2016年09月23日

シシイ・ゾフィー・そしてルキーニ 「エリザベート」


elisabeth2016 (2).jpgただ今絶賛「エリザベート」期間中。
1回目の時に書いたとおり、毎週水曜日に粛々と梅芸ウィーンに通っております。

2015-2016シリーズについては、昨年帝劇で2回観た時に感じたことはほぼ書いてしまいましたので改めて書きたいこともあまりないのですが、ただ一つ言えるのは、やはり、「楽曲がすばらしくて何度観ても飽きない」ということです。
というか、観れば観るほどまた観たく、聴きたくなりますね・・・困ったものです。

2015年帝劇の感想はこちらこちら


ミュージカル 「エリザベート」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ 
音楽・編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞: 小池修一郎
音楽監督: 甲斐正人
美術: 二村周作
衣装: 生澤美子
出演: 花總まり  蘭乃はな  井上芳雄  城田優  田代万里生  古川雄大  
未来優希  香寿たつき  涼風真世  山崎育三郎  成河 ほか

2016年9月12日(月) 6:30pm 梅田芸術劇場 2階5列センター/
9月14日(水) 6:30pm 1階14列上手
9月21日(水) 6:30pm 1階4列下手



全体については、すべて観た後に改めるとして、今年新たに加わったキャストと昨年敢えて避けたキャストについての印象を。


まずは蘭乃はなさんのシシィ。
私は「シシィは絶対花總まり」派ですので、昨年も今年も、まずは花總さんのシシィありきでチケットを取りました。
そんな中、1回だけ蘭乃さんシシィのチケットが余分に手に入って、手放そうかとも考えたのですが、もしかしたらこれで見納めかもしれないし(?)、蘭はなちゃんシシィも観ておきましょうという気になったのでした。

観終わった最初の感想は、「思っていたほど悪くない」 です。
昨年の帝劇でさんざん酷評されたように歌声がひっくり返ったり出なかったりするようことはありませんでした。
髪型やメイク、ドレスの着こなしは宝塚時代からお上手なので、花總さんと比べても特に不足はないように見えました(2階A席で遠目だったし・・)。
元々ダンスがお得意な娘役さんでしたので、舞踊シーンや立ち姿も美しいと思います(・・気品があるか、は別として)。
イキイキとした少女時代の可愛らしさは格別。ほんと、フランツが「もぎたてのフルーツ」と感じるのも無理はない。

・・・そういえば、バートイシュルで最初の出の時、「鹿さん」と言ってましたが、あれは蘭はなちゃん特別バージョンかしら?


気になったのは、
・台詞の声と歌声が違いすぎて別物のように聞こえる
・楽曲によって出来不出来の差が激しい
の2点です。

ミュージカルに慣れていない人が「ミュージカルって突然歌い出す」とよく言います。私もミュージカル通という訳ではないのでこの点についてはかつては違和感を持っていました。でも今は、ミュージカルにおける歌は台詞だと理解しています。
だからこそ、台詞と歌が別物では困るのです。もちろん、話し声と全く同じように歌える人などいないと思いますが、蘭乃さんの場合、その差が顕著なのです。花總さんはじめ2人のトートやルキーニ、その他のキャストにそんなふうに感じたことはありませんので、これは蘭乃さんだけのものかと。
楽曲について言えば、一幕の「私だけに」は曲がりなりにも歌えていたのに、二幕冒頭の「私が踊る時」は全くダメ・・といった感じ。
帰り道に友人と「ボイトレと歌のレッスンが間に合わなかったのかな?」と笑い話で言っていたのですが、2年もやっていて間に合わないってどーよ?とも思いますが(笑)。

蘭乃さんは宝塚時代にシシィをやった時、課題の歌を克服すべく、とにかく楽曲だけピックアップしてボイトレをされたと聞きましたので、これらのことはその弊害かなぁという気もします。
破綻なく歌おうということに一生懸命のあまり、シシィの細やかな感情が伝わって来ない場面があるのは残念です。

この日はローチケ貸切かつ蘭乃さん大阪初日というということで、終演後、井上くんと蘭乃さんのご挨拶がありました。
「ローソンチケット貸切ということで、皆さん Loppiでチケット買っていらっしゃったといことでよろしいですね?」ときっちりローソンネタ混じえて笑いも取りながら、さすがの井上くん。
蘭乃はなさんは、宝塚を退団後、関西の劇場の舞台に立つのはこれが最初なのだそうで、「宝塚の最後の舞台もエリザベート、そして退団後の関西発舞台もエリザベート」とおっしゃっていました。
「関西は私のホームのようなもの。そこのホームでこのような舞台に立てて幸せです」と。


涼風真世さんのゾフィー
このシリーズはこれまで香寿たつきさんゾフィーしか観たことがありませんでしたので、涼風真世さんのゾフィーはかなり新鮮。
まだシシィでもイケるんじゃない?というベイビーフェイスに迫力の歌唱。
あー、かなめさんの歌声ってこうだった、と思い出しました。子ルド相手にも容赦ない(笑)。

香寿ゾフィーがどちらかといえば能面のような雰囲気なのに対して、とても表情豊かなところが印象的でした。
たとえは結婚式の翌朝のシシィの寝室。
ゾフィーにあれこれ言われてフランツに「助けて」ととりすがったシシィに、フランツが「母の意見は君のためになる」と言った時、
香寿ゾフィーが、片方の眉と唇の端を少し上げるだけなのに対し、涼風さんは思いっきり勝ち誇ったようにニヤリと笑っていましたからね。

カワイイお顔とは裏腹に、冷酷で威厳もあってなかなかコワイゾフィー様でございました。


そして成河さんのルキーニ
何というか、ルキーニって本当にこんな人だったんだろうと思わせるルキーニでした。
帽子をかぶったり取ったり、親指を噛んだり、仕草などもとても細かくつくり込んでいましたが、それがとても自然で、そんなすべてが「ルキーニ」を表しているようでした。

これまで観たどのルキーニとも違っていました。
ルキーニは狂言回し的な役回りなので、傍観者というか物語の外にいる印象を受けることが多いのですが、成河くんルキーニはシニカルな目線でエリザベートとその世界の人々を見つめていて、なのに自分自身もエネルギッシュにその世界の中で生きている・・・あぁ、ルキーニもまた、ハプスブルクのこの世界に生きていた人なんだと実感できました。

成河くんといえば甲高い声に苦手感があって、始めの方は「やっぱり声高いなぁ」と気になったのですが、物語が進むにつれてそんなこと忘れていました。
たとえば「あ・く・む」とか、ルキーニならこういう言い回し、というのを色々裏切ってくれました(いい意味で)。
声量がすごくあるという訳ではないですが、歌もうまいなぁ。


組み合わせの妙を楽しめるのも「エリザベート」蟻地獄のひとつ のごくらく地獄度 (total 1633 vs 1639 )


posted by スキップ at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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