2016年11月04日

オトナな 「スカーレット・ピンパーネル」


sp2016.jpgミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」の日本初演は2008年。宝塚歌劇団星組によるものです。
2010年には霧矢大夢さん主演で月組版も観ましたが、星組版は私が柚希礼音さんを「発見」した公演でもあり、私はこの作品が大好き。

その星組版で主役のパーシー・ブレイクニーを演じた安蘭けいさんが、今回はヒロインのマルグリット役ということで、とても楽しみにしていました。


ミュージカル 「スカーレット・ピンパーネル」
原作: バロネス・オルツィ
脚本・作詞: ナン・ナイトン
作曲: フランク・ワイルドホーン
編曲: キム・シェーンベルグ
訳詞・翻訳・潤色: 木内宏昌
潤色・演出: ガブリエル・バリー
出演: 石丸幹二  安蘭けい  石井一孝  平方元基/佐藤隆紀(Wキャスト)  
矢崎広  上口耕平  相葉裕樹  植原卓也  太田基裕  駒木根隆介  
廣瀬智紀  則松亜海 ほか

2016年11月1日(火) 6:30pm 梅田芸術劇場メインホール 1階9列上手



フランス革命によって処刑が横行する恐怖政治下のパリで、無実の人々の命を救うべく立ち上がったパーシー・ブレイクニー(石丸幹二)を中心とするピンパーネル団の活躍を、パーシーが結婚したばかりのフランス人女優の妻マルグリット(安蘭けい)、彼女の元恋人でピンパーネルの正体を執拗に狙うフランス革命政府の公安委員ショーヴラン(石井一孝)との人間模様を織り交ぜながら描くミュージカルです。

今回は小池修一郎先生が潤色した宝塚版ではなくブロードウェイ版がベースということで、違っていることもいろいろありましたが、中でも、「マダム・ギロチン」や「ひとかけらの勇気」はじめ耳なじみのある曲も歌詞が違っていて??と思って幕間にポスター確認しに行ったら、なーんと、潤色も訳詞も小池先生ではないではないですか!(←事前にチェックしろよって話ですよ)。
しかも訳詞の木内宏昌さんって、「イリアス」や、最近では「アドルフに告ぐ」や「夜への長い旅路」の脚本、翻訳をされた方。へぇ~、こんな大衆ミュージカル(失礼)の潤色もされるんだとオドロキ。
そして潤色・演出はガブリエル・バリーさん。海外の方なのね(←今さら)。

冒頭、シルエットで映し出されるギロチンシーンがかなりリアル。
石丸幹二さん、石井一孝さんとも壮年の男性ということもあって、ショーアップされた宝塚版とはひと味違った濃厚な大人のドラマが展開されました。


脚本で一番大きな違いは、王太子ルイ・シャルル救出劇がないところかしら。
パーシーがルイ・シャルルを励まして歌う「ひとかけらの勇気」は、「悲惨な世界のために」とタイトルを変え、パーシーがサンスーシー侯爵の処刑を知り、「この状況に背を向けていていいのか」「自分には何ができるのか」と葛藤する曲になっていました。
後半ではマルグリットもまた違う歌詞でこの曲を歌っていて、「トウコさんの『ひとかけらの勇気』が聴けるなんて」と感涙モノでした。
マルグリットといえば、大詰めのパーシーとショーヴランの決選の場では、宮本武蔵よろしく二刀流で立ち向かう勇ましいシーンがあって、客席爆笑のち拍手喝采。トウコさんのための演出でしょうか。

マルグリットとアルマンが護送されるために他の囚人たちとともに一人ずつ名前を呼ばれる時、「詩人 アンドレア・シェニエ」と呼ばれていてハッとしました。
そういえば同じ時代だったわね。宝塚は本当に私にたくさんのことを学ばせてくれます。

ワイルドホーンの曲はやっぱりいいなと再認識もしました。
今回、2幕冒頭でロベスピエールが歌う「新たな時代は今」という曲と、終盤、パーシーが仲間たちに危険だから君たちをこれ以上巻き込むことはできないと歌う「ここから先は」の2曲が新曲、とアフタートークで安蘭けいさんがおっしゃっていましたが、どちらもいい曲。
特にロベスピエールのナンバーは、夢の終わりに気づきつつ自らも正しさを主張するというドラマチックな曲で、佐藤隆紀さんの歌唱力もあって、聴き応えたっぷり。
この曲の後、一瞬にしてプリンス・オブ・ウェールズに早替りして出て来た時はパラパラと拍手。わからない人もいた雰囲気でした。
この曲、来年再演される宝塚版にも入るのでしょうか。ロベスピエール役の七海さん、がんばれ~。

佐藤さんばかりでなく、石丸さん、安蘭さん、石井さんと歌唱力には定評のあるキャスト揃いですので、どの楽曲も難曲とは感じさせない歌い上げぶり。

石丸幹二さんの大ホールに響き渡る歌声は、さすが元四季のプリンス。
行動的で熱血型なのだけど、貴族らしいノーブルさもあり、二枚目でありながら茶目っ気もあって、パーシーがよくお似合いでした。
「君がスカーレット・ピンパーネルなのかっ」とショーヴランを煙に巻くところ、おもしろかったな。
グラパンはもうひとがんばりお願いしたい。トウコさんのグラパン、絶品だったから。

安蘭けいさんは、今でもパーシーできそうな気もしますが、華やかで綺麗で大輪の花のようなマルグリット。
歌もファルセットが一箇所苦しそうかな、と思いましたが、同じメロディでも男役時代とはキーも全然違う曲を、相変わらず伸びやかなよいお声で歌いこなしてさすがです。

石井一孝さんのショーヴランは、職務に入魂するあまり、マルグリットへの恋心は忘れてしまったように感じられました。 うーん、何だろ、自分の目的のために利用する存在というか。
だからマルグリットへの思いを歌う曲がスッと入ってこないような感じ。
・・・と、私はショーヴランが大好きなので、どうしても点が辛くなってしまうのですが、歌はさすがにお上手でした。
でも、「マダムギロチン」のあのイントロが流れてきた瞬間、柚希さんの声に脳内変換されてしまいましたが(笑)。

3人で歌う一幕終わりの「謎解きのゲーム」は凄い迫力で聴き応えたっぷり。
ただ、全体のバランスとして、パーシー、マルグリット、ショーヴランに比してピンパーネル団が若すぎるのではないかな?・・・いや逆でこの3人が年とりすぎか(暴言)。

そのピンパーネル団は若いイケメン揃えてきました(オジー除く^^;)。
まぁ、私は誰が誰かよくわからないのですが。
アルマンの矢崎広くんとデュハーストの上口耕平くんが中では目立っていたかな。
パーシーに言われて、「家を出る時、召使に爆笑されたよ」と言いながら、羽飾りのついた派手な衣装に身を包んだ彼らが歌う「男のつとめ」は楽しかったです。


楽しく拝見しましたが、俄然宝塚版が観たくなりました。
これ、2008年星組のマルグリット・パーシー・ショーヴラン。
今見てもカッコイイ

sp2008.jpg



この日は終演後、宝塚版思い出トークショーがありました(って、それがあるからこの日を選んだのですが)。
フィナーレの赤いドレスを着たままの安蘭けいさんと、初代マルグリットの遠野あすかさん。
司会は竹下典子さんでした。

あすかちゃんは、舞台を観て、「トウコさんがパーシーじゃないのが不思議」と何度もおっしゃっていました。
「ひとかけらの勇気」はワイルドホーンさんが稽古場で安蘭けいさんの声を聴いてつくった曲だと、以前にも聞いたことがありましたが、あすかちゃんが「知らなかった」と爆弾発言(笑)。
その時稽古場にもいたはずなのに・・・忘れてるだけ?8年も前だからあんまり覚えてないよね~、みたいな何ともふんわりした会話が続いていたのですが、「あら、でもこの作品はお二人にとって代表作でしょう?たくさん賞もお取りになって・・」とキッパリツッコむ竹下さん、無双(笑)。




帰ってから結局星組「スカーレット ピンパーネル」のBlu-ray観ちゃったよ~ の地獄度 (total 1654 vs 1655 )



posted by スキップ at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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