

「KERA×古田企画」第3弾。
2007年 「犯さん哉」
2011年 「奥様お尻をどうぞ」
とやってきて今回3作目にしてラストなのだとか(ほんとかな)。
古田新太好きとしては、このシリーズはもちろんコンプリートです。
cube presents 「ヒトラー、最後の20000年 ~ほとんど、何もない~」
作・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演: 古田新太 成海璃子 賀来賢人 大倉孝二
入江雅人 八十田勇一 犬山イヌコ 山西惇
声の出演: 村井國夫
2016年9月4日(日) 12:30pm シアター・ドラマシティ 9列下手
冒頭は、入江雅人さんと八十田勇一さんの前説。
入江さんが「この舞台を観に来るお客さんは、携帯電話の電源を切らない人なんかいないんだっ!まして遅れて来るなんて・・」と言ったところに入ってくる人がいて、座席に座ろうとしたら舞台から「帰れっ!!」と言われて泣きながら出ていく・・という仕込みつき。
入って来た時は一瞬本当に遅れて来た人かと思って、ダマサれたわ~(笑)。
入江さんは自ら「主演の入江雅人です」と名乗っていて、後のタイトルコール映像でも「主演: 入江雅人」と出ていましたが、そうなの?
ご都合主義の神様(大倉孝二)からヒトラー(入江雅人)のユダヤ人虐殺を止めるよう依頼された名探偵アラータ弁護士(古田新太)とアルジャーノン少年(犬山イヌコ)がタイムスリップしてヒトラーの時代に行き、アンネ・フランク(成海璃子)一家と出会って・・・
という筋立ては一応ありますが、この企画のキーワードは“デタラメ”ですから、ナンセンスギャグの応酬といった趣きの舞台です。
アラータ弁護士とアルジャーノン少年は、前作「奥様お尻をどうぞ」に出てきたキャラクターで、アラータさんは三重人格という設定ももちろんそのまま踏襲。
白いブリーフの中から客席にマシュマロ投げつけるとか、アラータさんが無茶ぶりやって残り全員が同じ振りを真似するとか、客席イジリ(私が観た日は2列24番の人が何回もスポット当てられていた)とか、このシリーズの「お約束」的なものもすべて出てきました。
「ほとんど、何もない」というサブタイトル通り、ストーリーを追って説明しても意味がなくて(というか説明できない)、終盤は支離滅裂で訳わかりません。
映画 「ヒトラー最後の12日間」から取ったタイトルだそうですが、特に反戦や反ホロコーストへのメッセージが含まれている風でもなく(「奥様・・」は反原発が含まれていたように思いますが)、ヒトラーやアンネ・フランクである必要があったのかな、というのが正直なところ。
その代わり人種差別に対するシニカルな視線はかなり感じましたが。
折々に挟み込まれる台詞やギャグにはキャハキャハ笑えて、ケラさんらしいシュールさもキラリ。
成海璃子さん扮する妖女ゴルゴンゾーラの小林幸子ばりの大装置にワイヤーとか、本水を使ったりとかかなり大掛かりな演出。
BGMになっていたスキャットマン・ジョンなんて久しぶりに聞きましたが、懐かしくて耳に残ります。
そうそう、陰のナレーションがいい声だなぁと思っていたら、村井國夫さんだったと後で知りました。
イヌコさんアルジャーノン少年が「そんなに難しいの好きだったら新国立劇場行けばいいのに」と言ったり、「こんなだったらコクーンに松尾スズキ観に行けばよかった」(←これに対してはアラータさんから「松尾スズキの芝居はもう終わったんだよ」とツッコミ入る)、小津安二郎さん映画のパロディとか、蜷川さんへのオマージュ?とか、観劇帰りの主婦3人のネタとか、ケラさんの芝居や観客に対する考え、自分のつくり出す演劇作品への自負といったものが垣間見えるよう。
役者さんでは、古田新太・犬山イヌコ・大倉孝二の3人が抜きん出ている印象ですが、成海璃子ちゃん、賀来賢人くんもがんばっていました。
成海璃子ちゃんはゴルゴンゾーラの時、古田さんに「キミ、舞台何度目?2度めなの?」と言われていましたが、3年前の初舞台 「鉈切り丸」の時よりはるかにのびのびしていました。
よく笑ったけど自分がこの笑いに慣れたせいか おもしろさは 犯さん哉 > 奥様お尻をどうぞ > ヒトラー かなぁ の地獄度


