールがアムダリヤにしたのと同じことを図らずもタルハーミネにしてしまうところ。
そして、何も知らない奴隷の頃、アムダリヤのことを「前の王のお妃だったのに、負けて王の妃になるなんて、何て誇りがないんだ!魂を売るくらいなら塔から飛び降りて死ぬ方がましだ!」みたいなに言っていたことが、時を経てアムダリアの心がわかった後になって真実となってしまうところ。
まさに因果応報というか輪廻転生というか、逃れられない運命に翻弄された人々の物語だなぁと思いました。

明日海りおさんはこれが代表作の一つになるのではないかしら。
無垢な少年時代から、愛するタルハーミネとの身分違いに悩んだ青春時代、力を蓄え激しさを増して復讐に生きる時代へと折々の変化がよくわかりつつ、子供のころや若い頃からこの激しさは持っていたなぁと納得させる役づくり。
高値安定の歌唱はもちろん、ダンスに立廻り、マンドリンみたいな古代楽器の弾き語りまで、いろいろな顔を見せてくれて、魅力全開でした。
少し小柄なのと甘いマスクのせいで憧れの王子様系の役が似合うと思われがちですが、明日海さんに魅力を感じるのはいつもこんな激しく強い役をやる時です。

花乃まりあさんのタルハーミネもとてもよかったです。
タルハーミネ自身はいかにも傲慢な王女様で個人的にはあまり好きにはなれませんが、生まれながらに王女として育てられ、奴隷との身分の違いも刷り込まれているタルハーミネ。
気位が高く激しい気性の中に、純粋な少女時代からギィに心を許し、成長してからも言葉とは裏腹に心では求めていることがよく感じられました。
明日海ギィが踏み台になるところ、いかにも手加減(足加減か?)しているように見えて、あそこはもっとギュッと踏んでほしい(笑)。

芹香さんと柚香さんでは三番手の柚香さんの方がいい役なんじゃない?と思えるくらい颯爽として風格もある王子様の柚香さん。
でも芹香さんのジャーとビルマーヤ、そしてビルマーヤの夫となるゴラーズ(天真みちる)の3人は皆心から互いのことを思い合っていて、見ていてとてもやさしい気持ちになれました。

国王シャハンギールの鳳月杏さんと王妃アムダリアの仙名彩世さんの大人のカップルは本当に魅力的。
いわゆる敵役ながら度量の大きさも国を治める者としての器も体現した鳳月杏さん。
男の色気があって髭もよくお似合い。
繰り返しになりますが、あの死ぬ直前の独白と死に様がカッコ良すぎてだな・・・

仙名さんの哀しみをたたえながら凛とした静かな佇まいもとても素敵でした。歌声もとても綺麗。
「殺したいほど憎みながらも愛してしまう」って、あるよね、と彼女を見ていると実感します。

他にも、ちょっとひょうきんな第三王女の奴隷プリーの瀬戸かずやさん、女なのに男たちよりオトコマエな女賊ラクメの花野じゅりあさん、「このままタダでは終わらんゾ!」な算数教師ナルギスの高翔みず希さん、賢明で穏やかな王妃の特別奴隷ピピの英真なおきさん・・・等々、たくさんの人に見せ場がある作品でした。


IMG_3743.jpg

今回の公演カクテルは、宝塚市産の山田錦を100%使用した純米大吟醸「乙女の舞」がベース。
春夏秋冬と4パターンあって、それぞれ、桜のシロップ(ピンク)・ブルーキュラソー(青)・ソルティッドキャラメル(キャラメル色)・カルピス(白)を加えたものですが、この色が一番「金色の砂漠」かなと思って「秋」をいただきました。



はぁ~、これもっと早く観てたらリピしたよね、もう1回観たかったなぁと思っていたら千穐楽ライビュあるんですって・・・もちろん観ますとも! のごくらく度 (total 1687 vs 1689 )


posted by スキップ at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック