2016年12月29日

井上芳雄 縦横無尽 「ナイスガイ in ニューヨーク」


niceguy.jpgニール・サイモンが1961年に書いた伝説のデビュー作。
プレイボーイの兄と、マジメで内気な弟。正反対の2人が大騒動を巻き起こすコメディ。

フランク・シナトラが映画でやった役ということですが、まるでニール・サイモンが井上芳雄くんにあて書きしたんじゃない?というくらいハマっていました。


「ナイスガイ in ニューヨーク」
原作: ニール・サイモン 「Come Blow Your Horn」
上演台本・演出: 福田雄一
出演: 井上芳雄  間宮祥太朗  吉岡里帆  愛原実花  石野真子  高橋克実

2016年12月3日(土) 5:00pm サンケイホールブリーゼ 1階F列センター



舞台は1960年代のニューヨーク。
食品模型製造会社社長の息子アラン(井上芳雄)は、父の会社で営業の仕事をしていますが、適当にサボって女の子たちと楽しんでいます。
ある日彼のアパートに、生真面目な弟のバディ(間宮祥太郎)が家出してやって来ると、厳格な父(高橋克己)、おっとりした母(石野真子)がバディを連れ戻そうと次々と現れます。
そこに、アランの遊び相手の売れない女優ペギー(愛原実花)や地方回りのショーに出ているコニー(吉岡里穂)も絡み・・・。


福田雄一さんのホンは個人的に当たりハズレがとても大きいと感じています。
が、この作品はフツーにおもしろかったです。
井上くんが歌い踊るのでてっきりミュージカルだと思っていたら、ジャンルは「ストプレ」だったのね。
古典的とも思えるアメリカンコメディに現代日本のアレンジとナンセンスギャグをふりかけてリメイクするという手腕は福田さんならでは。
いやほんと、声をあげてゲラゲラよく笑いました。
「歌舞伎役者みたいな白い化粧した女の子」とか「歌舞伎役者が着るような服」(ハデハデ柄ジャケット)とかやたら出てきましたが、あれは福田さんの歌舞伎役者イメージなのかしら。



物語は終始アランのアパートのリビングルームで展開します。
バーカウンターなんかあってオシャレ。
電話がダイヤル式というのもいかにも時代を表わしています。
役者さんの衣装も皆ポップでお洒落でした。
最初に登場したアランなんて、若草色のジャケット着てたし。


何といっても井上芳雄につきます。
歌と踊りが完璧なのは当然として、コメディの間やノリも過不足なく。
元より口跡がよいので早口でも聴き取りやすい台詞まわし。
頭の回転の早い人ですので、アドリブもお手のもの。周りへのツッコミやフォローも自在。
歌って踊って女の子うまくあしらって、余裕たっぷり。後半のシリアスアランへの切り替えも鮮やか。
水を得た魚のようにノビノビ軽やかで楽しそうでした。
♪食べる時は良く焼いて~ と歌うブヒブヒの歌なんて爆笑したよね。
ご本人はドラマチックに歌い上げていましたが。

加えて、これは井上くんの舞台を観ていつも思うことですが、身のこなしや所作が本当に美しい。
スラリと脚長細身で立ち姿や指先、足先にまで神経が行き届いているのがよく見て取れます。

間宮祥太朗くんは舞台で観るのは初めてだなぁと思って自分のブログ検索してみたら、
何と2010年に「ハーパー・リーガン」で観ていました。
「えっ!あの長塚圭史作品にっ?!」とオドロキ。近所の美少年役だった男の子かぁ。
ファンの人の「間宮祥太朗はこの舞台で本当に歌うのか」みたいなブログを見かけましたので、歌うのは珍しいことなのかな。
台詞同様いい声で、違和感なかったです。
真面目でへなへなしていて、兄のやることに驚いてばかりいる前半と、アランが乗り移ったのかと思えるくらい変貌(ちょいウザだけど)した後半のギャップも楽しかったです。

アランがただ一人本気で恋している女の子 コニー役は吉岡里帆さん。
今回が初舞台とカーテンコールでおっしゃっていました。
(井上くんに舞台の1シーンを再現するよう言われて「初舞台の女の子にそんなことさせるぅ?」と抗議していました。)
まだ舞台の発声とか動きになっていないと思うところもありましたが、目いっぱい動いてしゃべってキュートな笑顔振りまいて全力投球で好感。
開演と終演時のアナウンスも吉岡さんで、「精一杯がんばります」なんて言ってて可愛かったです。

愛原実花さんのペギーは美人でスタイル抜群だけど、芳雄アランに「バカで助かったよ」と言われるくらいちょっと頭の足りない女の子。
ナイスバディを如何なく強調する派手なコスチュームに派手な振る舞い。
「熱海殺人事件」でもそうでしたが、何か突き抜けたような演技で、個人的には「グレイト・ギャツビー」のデイジーのような役よりこちらの方がはるかにイキイキしているなという印象でした。

石野眞子さんがこんなママ役をやるようになったのかと感慨深いものがありますが、ちゃんとお母さんでした。
アランの部屋に一人取り残されて次々かかってくる電話をとって混乱して・・という場面はいかにもアメリカンコメディなシチュエーションですが、ここを一人で持たせられないのは、この役としてはちょっと辛かったかなぁ。

そして高橋克実さんですよ。
最初にドアから登場した時、金髪のカツラに濃紺のジャケット、赤いネクタイで客席爆笑。まんまトランプじゃん。「ツカミはOK」という感じ。
「キダタローかと思った」とアランにもペギーにも言われていましたが、これは大阪だからのネタだったようです。


すったもんだの挙句、こういうふうになるんだろうな、と思った通りに物語は進んで、ラストは絵に描いたようなハッピーエンド。
キャスト全員でシナトラの「Come Fly With Me」を歌って幕。
とっても気分よく劇場を後にできた舞台でした。




「生まれつき歌が上手いんだ」by アラン のごくらく度 (total 1683 vs 1687 )




posted by スキップ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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