
夏の別箱公演「ローマの休日」 チケット取っていたのに諸般の事情で行けなかったからなぁ(涙)。
早霧せいなさんがトップに就任して以来、「ルパン三世」 「星逢一夜」 「るろうに剣心」と3作連続で宝塚大劇場観客動員100%を達成している絶好調の雪組。
正塚先生オリジナル作品に挑戦です。
宝塚歌劇雪組公演
ミュージカル・ロマン 「私立探偵ケイレブ・ハント」
作・演出: 正塚晴彦
ショーグルーヴ 「Greatest HITS!」
作・演出/稲葉 太地
出演: 早霧せいな 咲妃みゆ 望海風斗 彩風咲奈 鳳翔大
香綾しずる 彩風翔 月城かなと 永久輝せあ ほか
2016年10月22日(土) 11:00am 宝塚大劇場 1階6列下手
ミュージカル・ロマン 「私立探偵ケイレブ・ハント」
舞台は20世紀半ば 1950年代のロサンゼルス。
富裕層向けの探偵事務所所長を務めるケイレブ(早霧せいな)は、共同出資者であるジム(望海風斗)やカズノ(彩風咲奈)と共に高級住宅街に住むセレブ達の浮気調査やトラブル対応に奔走しつつ、恋人のスタイリスト イヴォンヌ(咲妃みゆ)との関係も良好でした。
ある日、行方不明となった娘アデル(沙月愛奈)の捜索依頼にやって来たメキシコ人夫婦が直後に事故死するという事件をきっかけに、会員制の超高級クラブオーナー マクシミリアン(月城かなと)と対決することになっていきます・・・。
雪組のスーツものも久しぶりだなあと思いながら、オープニングでスーツ揃いの男役群舞がこれでもか、というくらいあって、しかも振付がとてもカッコよくてまず目を奪われます。
正塚先生にしては歌もダンスも場面転換も(笑)、結構たくさんありますし、ちゃんと盆が回ったりセリが上下したりもしていて、「これはよいマサツカ」と初日あたりにTwitterに流れていたことを思い出しました。
恋あり、ミステリーあり、ハードボイルドあり、アクションあり、男同士の友情あり、と盛りだくさんな内容ですが、どれもそれほど深掘りはしていなくて、サラサラ流れていく感じ。
やたらコーヒーメーカーをフィーチャーすることで時代を表現したり(?)、前夜をイヴォンウと過ごしたケイレブにジムが「昨日と同じ服だな」とさり気なくツッコんだりといった正塚先生らしいこだわりが散りばめられていましたが、今イチ不発だったような(笑)。
殺されたアデルの部屋に残された蘭の花とか、マクシミリアンと何やらいわくありげだったレストランオーナーとか、思わせぶりな伏線らしきものもありましたが、特に回収もされず(爆)。
こうなるんだろうな、と思ったとおりに物語は進んでいきます。
宝塚のオリジナル作品は基本あて書きなのですが、まさに早霧さん(と咲妃さん)のための脚本という印象。
特にケイレブの、正義感が強くて熱いオトコ、でありながら少年のような佇まいと可愛らしさもアリ、というキャラクターがそのまま早霧さんに重なってとても魅力的。
シャープで都会的で、スーツ、レザーパンツなど衣装の似合いっぷりハンパない。髪型も超イケてる・・・と、早霧さんファンにはたまらないのではないかしら。
一方で、望海風斗さんのジムは物足りないです。
望海さんの演技がどうとかではもちろんなくて、脚本的に。
悪役でもなく屈折もしていない望海さんは新鮮ではありますし、こんな役を余裕たっぷりにこなす望海さんもいいですが、ジムはあくまでもケイレブの仲間の2人のうちの1人の域を出ず、役不足感は否めません。
・・・ジムが襲われて怪我をした時、泣きわめく恋人のレイラ(星南のぞみ)に「うるさいっ!ヽ(`Д´)ノ」とライアン刑事が怒鳴ると、「ひどいこと言うなよ!」とそのライアンを怒鳴るジムは可愛かったですが。
本来なら敵役のマクシミリアンを望海さんで、とも思いますが、それではいつもと同じになってしまうのを危惧したのでしょうか。
それならいっそのこと、ナイジェル(香綾しずるさん。第2次世界大戦のノルマンジー作戦の英雄で狙撃の名手。同じ部隊だったケイレブに戦場で心ならずも命を救われた過去を持つ)の役をもう少し広げて望海さんに、ではどうだったかなぁ。
カズノは彩風咲奈さん。
ケイレブやジムより少し年下の設定かな。こちらもこれといったエピソードも活躍もないただのお仲間。
今風の洋服を着こなして、脚ながーい咲ちゃんを堪能できました。
マクシミリアンの月城かなとさん。
これまであまり黒いイメージはなかったですが、あの端正なお顔に冷酷な悪役はなかなかお似合い。
スケール感もあってちゃんとケイレブの前に立ち塞がる感じも出ていてよかったです。
それにしてもマックス、邪魔な人間を殺すことなんか何とも思っていない極悪非道なマフィアにしては脇が甘いよね(笑)。
他に、寡黙なヒットマン ナイジェルの香綾しずるさん(クール!)、ケイレブが信頼を寄せる刑事ホレイショーの彩凪翔さん(やり手の金髪!)、その部下でコンビを組むライアンの永久輝せあさん(チャラいイケメン!)、探偵事務所の雑用係とレバーの縣千さん(オッケーサー 抜擢!)あたりが男役では目立っていました。
咲妃みゆさんのイヴォンヌは自分の考えをはっきり言葉にできる自立した大人の女性。
ケイレブのことを好きだけど、彼の仕事のことやすれ違うところも冷静に見ていて、ケイレブの方がちょっと片思い度強しといったところ。
いや~、みゆちゃん、可愛らしいイメージだけど、こんな大人の役もできるのね。やっぱりお芝居も歌も上手いなぁ。
残念だったのは衣装がどれも似合ってるとは言い難かったこと。この時代のファッションとはいえ、スタイリスト役でもあり、衣装さんも着こなすみゆちゃんももうひと頑張りほしいところです。
娘役さんでは、有沙瞳さんがパーティの歌手で美声を響かせていましたが、最後の空港のシーンでチラッと出てくるCAさんが彩みちるさんでびっくり。
「るろ剣」の弥彦で注目されて、次の望海さん主演「ドン・ジュアン」ではヒロインだったのに、みちるちゃんに何があったの?
役付きといえば、鳳翔大さんがメキシコ人のお父さん役で一場面だけの出演だったのにもオドロキでした。

ショーグルーヴ 「Greatest HITS!」
スマホで音楽を楽しむ現代の若者(永久輝・陽向)がジュークボックス見つけて「何だこれ?」みたいになっていると、ジュークボックスの精みたいな4人が出て来てコインを入れて曲をかける方法を教えるというオープニング。
そういえばジュークボックスなんて近頃ほとんど見なくなったし、今ドキの若い子は使い方も知らないのかな。
この「ジュークボックス」がこのショーのコンセプトになっていて、まさに Greatest HITS・・・マテリアルガールとかゴーストバスターズとかオーバーザレインボウとか、大ヒットしてジュークボックスに入っているような、少し懐かしい耳なじみのある曲のオンパレードでした。
白いタキシードの男役、ピンクのドレスの娘役が勢揃い、っていかにもタカラヅカなプロローグ。
次々現れては歌って踊って笑顔振りまく雪組の皆さん、目が忙しい。以下に印象的だったシーンをいくつか。
Sophisticated Lady
田舎から出てきたサエない女の子な咲妃さんを、白いプリンス彩風咲奈さんが手を差し伸べてあげると彼女は大変身して鮮やか真っ赤なドレスで歌い踊る、というシーン。
ここでは咲ちゃんの王子様っぷりとマドンナの「Material Girl」を歌う咲妃さんが聴きモノでした。
Midnight Illusion
鏡の世界に迷い込んだ男(早霧)が鏡の中のもう一人の自分(望海)に出会って翻弄されるというストーリーらしい。
アダルトというか、妖しく色っぽい男役二人のダンスシーン。
舞咲りんさんが歌う「Summertime」の迫力のヴォーカルも際立っていました。
Happy Christmas
トナカイが2頭(鳳翔・月城/大きくてイケメンのトナカイだ)が銀橋で「赤鼻のトナカイ」歌います。
「早すぎだろ」「世間はハロウィンなのに~」とかぼやきながら(笑)。
そこに小太りサンタ(早霧)が登場してお尻ふりふり可愛く歌い踊り、やがてカッコイイ男に変身して怒涛のクリスマスメドレーになります。
「荒野の果てに」が入っていたのがうれしかったです。とても好きな讃美歌なので。
クリスマスソングってどれも知っていて楽しいしテンションも上がりますが、いかにも季節が早い。
東京公演は12月だからそこに焦点を合わせたものだと思いますが、何となく劇団も作家さんもやっぱり「中心は東京」なのね、というのが感じられて個人的には少し寂しかったな。
This is the World
ベートーヴェンの「運命」が流れる中、赤の運命(望海)と白の宿命(彩風)の対決。
運命は歌で、宿命はダンスで。
まわりで対決するダンサーは地の赤と灰の白の2色。
この場面がこのショーの中で一番好き!
望海さんの熱唱には心打たれますし、彩風さんがそれにダンスで張り合うというのも新鮮。
2人もトリハダものの迫力。
そして♪ジャジャジャジャーンという「運命」あのフレーズが鳴り響き・・・。
このシーンだけでももう1回観たいっくらいです。
この後、血と灰の男女の中から早霧さんと咲妃さんが現れて、Over the Rainbow の曲に乗せてデュエットダンス。
男役としては小柄な方の早霧さんが舞台いっぱいつかったダンスでひと際大きく見えます。
小さな体でリフトもしっかり入っていましたが、リフトされる方のポーズが何だかしがみついているみたいに見えて、振付今イチでザンネン。
真條まからさんのかげソロ、よかったです。
ロケットの前の銀橋の歌手は月城かなとさん。
月城さんはエトワールも勤めていて、組替え前とはいえ、重用ぶりが目立っていました。
もう一つ。
黒燕尾でトップの早霧さんが次のシーンに備えて去った後、いつもなら二番手中心のダンスとなるところ、今回は望海さんもいなくなって、彩風さんがその場面のトップで踊ったこと。
男役群舞を率いる押しも押されもしない三番手さんになったと喜ばしい。
ベイビーフェイスの咲ちゃんですが、男っぽくなりましたね。
ショーを通じて、主役級を除くと、永久輝せあさんのスターっぷりが際立っていました。
もちろん期待のスターだし、いいポジションを与えられているのですが、それだけではない華やオーラがあって、どこにいてもすぐ目に入ってくる感じ。
甘いマスクの二枚目だし歌もダンスも上手いし、カッコいいし、ひとこちゃんからますます目が離せなくなりそうです。
「ケイレブ」をずーっと「ケレイブ」だと思っていて、ちぎちゃんの開演アナウンスで気づく始末・・・カタカナにヨワイじーちゃんみたいで恥ずかしい の地獄度


