2016年10月11日

泣いた笑った くじけ求めた 「エリザベート」2016 総括


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ミュージカル「エリザベート」 2015-2016シリーズ。
昨年の帝劇2ヵ月、今年は6月の帝劇から始まって、福岡、大阪と巡ったツアーは
最終地 名古屋で絶賛公演中です。
という訳でスキップ的2016年「エリザベート」総括。

ミュージカル 「エリザベート」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ 
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞: 小池修一郎

2016年9月12日(月) 6:30pm 梅田芸術劇場 2階5列センター
9月14日(水) 6:30pm 1階14列上手
9月21日(水) 6:30pm 1階4列下手
9月28日(水) 6:30pm 1階12列上手


4回観たキャストは冒頭の画像のとおり。
花總シシィと井上トートが4回のうち3回ずつ、と多寡はありますが、ダブルキャストはすべてコンプリート。
同じ曲、同じ場面でもキャストによって、また組み合わせによって変化する醍醐味を味わいました。
そういえば今回初めて2階席からも観たのですが、照明の美しさ含めて舞台全体を俯瞰できるし、「トート閣下、あんなところから」(笑)という発見もあって、なかなかよかったです。

意図した訳ではなかったのですが、4人の少年ルドルフも4回でコンプリートしてたという。
ちなにみ、少年ルドルフといえば、冒頭の亡霊たちが ♪エリザベートのために したことよ~ と歌う「我ら息絶えし者ども」で大人たちの声の間を切り裂くような少年ルドルフのボーイソプラノにいつも感心するのですが、今回の4人の中では最初と最後の2人(大内天くんと池田優斗くん)が抜群にうまかったです。

さて、2016年の総括ですが、作品や役者さんたちの感想は昨年と今年新たに観た人の印象とで書いてしまいましたので、今回は数々ある名曲の中から私の好きな3曲を選んで、それに関連した場面や歌や役者さんを振り返るという趣向にしたいと思います。


♪ 闇が広がる

「エリザベート」といえば「闇広」というくらいポピュラーな曲。
私も大好き。あのイントロが聞こえてくるだけでもゾクゾクします。
トートがソロで歌うバージョンも好きですが(ソロパートは個人的に歌う時の表情含めて井上トートの圧勝だと思う)、リプライズのトートとルドルフのデュオの高揚感はハンパありません。

昨年、井上芳雄くんが「自分がルドルフをやった時は高音パートはルドルフだったのに、トートになったらトートが高音部になったから城田くんの影に隠れて小池先生に抗議した」みたいなことをおっしゃっていたと思うのですが、2016年はそれが元にもどったのかな?
大阪のルドルフは古川雄大くんシングルキャストでしたが、井上くん、城田くんどちらとも声のバランスはよくて聴き応えありました。
古川くんと井上くんはどちらも長身(公称181㎝)で背の高さが同じなので、10㎝くらいさらに上背がある城田くんの方がさすがに操っている感、弄んでる感はより出ている印象でした。

城田くんといえば、ルドルフが自殺へと導かれる場面で、「死にたいのか」という言葉をウィスパリングというか、囁くように言っていましたが、少なくともこの前の場面でシシィ相手に2回くらい同様の囁き台詞を言っていて、さすがにこれは多用しすぎかと。
どうしても「またか」と思っちゃうので、ここぞという1回に絞った方がよくないかと老婆心ながら。

そういえば、「闇が広がる」と並んで人気の「最後のダンス」で、ラストの アアァ〜 〜と人外のもの的なハイトーンボイスで歌うところ、城田くんやりませんでしたが、たまたま私が観た日がそうだったのかな。それともあれは井上トートだけなのか?


♪ 私が踊る時

二幕冒頭でフランツとともにハンガリーの戴冠式を終えた直後のシシィが「勝ったのね」とトートに宣言する曲。
シシィのナンバーとしては、「私だけに」が代表的だと思いますが、私はこの「私が踊る時」が断然好き。

一人でも 私は踊るわ
踊りたいままに 好きな音楽で
踊る時は 命果てるその刹那も
一人舞う あなたの前で

と歌うシシィが自信と誇りに満ちあふれていて、まさにこの時がオーストリー皇后としてのシシィの絶頂期だったのだと思います。
ここが自信満々であればあるほど、この後の孤独や絶望感が一層際立ちます。

花總まりさん独壇場。
美しく気品があって、傲慢でちょっとS。
トートが差し出した手に自分の手を重ねる仕草を見せておいて、その手をチョンとはじいてからかうような高飛車な笑顔を見せながら余裕たっぷりに横を向いたり。

花總さんは決して声量が豊かという訳ではありませんが、地声のまま上げていって歌う、台詞の延長に歌があるという感じて、これこそミュージカルの歌唱のあるべき姿なのではないかなと思う訳です。
オーラ全開であの華奢なカラダのどこに?と思うくらいエネルギーを発散していたり、かと思えばまるでボロ布のように打ちひしがれていたり、人生のステージに応じて劇的に変化していく彼女を通して私たちは「エリザベート」の生き様を追体験している思い。

そして、この「私が踊る時」についていえば、トートは井上芳雄くんがやっぱりハマっています。
昨年の感想にも書いたのですが、階段からゆっくり降りてくるシシィを膝をついて迎えるトートの姿の美しさがハンパない。
差し出した指の先まで神経が行き届いていて綺麗。

9月28日の井上芳雄くん大阪楽の「私が踊る時」が凄まじくて、私がこれまで聴いた「私が踊る時」史上 bestでした。
火花を散らしながらも一緒に高みに上っていく感じ。
ブレスのタイミングまでぴったりで、観て聴いて心地よい。終わった直後に「もう1回聴きた〜い」となりました。


♪ 夜のボート

「エリザベート」ではいろいろな楽曲がリプライズで登場しますが、中でもこの曲のリプライズが秀逸だと思います。
厳密にいえば、曲名も歌詞も違うので「リプライズ」ではないのかもしれませんが。

恋が成就しこれから結婚生活が始まる希望に満たされて歌う「あなたが側にいれば」
時を経て、永遠に寄り添えない二人の離れた心を歌う「夜のボート」
同じメロディなだけに一層その痛々しさ、切なさが心に染み入ります。

しかも、フランツは「わかってほしい 君が必要だよ」と心からシシィを求めているのに、
離れてしまった2隻のボートは
♪すれ違うたびに 孤独は深まり 安らぎは遠く見える 
という人生の厳しさ。

ただ、東宝版の「あなたが側にいれば」は、「皇帝に自由などない」と歌うフランツに対して、シシィは「妨げるものなどないわ」と最初からすれ違う二人の思いが見える歌詞になっています。
ここ、宝塚版ではフランツは「それでも君がついて来てくれるなら 嵐も怖くない」と2人でともに生きていこうという歌(タイトルも「嵐も怖くない」)で、違いが顕著です。

田代万里生くんのフランツ。
昨年帝劇で観た時は若いころはまだしも年齢を重ねてからは少しキツイと思っていたのですが、今年は少し驚くくらいに歳をとっていました。
歌声も歌い方も年齢を追って変えていて、メイクも、あんなに皺を描かなくても、と思うくらい。
カーテンコールの時、みんなが手を振る中、いつも一人右手を胸にあてていて、最後にサッと白手袋の右手を挙げるのが何気にツボでした。



番外編
♪ マダムヴォルフのコレクション

このシリーズでは未来優希さんがルドヴィカとマダム・ヴォルフを二役で演じていて、当然のことながら歌い方も声も、もちろんメイクも雰囲気もガラリと変えていてとても上手い。
とりわけ、マダム・ヴォルフは彼女のパンチある歌声とよく合っていて聴き惚れます。

で、そんな中見かけたこのツイート。
「はじめて『マダムヴォルフのコレクション』を聴き、そのなかに『マリー』と『ミッツィ』の名を聞き取ったとき、全体の寓意が解き明かされたようで鳥肌がたったものだった。ルドルフが執心し続けた高級娼婦ミッツィ・カスパー、そして言わずと知れた皇太子ルドルフの心中相手、マリー・ヴェッツェラ嬢」

この歌詞ってそこまで考えて作詞されているのかと愕然とする思いでした。
他の楽曲も推して知るべし。
いやはや奥深いです、「エリザベート」。



ラストにシシィが歌う「私だけに」リプライズ。

♪ 泣いた 笑った 挫け 求めた 虚しい戦い 敗れた日もある
それでも 私は いのち委ねる 私だけに

これって、どんな人の人生にも当てはまること。
シシィばかりでなく、フランツもルドルフも、ゾフィーも、それぞれが時には失敗したり過ちを犯しながらも精一杯自分の信じる道を生きて、その生き様を見せてくれます。
それは、ハプスブルクの落日に生きた王家の人々であろうと、今この時代に生きている私たちだって変わりないと思います。

この「エリザベート」の物語が、普遍性をもって愛され、受け容れられ、繰り返し上演されている所以でしょう。



2016年 梅芸版感想:   
2015年 帝劇感想:    




次に再演されるのは3年後か4年後でしょうか。今度はもっとチケット取りやすくなりますように のごくらく地獄度 (total 1642 vs 1644 )



posted by スキップ at 22:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
渾身の総括ありがとうございます。
私も本当にずっと楽しみに待っていましたので、
名古屋の初日は興奮がものすごかったです(笑)
史上最強だったな…。

私の今回の発見は、プロローグで亡霊たちが漂った後みんな伏せてる中、ヴィンデッシュ嬢だけがトートの指示を受けて踊っていたこと。
ここから始まってたのか!
Posted by めめねず at 2016年10月12日 07:47
♪めめねずさま

長いばかりで少しも「渾身の」にはなっていなくて
お恥ずかしい限りです(^^ゞ

あ、そうそう、あそこ、一人踊っている人がいるなぁと
思っていたのですが、ヴィンデッシュ嬢だったのですか!
いや~、やはり奥深いですね。
日曜日に宙組エリザのライビュ観る予定ですのでこの目で
確かめたいと思います・・映るかどうかわかりませんが(笑)。

後で思い出して書き加えたのですが「最後のダンス」の
ラストのハイトーンのところ、やはり城田くんはやらないのですかね?
Posted by スキップ at 2016年10月13日 00:21
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