
その「お気に召すまま」をやはりオールメールで、しかも演出は青木豪さんで、というのに心惹かれて、Dステ初観劇となりました。
来年、柚希礼音さんがロザリンド役で主演するミュージカル「お気に召すまま」の予習にもなるワ、という下心もありつつ^^;
Dステ 19th 「お気に召すまま」
作: ウィリアム・シェイクスピア
翻訳: 松岡和子
演出・上演台本: 青木豪
出演: 柳下大 石田圭祐 三上真史 加治将樹 西井幸人 前山剛久
牧田哲也 遠藤雄弥 松尾貴史 鈴木壮麻 大久保祥太郎 山田悠介
2016年11月19日(土) 5:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
1階F列センター
物語: 今は亡き栄光の騎士サー・ローランド・ド・ボイスの息子 オーランドー(柳下大)は、公爵主催のレスリング大会で優勝した時、試合見物をしていたロザリンド(前山剛久)とひと目で恋に落ちます。
ロザリンドは自分の父である前公爵(松尾貴史)を追放して地位や財産を奪った、父の弟 フレデリック公爵(松尾貴史 二役)のもとで従姉妹のシーリア(西井幸人)と仲良く暮らしていましたが、公爵から突然追放を言い渡され、、男装して身分を隠し、シーリアと道化のタッチストーン(牧田哲也)を連れ、追放された父・前公爵が暮らしているというアーデンの森へと向かいます。
一方オーランドーも、家督を継いだ兄 オリヴァー(三上真史)の嫉妬を危惧する召使いのアダム(石田圭祐)とともに邸を離れ、アーデンの森で悠々自適に暮らす前公爵に助けられます。
ここに、羊飼いのシルヴィアス(大久保祥太郎)と女羊飼いフィービー(山田悠介)、田舎娘のオードリー(遠藤雄弥)と彼女に思いを寄せるウィリアム(石田圭祐)たちの恋愛騒動がからんで・・・
会場に入ると何人かの役者さんたちがすでに舞台にいて、思い思いにストレッチしたり発声練習したり、前列のお客様に話しかけたりしていました。側転やバク宙して客席から歓声が起こったり。
そうこうするうちにさわやか男前さん(後で名前を知った・・三上真史さん)が口跡よく慣れた様子で前説を始めました。
この舞台の特徴や客席通路をよく使うことなどを手際よく話して、携帯電話の諸注意の後、「役者が見に行きますから」と言って、何人かがほんとに見に来ました。
通路側の席だったので、ちゃんと電源切ったスマホの液晶画面をお見せしましたよ。
この時点で役者さんたちは黒や白のスエット姿でしたので、「あー、扮装しないでこのままやる系?」と思っていたら、ちゃんと公爵の拵えをした松尾貴史さんが出ていらして、「始めようよ」と口火を切って、ダンスシーンから始まりました。
私は存じ上げませんでしたが、青木豪さん×D-BOYSのオールメールDステシェイクスピアは「ヴェニスの商人」(2011年)、「十二夜」(2013年)に続いて第3弾なのだとか。
前2作とも「こんなに笑えるシェイクスピアは初めてと好評を博した」と言われている通り、笑いと幸福感に満ち溢れた舞台でした。
フィービーやオードリーのメイクや拵え、キャラクター設定などは、「そこまで笑いに走らなくても・・」と思いましたが、ストーリーや台詞は戯曲に忠実で、ドタバタしながらも粛々と進んでいきました。
「恋とはため息と涙でできてるもんだ」「恋とは忠実な心と献身でできてるもんだ」「恋とは気まぐれな空想でできてるもんだ」・・・というシルヴィアスが言い始めた時にはキュン

そして極めつけはオーランドーの、「僕はロザリンドが恋しくて」。
この台詞も、この台詞を言う時のオーランドーもとても好き。
オーランドーは、ロザリンドへの思いを綴ったラブレターをアーデンの森の木々に貼り付けるのですが、この舞台では、お客様を木に見立てて、オーランドーこと柳下大くんが客席通路を歩きながら一人ずつ手渡し。
私がいただいたのはこちら。

ますますオーランドーが好きになっちゃいました。
松尾貴史さん以外はほぼ知らない人ばかりのキャストでしたが、みんなよかったな。
特に、クールビューテイのロザリンド・前山剛久さんと天真爛漫なシーリア・西井幸人さんは、それぞれ違った持ち味の女性を好演。
アフタートークで前山さんが、「女性であるロザリンドを男である僕が演じて、そのロザリンドが男装して、さらに男装のまま女性のふりをして・・と複雑なところが難しくもありおもしろさもある」とおっしゃっていましたが、女性が舞台に立つことなどなかった時代にシェイクスピアが仕組んだトラップがまんまとハマったという感じの役で、男のふりをしながらも時折オーランドーへの思いがほとばしってしまうロザリンドがとても可愛くて、まさに「ロザリンドが恋しくて」。
「え~、オーランドー、何で気づかないのぉ」と少し思いましたが。
柳下大くんは「アダムスファミリー」に出てた子だよね?と自分のブログ検索したら、「真田十勇士」にも出てた。しかも猿飛佐助(驚)。
佇まいや口調は現代っ子でしたが、台詞はしっかり。ロザリンドへの思いがちゃんと伝わってきました。
今回の青木豪さん演出では「『シェイクスピアも当時そうしていたに違いない』と戯曲から読みとった1人2役キャスティング」が特徴ということで、松尾さんの公爵兄弟はじめ二役やっている人たちが何人もいらしたのですが、中でも印象に残った2人・・・
アーデンの森で暮らす前公爵の貴族仲間の人がやたらよい声、よい歌詞で歌ってくれる端正なお顔立ちの落ち着いた佇まいの紳士で、ステキだなぁと思っていたら、その人が鈴木綜馬さんだとカーテンコールで気づく・・・しかも綜馬さんから壮麻さんへ改名されていたことを終演後ポスターを観て知るなど。
鈴木さんは、ラストで結婚の神ハイメンも演じていらして、兵芸の階段になっている通路を降りてくる姿なんて、リアル神様だったよね。
もう一人、やはり前公爵の仲間でちょっぴり斜に構えている旅人ジェイクイズの加治将樹さんが、痩せてカッコよかった自分の若い頃の写真を手に自虐ネタやったのには笑っちゃいました。
もうひと役はその巨体を活かして(?)、オーランドーに負けるレスラー(笑)。
初めてのDステ。楽しかったです。
またシェイクスピアをやる時にはぜひ観たいな。
それにしても、オーランドー♡ロザリンド、シルヴィアス♡フィービー、ウィリアム♡オードリーに加えて、すっかり改心したオリヴァーとシーリアまで結婚しちゃうなんて大団円すぎ(笑) のごくらく地獄度



