2016年11月26日

空と大地と海の声 ~ヴォイス・オブ・ガイア~ 「バイオハザード」


biohazard.jpg「バイオハザード」といえば、ミラ・ジョヴォヴィッチの、いかにも戦闘態勢といった画像のイメージで(映画は未見)、柚希礼音さんがこの作品に出演することになって初めて、プレステ用のゲームソフトがオリジンだと知りました。

Wikiで少し調べようともしたのですが、何だかややこしそうですぐに挫折して、「ゾンビと闘う話らしい」というぼんやりとした予備知識のみで参戦となりました。


ミュージカル 「バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~」
脚本・演出: G2
原作: CAPCOM (ゲーム「BIOHAZARD」)
監修: 小林裕幸 (CAPCOM)
作曲・音楽監督: 和田俊輔
美術: 堀尾幸男
振付: 前田清実
アクションコーディネーター: 諸鍛冶裕太
出演: 柚希礼音  渡辺大輔  横田栄司  平間壮一  村井成仁  KYOHEI  壌晴彦  吉野圭吾  有川マコト  Special dancer YOSHIE  中井智彦  Raychell  水希友香 ほか

2016年11月12日(土) 5:00pm 梅田芸術劇場メインホール 2階4列センター/
11月15日(火) 6:00pm 1階10列センター



物語: アドリア海を臨む城郭都市で暮らす、記憶を失くしたリサ・マーチン(柚希礼音)。
世界はウィルスによる滅亡の危機にあり、城壁に守られてきたこの町も「奴ら」に攻め入られようとしています。ウィルスに侵された奴らに噛まれると、人は正気を失い、自らも奴らの一員と化してしまいます。絶望する人々の元に、エーゲ海に浮かぶリノザ島に、奴らに噛まれたのに発病しなかった少女がいるとの情報がもたらされ、少女の持つ抗体から薬を作ろうとアメリカ人の医師 ダン・ギブソン(渡辺大輔)たちがエーゲ海を目指すことになり、リサとチャベス(横田栄司)も後を追います。その途中、リサはアヴィアーノ米空軍基地でモーリス・グリーン大佐(吉野圭吾)や軍医 ジョー・ナッグス(壤晴彦)と出会い、自分の過去を知ることになります・・・。


私の周りにはハザラー(・・というのか?)はいませんので、直接聞いた訳ではありませんが、その人たちが観たら多分「これは『バイオハザード』ではない」とおっしゃると思います。
それもそのはずで、このミュージカル化にあたって、G2さんはカプコン側から「自由に書いてよい」という許可をいただいて、「原作の設定で残っているのはウィルスが媒体となってゾンビ化する、という一点のみ」なのだそうです。
幸か不幸か私はゲームも映画も全く知りませんので、オリジナルのゲームと別物であるなしにかかわらず、また、主演が柚希礼音さんだからということだけではなく、作品として楽しく拝見しました。


ストーリー的には、
・ピンチを救うのはいつも子ども(チャベスの子のジルマ)の知恵じゃん  とか
・海の中でクジラからどうやって血液を採取したんだろ  とか
・ゾンビうじゃうじゃいる島へ行くのにリサちゃん何でノースリーブ? とか
・リサたちがあんなに全力で戦ったゾンビへの最終兵器が南部風鈴かよ  とか
・いやまずその前にロベルトはどうやってアヴィアーノ空軍基地まで来たんだ とか
・集落の食糧問題(1週間で備蓄食料が底をつく)は何も解決していないのに
 リサってばヘリコプターあるなら自分探しよりまず食料探しでしょ  とか
ツッコミどころはたくさんあるにはあるのですが💦


「この絶望的な世界で愛を歌う」とキャッチコピーがついているように、根底に「音楽のチカラ」「音楽ってすばらしい」という1本の筋が通っているのがミュージカルとしてハマっていますし、愛とか友情とか信頼とか、何にも勝るのは「人の心」というメッセージが込められた人間ドラマとしても見応えありました。

正直なところ、1回目に観た時は、特に一幕は長く感じたのですが、その後で柚希さんご自身の口からリサの思いやその時の状況などを聞かせていただく機会があり、自分の中で理解が深まったこともあってか、2回目はいろいろな登場人物の気持ちに寄り添うことができて、ゾンビに噛まれてしまったロブロ(平間壮一)を彼自身から懇願され、リサが何度も「できない」と逡巡した末に泣きながら撃つところではついに落涙・・・まさか「バイオハザード」で泣くとはね。
前半にロブロが「俺、A型だから」と唐突に血液型の話なんかして・・と思っていたらここに結びついて(クジラから採取した血清はB型だからロブロには打てない)、ほほぅと思いました。

歌うまさん揃いでソロもアンサンブルもとても聴かせてくれますし、YOSHIEさんゾンビのダンスはキレッキレ、小池修一郎先生に「卒業後はアクションスターになったら?」と言われたことがある柚希さんのアクションはカッコよくて迫力満点、と見どころもたっぷり。

歌うまといえば、私が普段観る作品(つまりミュージカルではなくストプレ)でよくお見かけする横田栄司さんや壌晴彦さんも歌がお上手なのにびっくり(有川マコトさんはあまり歌っていなかったケド(^^ゞ)
壌晴彦さんなんて劇団四季のご出身だということを今回初めて知りました。

ブラックモビーとクジラの場面に映像が使われていましたが、あの場面綺麗だったな。
大きなクジラがうねるようにゆったり海の中を泳ぐところとか、やっぱり映像ならではで、ナマの舞台に映像を多用するのが苦手な私でも、これなら納得です。


柚希礼音さんのリサ。
ボーイッシュだけど可愛くて、みんなに愛されているのにあまり気づいていない天然系(?)
凛々しくて何ごとにも勇敢に立ち向かい、ひとたび武器を持てばとんでもない武闘派。
柚希さんが台詞で「~だわ」とか「~なのよ」と言うのが耳慣れなくて新鮮かつ違和感(笑)
・・・でしたが、物語が進むにつれて気にならなくなりました。
歌声は少し高めにして、歌い方も声も男役時代とはもちろん違っていましたが、相変わらずのびやかで声量豊か。
銃を構える姿はひたすらカッコよく、デレる笑顔はひたすらカワイイ(贔屓目)。
二幕冒頭の幻想シーンではドレス姿でとても美しいダンスを見せてくれました。

そのリサに常に寄り添うダンは渡辺大輔さん。
「1789」でデムーランやった人よね、くらいしか印象なかったのですが、とてもよかったです。
イケメン長身スタイルよしだし歌うまいし、声のトーンが柚希さんとよく合っていて、2人のデュエットは聴き惚れました。
記憶をなくしたリサに言う「君は誰かの大切な人なのかもしれない」は「僕の大切な人」なのだと思いますが、自分の思いを決して表に出さずリサを見守り、憂いを含んだ物静かな表情が印象的でした。
そんなダンが、今度はリサとの記憶を失うことになる結末は切なくてちょっぴりビター。

カーテンコールで柚希さんをお姫様抱っこしたり、片膝ついて柚希さんの手をとってキスしたりする姿もとてもステキでリアルナイトのよう。
来年の「ロミオ&ジュリエット」は観ないと決めていたのですが、渡辺大輔くんがティボルトなら観てみたいという気分になってコマル。

集落一の武芸の達人ながら人々には非協力的でわが道を行くチャベスは横田栄司さん。
妻を亡くして男手ひとつでジルマを育てていて、そのジルマが奴らに噛まれたためにワクチンが必要になってリサたちと行動を共にしますが、頼りになる兄貴分といったところでした。
横田さんがミュージカル?とキャスト発表された時は驚きましたが、さすがに存在感際立っていました。


意識がないダンを「どんなことをしても守る!」と抱きかかえるリサ。
そのまわりをゾンビたちが取り囲み絶対絶命!という刹那に聞えてくる南部風鈴の澄んだ音色。
風鈴最強。
それを持ってきたロベルトは村井成仁さん(東京公演は海宝直人さん)。
歌が上手くてちょっと浮世離れしていていかにも音楽家という雰囲気。
海軍さんたちが歌う♪海が好きな奴は~ の作曲者でもあるのですよね。

壌晴彦さん、吉野圭吾さん、有川マコトさんと脇を固めるのも何気に豪華キャストなのだと観て初めて気づいた次第です。  


ヴォイズ・オブ・ガイア 聴こえる
空と大地と海の声を聴いて


ゾンビたちはひたすら狂暴だけど、終わってみれば悪人は一人も出て来なかったな。
最初にウイルスを盗み出してパンデミックとなる原因をつくった人物は結局明らかにされず。
続編をつくろうと思えばできそう・・なエンディングでした。



公演が終わると不思議なことに「バイオハザード」ロス。早くDVD観たいよぉ のごくらく度 (total 1663 vs 1668 )


posted by スキップ at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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