
シネマ歌舞伎となったのは、昨年11月新橋演舞場の初演バージョンを収録されたもので、エース役の福士誠治さんはじめいくつかの配役や演出も異なっていて、興味シンシンでした。
シネマ歌舞伎 「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」
原作: 尾田栄一郎
脚本・演出: 横内謙介
演出: 市川猿之助
スーパーバイザー: 市川猿翁
出演: 市川猿之助 市川右近 坂東巳之助 中村隼人
市川春猿 市川猿弥 福士誠治 嘉島典俊 浅野和之 ほか
2016年10月30日(日) 2:50pm なんばパークスシネマ シアター11
3時間半の舞台を約2時間の上演時間に短縮ということで、猿之助さんは先日の「猿翁アーカイブ」の時、「いいところはみんなカットした。じゃないと次観に来ないじゃん」と天邪鬼なことをおっしゃっていましたが、もちろんそんなことはなくて、「ルフィが兄エースの処刑宣告を知り、監獄インペルダウン、そして護送先の海軍本部マリンフォルフィへと救出に向かう」という骨子はそのままに、カットした部分はナレーションで補うなどしてうまくまとまっていました。
私が気づいたところでは、一幕で最初にルフィが飛ばされたアマゾン・リリーでのハンコックとのエピソードと、三幕の白ひげの、特にスクアードとのいきさつが大幅カットされていました。
アマゾン・リリーはともかく、スクアードの方は残してほしかったな。自分を刺したスクアードを「馬鹿な息子をそれでも愛そう」という白ひげの大きさを示すところだから。
舞台化された部分ではないのですが、私は赤髪のシャンクスとルフィとのエピソードが大好きなので、オープニングであの音楽が流れてすでに片腕となったシャンクスがルフィに麦わら帽子をかぶせるシルエットが流れるだけでウルウルしました。
大画面のアップで役者さんの表情を楽しめるのはシネマ歌舞伎の醍醐味ですが、今回の映像は「客席からではこの視点ではなかなか見られない」というアングルはあまりなかったという印象です。
その代わり(?)、殺陣のシーンなどに☆とか!!とか、アニメっぽいエフェクトが挿入されていましたが、個人的にはあれはいらないかなぁ。
全体としては、いろいろカットされていることを差し引いても、この後の松竹座版でかなりバージョンアップしたことがよくわかります。
続く博多座ではさらに進化したと聞いていますので、来年10月どんな姿で再び私たちの前に現れるのか本当に楽しみです。
初めてご覧になった方も結構いらっしゃるのか、本水のシーンの後はざわめきが起こっていました。
いやいやいや あんなものじゃなかったですから。ぜひナマで観ていただきたい。
そして、あれを毎日2回、ふた月もやっていた役者さんたち、スタッフさんたちのタフネスに改めて感動した次第です。
エースの福士くん。
結構濃いめのメイクで眼光鋭く、クールでカッコイイエースでした。ルフィの「兄」というのはどうか、というのは少しありますが。
歌舞伎ふうの見得もピタリとキマリ、あの紅い大旗を使う殺陣シーンも難なくクリアして、身体能力の高さが伺えます。
白ひげとエースの最期に続くマルコのモノローグ「・・その誇り高き後ろ姿には、あるいはその海賊人生に、一切の逃げ傷なし!!!」に涙ぬぐっている私を冷ややかな目で見ていた隣のカップル男子。終映後「ふーん。思ってたよりおもしろかった。あのボン・クレーすごいな」とおっしゃっていました。やっぱそこイクよね。
巳之助くんボン・クレーは、スクリーンの中でも大活躍。想像以上に汗びっしょりの大奮闘でした。
巳之助くんの3役の中では私はスクアードがイチオシなのですが、全くといっていいほど出番なかったのは残念だったな。
その割に、元々出番が少ないにもかかわらず竹三郎さんべラドンナはきっちり入っていたり。
このあたり、猿之助さんのバランス感覚でしょうか。
本水のシーンをはじめ、クザンの吹雪を撒き散らしながらのぐるぐるフライイングやもちろん猿之助ルフィのサーフィン宙乗り+ファーファタイムまで、ナマの舞台に勝るものはありませんが、この作品の楽しさ、歌舞伎の何でもあり感は伝わっているのではないかしら。
「シネマ歌舞伎ワンピース、すごくおもしろかったので来年は絶対舞台観に行く!」という声もTwitterでちらほらお見かけしていて、これが舞台を、歌舞伎を観るきっかけになるならとてもうれしいことです。
白ひげ海賊団が大ゼリに乗ってゆっくり回転しながら上がってくるシーンがカットされていたのは返す返すもザンネン の地獄度


