2016年11月29日

いざやカブかん 「渋谷金王丸伝説」


konnomaru.jpg2010年 渋谷区文化総合センター 伝承ホールの開館を機に始まった「渋谷金王丸伝説」。

渋谷の英雄金王丸の伝説を、カブキ踊りで描く公演で市川染五郎さんが毎年趣向を凝らした舞台を披露していらして、かねてより観てみたいなと思っていたのですがなかなかチャンスに恵まれず、7年目にして初めて拝見しました。

2016伝承ホール寺子屋
カブキ踊り 「渋谷金王丸伝説」
監修・演出: 市川染五郎
プロデュース: 鈴木英一
音楽: 村治崇光 (杵屋勝四郎)
振付: 松本錦升
出演: 市川染五郎  尾上菊之丞  尾上京  五條珠太郎/伝承ホール寺子屋塾生

2016年11月27日(日) 11:00am 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール 3列



一、常磐津「寿柱建万歳」(「乗合船恵方万歳」

幕開きは鈴木英一さんが染五郎さんにインタビューする形のトーク。
これは今回初めてのことだそう。
染五郎さんは明るい花葉色のお着物に涅色っぽい袴、鈴木さんは黒紋付と袴でした。

今年の染五郎さんの舞台として、「ラスベガス歌舞伎」と八月納涼歌舞伎の「弥次喜多」の話題。
「歌舞伎は世界各地で公演したことがありますが、ラスベガスでは初めて」と染五郎さん。
昨年のベラッジオでの「鯉つかみ」に10万人も観客がいらして、あたりが交通渋滞になるほどだったそうですが、「歌舞伎を観に、というより、たくさんあるエンターテインメントの一つとして楽しんでいただいたようです」とおっしゃっていました。

納涼の「弥次喜多」では、そのラスベガスのシーンも入っていて、「獅童くんがねぇ(笑)」と。
「猿之助くんと『弥次喜多』を一緒にやろうと前から話していて、お互いがそれぞれ頭でやる時には出さず、今回やっとできました」というお話を伺って、染五郎さんと猿之助さんには他の役者さんたちとは違った心の繋がりのようなものがあるなぁと改めて思った次第です。

「カブキ踊り」について、「日本の舞踊の原点は『リズムに合わせて体を動かすこと』で、それをやりたかった」とおっしゃっていたのが心に残りました。


ゲストにはブ怪獣ースカと渋谷区の長谷部区長が登場。
ブースカが今年50歳ということで、4人で年齢順を言い合うのおもしろかったです。
結局、染五郎さんがyoungestで、「僕が一番若いですね」とちょっとドヤ顔。

長谷部区長の、「ロンドンにはロンドンっ子、パリにはパリジャンやパリジェンヌ、ニューヨークにはニューヨーカーという言葉があるように、グローバルな街を目指す渋谷も、いつかそんな名前・・たとえば渋谷人のように言われるようになりたい」というお話も印象的でした。


それにしても染五郎さんの声、荒れていました。
11月の歌舞伎座公演で喉を痛めていらっしゃるらしきお話は聞いていましたが、12月は歌舞伎ご出演はお休みなので少しでも喉を休めていただきたいです。


この後、染五郎さんがそのままの拵えで「乗合船恵方万歳」を一人立ちで踊ります。
これ一人で踊るなんて最初で最後かも?というくらい珍しいらしいのですが、「大人の理由で」(笑)と染五郎さん。

始まる前に「ちょっとしたサプライズがあります」という鈴木さんに、「サプライズ?」と怪訝そうな染五郎さん。
「いや、お客様へのサプライズですよ。染五郎さんへのサプライズじゃないですよ」と鈴木さん。
染五郎さん、相変わらず天然かっ(笑)。

そのサプライズは、なーんと、浄瑠璃に尾上菊之丞さん加わっていらっしゃることでした。
後で、「咄嗟に何かやれ、と言われたら、すぐにできるのは踊りじゃなくて常磐津です」とおっしゃっていましたが、いや~、よく通るよいお声でした。

染五郎さんは鼓も打ってくださって、耳福眼福。
いろんな役を踊り分けるのもさることながら、扇づかいの鮮やかにはいつもながら目を奪われます。


二、創作傾奇おどり「KONNOHMARU伝説」
  不死身の金王丸、異国の王となる

  作・振付: 市川染五郎
  原案: 鈴木英一


休憩の後はお待ちかね「渋谷金王丸伝説」。

上手花道に義経(尾上菊之丞)、下手花道に金売吉次(五條珠太郎)が登場して踊りながら舞台へ。
2人とも腰には大きな鮭の切り身をつけています。
上手花道そばの席でしたので、菊之丞さんの指先まで美しい踊り、ガン見です。

ストーリー的には昨年の続きになっていて、頼朝の命によりかつて仕えた義経に夜討ちをかけた金王丸が2人の板挟みになって自ら命を絶った・・・という前回の結末で、渋谷の人々や義経が悲しみに沈んでいるところから始まります。
ところが金王丸は、「毒蛇長太刀」という魔刀を持っていて、この刀を持つ者は不死身の身体を与えられる、というこであっさり復活(笑)。吉次に導かれ、義経とともに海を渡り北方の異国へとたどり着く、というものです。

昨年、染五郎さんのブログで見たとおりのアイシャドウメイクと派手な拵えの染五郎さん登場でテンション上がります。

ほぼ踊りで表現されるのですが、途中とラストに伝承ホール寺子屋塾生のちびっこやシニアの踊りが加わり、ブースカも踊り、「阿弖流為」みたいな鮭リレーがあったり、鮭からいくらが出てきたという設定でオレンジ色のゴムボールが舞台奥からコロコロ跳ねて客席にまで飛んできたり。
吉次は実は鮭国の家老氷頭鯰之助だったり異国の女王は鮭国の女王チャンチャンだったりとネーミングにも遊び心たっぷり。

毎年ご覧になっていらっしゃる方によると、その年によって出来不出来があるらしく、終演後、「今年はどちら?」とお聞きしたら「ダメな方」とおっしゃっていましたが、それでも私は十分楽しかったです。

途中で一旦幕が降りた時、I have a pen I have an apple I have a pen I have a pineapple・・・と小さく聞こえてきたので、「これって、アレじゃん!」と思っていたら、次の場面では4人がそれぞれ台の上に乗って盛大にフルコーラス踊ってくれました。
染五郎さんも菊之丞さんもノリノリでしたが、お2人の踊りの違いも感じられておもしろかったな。

まぁ、最終的には金王丸は成吉思汗となって・・というありがちな結末にたどり着くのですが。

「みんな元気よく行こう。イヤなこともあるだろうけど、とりあえず今は元気出して行こう!」
と染五郎さんのハッパで始まった寺子屋塾生たちが花道にまで繰り出して踊る「カブキぼん!ダンス」も楽しかったです。

あの世 この夜の カブキ者
あの人想う 月明かり 送りもうそか 河原まで
舞わり舞わりて 輪になって 舞わり舞わりて ウランバナ



IMG_6730.jpg  IMG_7406.jpg

終演後のブースカ 2ポーズ



フィナーレで染五郎さんが客席に投げてくださったのイクラ(ゴムボール)。
ポーンと私の手に当たってからお隣の人の元へ行ってしまったのが唯一の心残り のごくらく地獄度 (total 1665 vs 1671 )   



posted by スキップ at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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