
さて、吉野川に流れにたっぷり涙を流して、スパークリングワインで水分補給した後は、2演目、何だか肩の力を抜いて気楽に楽しみました。
秀山祭九月大歌舞伎 夜の部
2016年9月17日(土) 4:30pm 歌舞伎座 1階4列上手
二、眠駱駝物語 らくだ
作: 岡 鬼太郎
出演: 市川染五郎 尾上松緑 坂東亀寿 中村米吉 中村歌六 中村東蔵 ほか
古典落語が題材の「らくだ」。
「らくだ」といえば、2008年8月 納涼歌舞伎で観た「らくだ」(シネマ歌舞伎にもなっている)が
私にとっての極めつけ。
勘三郎さんの久六、三津五郎さんの半次、亀蔵さんのらくだ・・・今思い出しても笑いがこみ上げてきます。今年の松竹座初春大歌舞伎でもかかりましたが、こちらは上方版で、今回は正統派お江戸バージョン。
全体的にはあっさりとしていて江戸下町の風情も落語風味も薄めな印象。
もちろん、それはそれで悪くないし、とても楽しめましたが。
それにしても、久我之助やったすぐ後の幕で久六やる染五郎さんの落差よ。
メンタル的にどんなジェットコースターなんでしょ(笑)。
愚鈍な感じの久六が杯を重ねるにつれて強気になる後半の染五郎さんもいいですが、
個人的は前半の気の弱そうな、不安気な表情が好み。
その場面のココゾという舞台写真、買ったよねー。
そういえば、初日から数日間は松緑さん半次が久六脅す時に「山の段(「吉野川」のこと)もう1回
やらせるぞ!」と言っていたらしいですが、私が観た時は残念ながらそれは聞かれず。
その代わり、後半で「それは俺の不徳の致すところだ」とおっしゃっていました。
橋之助さんのあの会見の直後だったし、爆笑。松緑さん、やってくれます。
米吉くんの演じた半次の妹 おやすは落語にも上方版にも出てこない人物。
(そういえば勘三郎さんバージョンではこの役、松也くんだったなと思い出しました。)
最初の出は喧嘩の話をして、最後にもう一度出て来てお母さんの死を告げるという役まわりですが、
米吉くんのブログに、
「他人の死体を弄ぶと、身内にも不幸がある。寓話的と言いましょうか・・・因果は巡る、
みたいなことを伝えたいのかな、と思っているんですが・・」と書いてあって、今さらながら目からウロコ。
幕間に会ったお友だちと「米吉くん、ほぼスッピンみたいだったね。でも肌キレイね~」
「やっぱそこは、オードムーゲ使ってるからね」と言っていたのですが、
後でブログに「聞いてたの?」というくらいそのまんまの内容書かれていて笑っちゃいました。
ラスト、亀寿さんのらくだの死体が、幕切れでは完全に一人で立ってカンカンノウ踊っていたのがおもしかったです。
三、元禄花見踊
出演: 坂東玉三郎 坂東亀三郎 坂東亀寿 中村歌昇 中村萬太郎 中村隼人
中村吉之助 中村梅枝 中村種之助 中村米吉 中村児太郎 ほか
玉三郎さんを中心に、周りを花形のイケメン男女が取り囲む華やか舞踊。
「玉三郎舞踊学校」という声をよく聞きましたが、人選は玉三郎校長先生でしょうか。
美しい子たちを集めたわね~という感じでした。
幕開き 後ろ向きにせり上がって来た玉三郎さんが前を向いた時の客席の「待ってました!」感。
宝塚でいう「ちょんぱ」でパッと明るくなった舞台に役者さんが勢揃いしている華やかさ。
一人、二人と順番に玉三郎さんと絡んで踊る若手たちの懸命さ。
衣装が皆お揃いではなくて、やわらかな色柄が違っていたり、髪型を変えていたり。
踊りのことはよくわからない不肖ワタクシですが、観ているだけで楽しかった・・というか、観る人多すぎて目が忙しかったです。
「あれ?歌昇くんいるのに種之助くんいないのかな?」と探していて、梅枝ねーさん、米吉ねーさんたちに
混じって女方で踊っているのを見つけた時には思わず微笑んでしまいました。
上手仮花道横の席だったのですが、仮花に出てきて踊るのが、歌昇くん・米吉くん・隼人くん・芝のぶ さんというめちゃオレ得でした。
最後に黒い着物に着替えて出てきてすぐにキマって幕、という玉三郎さんこだわりの贅沢な美の極致。
泣いたり笑ったり切なかったり見惚れたり、忙しくて眠くなるヒマない充実の秀山祭。昼夜ともどの演目もくっきり記憶に残って、大変楽しゅうございました のごくらく度


