
今年で12回目となるそうです。
中村勘九郎・七之助 錦秋特別公演 2016
2016年11月13日(日) 3:00pm NHK大阪ホール
1階C9列センター
「歌舞伎塾 」 (立役、女形の出来るまで)
司会・解説: 中村勘九郎 中村七之助
澤村國久 中村小三郎
曽我五郎時致(立役): 中村いてう
小林妹舞鶴(女方): 中村鶴松
音の演出効果: 中村仲四郎
幕が上がると舞台上に正座して頭を下げている勘九郎さんと七之助さん。
勘九郎さんは薄墨色の羽織、着物に紺色の袴、七之助さんは黒の羽織、着物に香色の袴、と2人ともシックな装いでした。
昨年までご兄弟のトークコーナーだった「芸談」を、「今年は何が新しいことをやってみよう」とお二人が案を出したという新しい試み「歌舞伎塾」がスタートしました。
舞台には化粧前が2つ設えられていて、歌舞伎役者さん(いてうさんと鶴松くん)が楽屋入りして顔をし、鬘をつけて衣装に着替え、舞台に出るまでをそのまま見せてくれます。
その間に勘九郎さん、七之助さんが説明したり、ちゃちゃ入れたり(笑)、客席からの質問を受けたりしてくれます。
ホリゾントにはスクリーンが設置されていて、化粧前の2人の様子が大画面に映し出されるので、「席が遠い人でも大丈夫、見えます。今回お金かけてます」と七之助さん。
鶴松くんの楽屋入りは阪神タイガースのユニフォームとキャップ。鳥谷選手のサインいり。
「それ、誰にもらったの?」と七之助さん。
「七之助さんです」と答える鶴松くんに、「そうです。僕のお陰です」とドヤ顔の七之助さん。
2人が浴衣に着替える時に柄がスクリーンに映し出されて、「中村格子」の説明がありました。
「中」と「ら」を3本ずつの格子・・・3+3で6=「む」と読む、というもの。知っていても実物前に改めて聞くと「おお」となります。
楽屋暖簾に描かれた中村屋の定紋・角切銀杏にもふれて、「角切銀杏のグッズが欲しい方はロビーで売ってます」と七之助さん。ほんと、如才ないMCぶりです。
眉をびんつけでつぶすところは、ぐいぐい押し付けるのがとても痛いそうで、実際に押し付けたびんつけを見せてくれると抜けた眉毛がいっぱいついていました。
勘九郎さんと七之助さんは「痛いのがイヤだから」眉は最初から剃っているそうです。
顔をしている途中のいてうさんはスクリーンにアップで映るとやっぱり勘三郎さんに面差しが似ていらっしゃるなぁとしんみり。
白粉を塗り、紅をさし、隈を取り・・・と段々出来上がっていく歌舞伎役者さんの顔を観るのはおもしろかったです。
白粉を塗った後、まつ毛についた白粉を丁寧にぬぐって取っていらして、そんなに細かいことまで、と感心もし、このところ以前にも増してザッとしかメイクしなくなった自分を顧みて反省もした次第です。
拵えの間に望月太左次郎さんが登場して、太鼓で風の音や雨の音、雷などを実演した後、これは何を表す音色か?と客席へのクイズも。
附け打ちの山崎徹さんの実演もありました。
前夜はいつも行く中華(白楽天ね)で食事した後、行きつけのバーで飲んだというお2人。
「藤原竜也さんに襲撃されたんだよね」と七之助さん。
「話長いからイヤなんだよ」と言いながら嬉しそうな勘九郎さん。「お互い役者だからいろいろやりたい夢もあって」と。
明け方まで飲んでいたらしく、「今朝エレベーターであったら、エレベーターと同化していました」と七之助さん。
この間、会場からの質問を受けてくれて、質問者の席までご兄弟のどちらかがマイク持って行く、というサービスぶり。
客席に「廓噺山名屋浦里」の脚本を書かれた小佐田定雄先生と奥様がいらしていて、逆インタビューする七之助さん。
「山名屋浦里は歌舞伎でずっとやっていける演目です」と七之助さん。
「八月納涼の時は壱太郎くんや児太郎くんたち若手女方がこぞって楽屋にやってきて「あの役やりたい」と言っていた、と。
「松也は号泣だったよね」と勘九郎さん。
「この演目、必ず僕は関西でやります」とキッパリ言い切る七之助さん。オトコマエ。
「顔見世はまたかという演目も多くて最後の演目とか若手に任せてもらえたら」とかなり爆弾発言?な七之助さんに「言うね」というニュアンスの勘九郎さん。
「いや、若手の、熟す前の青い果実というか・・・」という七之助さんに
「何でちょっとエロいんだよ!」と勘九郎さんツッコむ。
客席からの質問で、どうしたら七之助さんのように品のある色っぽい所作や雰囲気が出せるでしょう?というのがありましたが、
「僕が舞台でやっているようなことを普段やってる人がいたらちょっと頭おかしいかと思うでしょ?」と七之助さん。
「女性が品がないと思ったことはありませんが、女性を見て勉強をしている訳ではありません。諸先輩方の映像を見て、それを自分なりに採り入れています」と。
お2人は後の演目の拵えのためここで退場。
國久さんに小三郎さんが加わって進行されました。
花道から駆け込んで来て見得をする小三郎さんに大向うもかかっていました。
さらに仲四郎さんも加わって笛ここからは鳥の鳴き声などを出す笛の実演と会場から手を上げた人に実際やってもらうというコーナー。
なかなかあんな綺麗な音を出すのは難しそうでした。
でも勇気を出してチャレンジした人は手ぬぐいもらっていました。うらやまし~。
そうこうしているうちに、いてうさんは曽我五郎、鶴松くんは舞鶴の拵えが出来上がって
「正札附根元草摺」
「通常は幕が下がってる状態でやります。皆さんが知らない幕の中では、こんなことをやってるんですよ」 と國久さん。
曽我ものの荒事舞踊。
血気盛んな曽我五郎時致は、兄の十郎が酒宴で口論になってると知り、鎧を小脇に抱えて駆け付けようとしますが、それを舞鶴が引き留める、というお話。
今にも飛び出しそうな勢いの五郎の鎧の端を掴んで引っ張る舞鶴。鶴松くん、可愛かったな。
目にも鮮やかで楽しい踊りでした。
「汐汲」
蜑女苅藻: 中村七之助
後見: 澤村國久
かつて在原行平が流されたという須磨の浦に現れた美しい汐汲の蜑女の苅藻。
好きだった人の金烏帽子に水干(すいかん)を身にまとい、彼を思って舞い踊ります。
花道から登場した七之助さんのまぁ、美しいこと。烏帽子と狩衣の似合うこと。
儚げな美しさで汐の汲み方も綺麗でした。
引き抜きで衣装がパッと変わるところ、終盤の三段になった傘をダンダンダンと開くところは「おお~」とどよめきが起こっていました。
やっぱり初めてご覧になる方も多いのかなと思われ、ご兄弟の「あまり歌舞伎を知らない人にも・・」という志はちゃんと活かされているなぁと感じました。
「女伊達」
女伊達: 中村勘九郎
男伊達: 中村仲助 土橋慶一
後見: 中村小三郎
ここは吉原仲之町。
喧嘩相手の男達をあしらいながら颯爽と現れる女伊達。
女らしい姿を垣間見せつつも、挑みかかる男達を相手に勇ましくも美しい立廻りを繰り広げます。
「私にだって好きな人くらいいるわいな」みたいにデレたり、縁台に座っている男伊達を縁台ごと持ち上げて撃退する怪力ぶりを見せたり、と八面六臂の活躍のお仲さん。
勘九郎さんは顔はまぁ、アレだけど(笑)、七之助さんとはまた違った魅力のある女方。
踊りのキレのよさは随一で、茶目っ気があり、気風よくキッパリサッパリしたいい女っぷりでした。
今回は「歌舞伎塾」という新しい試みに重点を置いた構成で、時間も一番長く割いていましたし、実際とても楽しかったのですが、そこが充実していた分、後の舞踊2本が少し付け足しっぽい印象になってしまったのが残念です。
大変だとは思いますが、昨年の「新緑特別公演」のように、1本は短くてもいいからお芝居を観せていただけるとより楽しいのではないかと思いました。
踊りの感想短かっ の地獄度


