
女方舞踊の大曲で基本は一人で1時間近く踊るものですが、玉三郎さんと菊之助さんが二人で舞う「二人道成寺」は初めて観た時、花道で最初に2人の花子が揃う場面であまりの美しさに涙が溢れたくらい。
平成22年の旧歌舞伎座閉場式でその玉三郎さん筆頭に、時蔵・魁春・芝雀・福助と当時のトップ女方揃い踏みみたいな「五人道成寺」がかったと聞いた時、ふほぉ~と思ったものですが、それがこの目で観られる日が来るなんて。
しかも、”玉三郎さん選抜メンバー”な各家花形揃いで!
歌舞伎座 十二月大歌舞伎 第三部
二、京鹿子娘五人道成寺 道行より鐘入りまで
出演: 坂東玉三郎 中村勘九郎 中村七之助 中村梅枝 中村児太郎/
坂東亀三郎 中村萬太郎 市村橘太郎 ほか
2016年12月17日(土) 7:40pm 歌舞伎座 1階17列下手
期待値も高かったですが、いざ初日が開くと「楽しい」「眼福」と歌舞伎クラスタさんたちの前のめりっぷりハンパありません。
「この機会を逃すと一生後悔すると思うから是非観て」なんていうツイまで飛び出すくらいでしたが、ほんと、聞きしに勝る楽しさでした。
玉三郎さん筆頭に五人五様の白拍子花子。
一人で、二人で、三人で、五人で、それぞれに活躍と楽しめる場があって目も心も忙しい^^;
鐘をキッと睨む様も、各花子個性があっておもしろかったな。
本舞台で勘九郎さんと七之助さんが踊り、花道に梅枝くんと児太郎くん、ってどこを見ろと・・・。
「聞いたか 聞いたか」と声が聞こえてきて、鳥屋から所化さんたち登場。
これは3階からではなく、1階で観たい、と奮発した(二等席だけど)席は鳥屋近くだったのですが、次から次、ゾロゾロ出てくる所化さんたちに客席からもざわめきと笑いが。
亀三郎さんリーダー率いる所化さんは全部で20人でした。
花道から最初に登場して道行を踊る花子は七之助さん。
花道七三の位置で勘九郎さんがスッポンからせり上がって来て重なります。
このあたりの振りは「二人娘道成寺」と同じだと思います。
勘九郎さんと七之助さんがともに女方で連れ舞い、というのを観るのは私は多分初めてじゃないかな。
かなりのシンクロぶりでしたが、二人の踊りの違いも見えて興味深かったです。
黒地に金銀朱色鮮やかな衣装も美しく、扇を加えて踊る姿は幻想的な雰囲気。
二人で踊る舞台写真、決めきれずに二枚も買っちゃいました。
勘九郎さんがまたスッポンに去って、問答は七之助さん。
この「道成寺」は玉三郎さんの演出、キャスティングですが、七之助さんはやっぱり玉三郎さんに買われていて大事なパートを任されているという印象です。

切り替えが本当に鮮やか。
能の道成寺をまねて踊る「烏帽子」は玉三郎さんの独壇場。
幽玄な雰囲気さえ漂います。
紅い三段の笠を持った花笠踊りは児太郎くん。
続いて所化さんたちの踊りの後、「恋の手習い」を踊るのは玉三郎さん。
若い4人を向こうにまわしても決して引けを取らないあの可愛らしさ、可憐さはどうしたことでしょう。
引き抜きで衣装が変わるのですが、これがうまく言えないのですがいつも引き抜きのパッと変化するのではなくとても自然にスルリと変わる感じで、玉三郎さんのこだわりでしょうか。
ひとしきり舞った後、客席に背を向けてパパッと勢いよく手ぬぐいを撒いて引っ込みます。
この後、所化さんたちの手ぬぐい撒き大会。
松十郎さんあたりは軽々と3階まで投げていました。
「山づくし」の時かな?勘九郎さんと七之助さんが背中合わせに向かい合って、二人同時に海老反りすると客席からやんやの拍手が。
「ただ頼め」は梅枝くんが可愛らしくもしっとりと。
その梅枝くん花子がこれまた蛇が脱皮するようにスルスルと引き抜いて衣装が変わると、同じ衣装の4人が出てきて、まるで1人がズンッと一気に5人になったよう。
この5人で踊る「鈴太鼓」がね~。もう、いつまでも観ていたいと思うくらい楽しかったです。
鈴太鼓鳴らしたり、5人でフォーメーション変化させながら踊ったり。いや、ほんと、目が足りないってば。
そして、鐘入り。
大きな鐘のてっぺんに立つ玉三郎さん、神々しいほど。
その場所は鐘のてっぺんであり、5人の頂点でもあります。
その隣に勘九郎さん。
七之助さん、梅枝くん、児太郎くんと続いて、5人がまるで鐘にまとわりつく蛇体のよう。
こちらにその写真が。
1人で踊りきる道成寺ももちろんすばらしいですが、5人が揃って踊る華やかさは格別で楽しさも5倍。
それに加えて・・。
中村屋兄弟はもちろん、萬屋、成駒屋を将来背負って立つ存在である梅枝くん、児太郎くんは、いつかそれぞれ1人で道成寺を踊ることになる人たち。
その彼らと共に踊り、また自分が舞う姿を見せることで、自らの持てる技術や踊りの心を伝承し、受け継いでもらおうという玉三郎さんの高い志が感じられて胸熱です。
本当によいものを観せていただきました。
これに先立って「二人椀久」も観たのですが、元々苦手な演目の上に場内暗くなるので・・・(以下自粛)。
「五人道成寺」 通えるお江戸の方たちがうらやましい のごくらく地獄度



