2016年10月25日

フォルスタッフの行くところに悲劇なし! 月組 「FALSTAFF」


falstaff.jpg86期生にして専科の星条海斗さんが月組メンバーを率いての初主演作。
「大酒飲みで好色なイングランドの騎士 フォルスタッフがひょんなことから『ロミオとジュリエット』の物語に飛び込んで・・」というプロットを聞いた時は、「何じゃそりゃ」という感じだったのですが、これがとってもおもしろかったのでした。


宝塚歌劇 月組公演
Bow musical 「FALSTAFF」 
~ロミオとジュリエットの物語に飛び込んだフォルスタッフ~

作・演出: 谷正純
出演: 星条海斗  暁千星  美園さくら  光月るう  
夏月都  宇月颯  蓮つかさ  憧花ゆりの/汝鳥伶 ほか

2016年10月16日(日) 11:00am 宝塚バウホール 2列センター



物語の冒頭はロンドンの下町の酒場。
民衆たちが歌い踊りながらフォルスタッフの悪口言っているところに当のフォルスタッフ登場。
シェイクスピアの物語に出てくるフォルスタッフは大兵肥満の老騎士ですが、タカラヅカではもちろんそんなことはなく、ご覧の通りの綺麗なナイト。
でも、「大酒飲みで好色、威勢はいいが実は臆病者」という性格はそのままで、酒場の払いもたまっている様子です。
そこへ、遊び仲間のハリー王子登場。

「え?!ロミジュリだと思ってたのに、ハル王子出てくるのっ?」 とまず驚き、
「しかも、ハル王子、ありちゃんじゃん!」 と二度ビックリ。
暁千星さんはロミオとばかり思っていましたので (いや実際、メインの役はロミオなのだけれども)。

この場にハリー王子の父 ヘンリー四世逝去の知らせが入り、ハリーはヘンリー五世となって覚悟を決めるところが短い場面なのですが、とてもよかった。
どちらかといえばベイビーフェイスで可愛い系の暁千星さんハリー王子の顔がキリリと引き締まり、親しげに話しかけるフォルスタッフに、「誰に言ってるんだ?」と冷たく言い放つところ。
蜷川幸雄さん演出の彩の国シェイクスピア・シリーズ「ヘンリー四世」で、松坂桃李くん扮するハル王子が、、訪ねて来たフォルスタッフ(吉田鋼太郎)を、「私はお前など知らない」と冷徹に切り捨てる幕切れがありありと目に浮かびました。

そうしてヘンリー五世から国外追放を言い渡されたフォルスタッフが従姉妹であるキャピュレット夫人(憧花ゆりの)を頼ってヴェローナに現れるところから本格的な物語がスタート。
どちらも15世紀初頭の話なので、全くあり得ない設定ではないところがうまいなぁ。

「MONTAGUE」「CAPULETTE」 と左右に赤と青の大きな垂れ幕が下がるヴェローナの場面になると、♪ここはヴェローナ~ 愛しいヴェロナ~ とか ♪この~町で生まれた子どもが~ 最初に覚える言葉は~ 憎しみ 憎しみ と歌いそうになります。



キャピュレット家で仮面舞踏会が開かれると知ったフォルスタッフは早速キャピュレット邸へ。
そこで、フォルスタッフがジュリエットにひと目ぼれしてしまいます。
もちろん、ロミオとジュリエットもひと目で運命の恋に堕ちて、そこにフォルスタッフがうざく(笑)絡んでくるというストーリー。

バルコニーのシーンで、暗闇にまぎれてその場にいたフォルスタッフが、ジュリエットの愛の告白を自分への言葉と勘違いするあたり、お約束のドタバタなのですが何だかおもしろくて大笑いしました。
ジュリエットと結婚式ができるものと意気揚々と出かけた教会で、「勘違いにも程がある!」とかロミオに言われちゃったり

ロミオとジュリエットが結婚した後も諍いの絶えない両家で、ティボルトがマキューシオを殺し、そのティボルトをロミオが殺して追放となり、ジュリエットはパリス伯爵との結婚を迫られて切羽詰まる中、ロレンス神父に薬を授けられ・・・と悲劇のラブストーリー通りに物語は展開していきます。
フォルスタッフが酒場でドンッ!とテーブルを叩くたびに隣りに座った薬売りの薬がバラバラになって落ちてごちゃ混ぜになる・・というあたりから展開は読めてしまうのですが、それでも、両家が若い恋人たちの亡きがらを前にしたあの霊廟で、悲劇とは違う結末に、フォルスタッフが、「フォルスタッフの行くところに悲劇なし!」と高らかに謳い上げるラストは祝祭感に満ちて、観ているこちらまで幸せな気分になります。


星条海斗さんほとんで出ずっぱりで大熱演。全力投球のフォルスタッフ。
元々熱演型で声も大きいジェンヌさんですが、常にテンション高く大声で、聴いていてちょっと疲れる(笑)。
もう少し緩急があってもいいかなぁ。
あの衣装やマントの着こなしはピカイチ。
髪も衣装も紫色なのは、モンタギューの青とキャピュレットの赤を混ぜたことを象徴しているのかな?
浮世離れした感じもあるので、幕間のロビーでは、「フォルスタッフって人間なん?」という声も聞こえてきて、ちょっと笑っちゃいました。

暁千星さんは前述したハリー王子も短い出番ながらとてもよかったのですが、本役・ロミオもやはりお似合いでした。
やはり正統派王子様タイプの男役さんです。
ティボルトを殺してしまった後から始まる二幕冒頭の悩めるロミオのダンスが、ダンサー・暁千星の本領発揮でとてもドラマチックでよかったです。
上背があるので、美園さくらちゃんジュリエットのリフトも流れるように綺麗でした。

宇月颯さんのティボルトが超クール。
配役知らなかった(←それくらい知っておきなさい)のに、出て来た瞬間「ティボルトだ!」とわかりました。
ギラギラしてるけど品よくスマート。
歌もダンスも殺陣も秀でていて、マントさばきや胸に右手あてて膝をつく姿の美しさに見惚れました。男役として確立している感じ。
マキューシオの蓮つかささんとの対決シーンは迫力たっぷり。

99期期待の娘役・美園さくらさんは可憐な中に芯の強いジュリエット。
娘役では他に晴音アキちゃんが歌唱で目立っていました。面差しが少し蘭はなちゃんに似てるのね。

汝鳥伶さんは、イングランドのレイトン卿・ヴェローナ大公・ロレンス神父・薬売りと4役の大活躍。
フォルスタッフに、「兄弟いないの?」」「兄弟が神父と大公とか?」と言われていました 


みんなで踊る独特の振付がカワイイフィナーレのダンス。
宇月さんと蓮さんがいなーい、と思っていたら、後から天使のわっかつけた2人が笑顔で合流してきて、これまたハッピー感満載でした のごくらく度 (total 1650 vs 1649 )


posted by スキップ at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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