2016年11月09日
エクスカリバーにふさわしき者 月組 「アーサー王伝説」
宝塚歌劇団月組 次期トップスター 珠城りょうさん プレお披露目公演。
挑むのは「太陽王」や「1789」と同じ、Dove Attiaさん作・演出のフレンチ・ミュージカル。
2015年9月にパリで初演された作品で、これが日本初演です。
宝塚歌劇 月組公演
ミュージカル 「アーサー王伝説」
The Musical ≪LA LEGENDE DU ROI ARTHUR≫
Produced by DECIBELS PRODUCTIONS, Dove ATTIA
潤色・演出: 石田昌也
出演: 珠城りょう 愛希れいか 美弥るりか 朝美絢
千海華蘭 早乙女わかば 輝月ゆうま 海乃美月 佳城葵 ほか
2016年11月3日(木) 12:00pm シアター・ドラマシティ 16列上手
「岩に突き刺さった剣を引き抜いた者が王となる」というアーサー王伝説をもとに脚色されたミュージカル。
聖剣エクスカリバーを見事に岩から抜き、若くして王となる運命を背負ったケルト王アーサー(珠城りょう)の成長物語を軸に、美しい妻 グィネヴィア(愛希れいか)、その思い人となる円卓の騎士ランスロット(朝美絢)、隣国の暴君 メリアグランス(輝月ゆうま)、アーサーを恨み陥れようと企む魔女 モーガン(美弥るりか)、モーガンの魔の手からアーサーを守ろうとする魔術師 マーリン(千海華蘭)など、彩り豊かな人物が物語を紡いでいきます。
大変おもしろかったです。
同じ題材をベースにした当時星組の真風涼帆さん主演「ランスロット」も好きでしたが、アーサー王の物語って、いろんな切り取り方、表現の仕方があるのだなぁと思いました。
「王妃グィネヴィアがランスロットと愛し合ってしまったため火刑になる」という主筋は知っていても、どうなるんだろう、とハラハラドキドキしながら惹き込まれます。
アーサー王 vs メリアグランス、ランスロット vs メリアグランスの殺陣も迫力たっぷり。
客席降り・・というか、客席通路を使った演出が多いのも特徴で、特に、 グィネヴィアがお嫁入りのためキャメロンにやって来る場面は、幸福感いっぱいのグィネヴィアを筆頭に、上手通路には侍女たち、下手通路は騎士たちが列になって客席に笑顔を振りまきながら舞台まで歩いて行って、さながら蜷川幸雄さん演出の祝祭劇のようでした。
私が観た日は、凪七瑠海さんをはじめ月組若手が20人くらい観に来ていて、通路を通る騎士さんたちが客席のお仲間に気づいて手を振ったりしているのも可愛かったな。
横通路を前にした席でしたので目の前を歩くアーサーやランスロットやグィネヴィアや、いろんな人たちの姿を間近で堪能。
メリアグランスに捕らえられていたグィネヴィアが無事帰ってきた祝宴では、みんながテーブルに並んで歌いながら木のコップをテーブルにタンッて置いたり上げたりするアイリッシュダンス・・・これ、どこかで観たヤツだ、と思っていたら、雪組の「ドン・カルロス」でやっていたのと同じかな?
ダンスでは、アーサーを惑わすモーガンの場面がとても官能的で、すみれコード大丈夫?と思っちゃいました。
グィネヴィア(・・だけど中身はモーガン)のダンスも、バーッと脚広げてアーサーに絡みついたりして、見ていてドキドキ
「ケルト地方の民族音楽をポップにアレンジしたフレンチ・ロック」という音楽は、いかにもタカラヅカ的ミュージックとは一線を画したメロディライン。
一方、甲冑を主体にした男役のカッコイイ衣装は、ヅカではお手の物という感じで、宝塚らしいところとそうでない部分がうまく融合して、この舞台をつくりあげている印象でした。
お兄さんのケイとメリアグランスが「自分こそ聖剣エクスカリバーを引き抜く」と剣を交える中、あっさり岩から剣を抜いて空高く突き上げるアーサー少年と入れ替わりに同じポーズでせり上がって登場する珠城りょうさんアーサー。
その登場から放つオーラ ハンバない。
長身でたくましい体躯だからという以上の存在感と華があって、堂々の王っぷり。
まさに、エクスカリバーを持つにふさわしい王といった雰囲気。
珠城さんを見ていると、真ん中に立つことに照準を置いて大切に育てられたことが感じられる、正統派のトップスター誕生です。
アーサー王って、どちらかといえば辛抱役だと思うのですが、自身の苦悩を押し殺して見せる包容力。
「恐れられる王でなく、愛される王になりたい」と歌うアーサー王が、これから月組を率いていく珠城さんとも重なって見えます。
珠城さんといえば、ちょっと紗がかかったような声がくぐもって聞こえることがあって苦手だったのですが、「あれ?こんな伸びやかな声だったかしら?」と驚くくらいいい声で歌唱もすばらしかったです。
それと、モーガン一座の芝居に出た時、マリオネットのような人形振りをするのですが、愛希れいかさんは以前にもやっていたので上手いのは知っているとして、珠城さんも膝からガクンとなって本当に人形のように上手くてオドロキでした。
ラスト。
火刑のために繋がれたグィネヴィアとランスロットの鎖を自ら断ち切って、2人を許すアーサー。
己の罪深さに気がふれてしまったグィネヴィアをそっと抱き寄せます。これ以上ないというくらいやさしくやわらかな手の仕草で。その温かさと包容力。
愛希れいかさんのグィネヴィア。
可愛らしくて自分の心にとても素直なお姫さま。
アーサーを好きだという気持ちに偽りはなかったけれど、きっとそれは「恋」とは違うものだということに、自分でも気づいていなかったのでしょう。
(事実、忌み嫌っていたメリアグランスと比べたらはるかに好きだった訳だし。)
そして、ランスロットに対する自分の恋心を押さえることも隠すこともできなかった素直さ、純粋さが結果として悲劇に・・・。
とても表情豊かで情感たっぷりに、そして幸せそうにグィネヴィアを演じている印象でした。
そのグィネヴィアと道ならぬ愛を貫くランスロットは朝美絢さん。
円卓の騎士 No.1というには少し線が細い印象(アーサーもメリアグランスも大きいからね)ですが、キリリと冴え渡るような美青年。
そしてメリアグランスは輝月ゆうまさん。
悪の雰囲気プンプンでダイナミックで凄味あるゴートの王。
黒く長い髪もメイクもカッコよくお似合い。後半のあの左目、どうなってるの?
珠城さん同様、立派な体躯なので、美弥さんモーガンを背中に載せるアクロバティックなリフトも軽々。
同期の朝美さんと白・黒みたいな対照的な役ですが、2人ともよくお似合いでした。キャスティングすばらしい。
2人とも歌もうまいなぁ。
そして悪といえばモーガン。負のオーラこの上ない。
妖しく美しく、美弥るりかさん、男役ということを忘れてしまいそうでした。
低い声が、この魔女という役にはかえってハマっていて、台詞は元より、歌もとてもよかったです。
生きるために魔女に魂を売り渡さざるを得なかった哀しさより恨みの強さがより出たモーガンでしたが、凝ったメイクや衣装、髪型含めて、ご本人がノッて楽しそうに演じていらっしゃるように見えました。
モーガンに対する善の象徴のような魔術師マーリンは千海華蘭さん。
からんちゃんといえば「NOBUNAGA」のオルガンティノ宣教師が記憶に新しいですが、あの可愛らしさをすっかり封印。こんなシブい役も上手いのね。
元はといえばモーガンがアーサーに恨みを持つきっかけをつくった一人ですが、その悔恨を胸にアーサーに助言を与え続けるマーリン、素敵でした。
もう一人、アーサーの異母兄 ケイの佳城葵さん。
飄々とした雰囲気で、空気を読まず(笑)、重い舞台の清涼剤のようでした。
二幕で見せたカバンを使ったパントマイム、うまかったな。
そして最後は「一つの国に王は2人いらない」とおばかのふりしてたことも明らかになって、オイシイ役でした。
一つだけ気になったことが。
石田先生の脚本は言葉づかいに「あれ??」と思うことがよくあるのですが、今回、旅芸人に扮したモーガンが、自分の一座の芝居にアーサーとグィネヴィアも出てほしいと言うところ、
「ご出演申し上げたく」と言っていましたが、明らかにヘンですよね。
誰かチェックする人いないのかな。校閲ガールみたいな人。
カーテンコールの珠城さん。
「今日は凪七さんと月組のみんなが観に来てくれました。ありがとうございます。
私もかちゃさんのようにEvolution(凪七さんのディナーショーのタイトル) したいと思います」
いや~、ご挨拶も落ち着いていて実に堂々。
もう明日にでも宝塚大劇場のゼロ番に立てますね。
アーサー王キューピーストラップ 抽選対象公演だったけれど、各列36番の人が当たったのぉ~(私は37番) のごくらく地獄度 (total 1657 vs 1658 )
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