
「猿之助くんが襲名してから共演していない」とおっしゃっていた染五郎さん。今年は立て続けに共演でお二人のファンにとってはうれしい限りです。
猿之助さんの演出で、染五郎さんとお二人がともに初役初コンビの弥次喜多、澤瀉屋さん総出演の上に金太郎ちゃん・團子ちゃん共演、と人気を集め、チケットは早々に完売しました。
サブタイトルが出たり、役名が発表されたりするたびにtwitterのタイムラインが盛り上がり、
極めつけは特別ポスターのこの2人の表情ですよ。
上にあるのはラストで花火とともにバァーンと客席の頭上に舞い降りたバズーカの銀テープ。
歌舞伎座でこれは初めてでした。新感線のより1本がやたら長い(笑)。
八月納涼歌舞伎 第二部
2016年8月28日(日) 2:30pm 歌舞伎座 1階13列センター
一、東海道中膝栗毛
奇想天外!お伊勢参りなのにラスベガス?!
弥次郎兵衛、喜多八 宙乗り相勤め申し候
作: 十返舎一九
構成: 杉原邦生
脚本: 戸部和久
演出: 市川猿之助
出演: 市川染五郎 中村獅童 市川右近 市川笑也 中村壱太郎 坂東新悟
松本金太郎 市川團子 市川弘太郎 市川春猿 市川笑三郎 市川猿弥
片岡亀蔵 市川門之助 市川高麗蔵 坂東竹三郎 市川猿之助 ほか
物語: 弥次郎兵衛(染五郎)と喜多八(猿之助)は、まともに働きもせず毎日自堕落な生活をしていましたが、賭け事に負け続け借金はかさむばかり。伊勢参りをすれば何でも願いがかなうという話を聞き、すべてから逃げるように伊勢へと旅立ちます。その道中では・・・。
壮大なお祭り騒ぎでした(笑)。
「俳優祭の豪華版」と友人のファザコンサリーちゃんが言ってましたが、まさしくその通り。
旅する2人のロードムービー的趣向。
江戸から伊勢を目指して西へ西へと行くうちに、幽霊に出会ったり、鯨の潮に吹き飛ばされてラスベガスへ行ってしまったり。
ドリフ風コントあり、パロディあり、時事ネタあり、「ワンピース」あり、「獅子王」あり・・・の中に「鯉つかみ」や「連獅子」「宙乗り」の本格歌舞伎を織り込んで本気を見せたり。
楽しそうに大ふざけしてハジケている大人たちと、金太郎ちゃん、團子ちゃんの端正でお行儀のよい歌舞伎芝居の対照が際立ちます。
全編コメディ仕立て・・とはいうものの、そこは地力のある役者さん揃い。
どの場面も見せてくれます。
冒頭は真っ暗な中に浮かび上がるお人形のような若武者2人。
若君の梵太郎(金太郎)と家臣の政之助(團子)主従。これが2人によく似合っていました。
金太郎ちゃんは変声期に入ったのかな?少しかすれ気味で小さな声でしたが、團子ちゃんは抑揚もつけてはっきりした台詞。
この2人が梵太郎の母君の病気快癒祈願のために伝家の宝刀を携えて伊勢神宮へ参拝しようというところから物語は始まります。
場面変わって、劇中劇仕立ての「吉野山」。
春猿さん扮する静御前と猿弥さん忠信が熱演している中、それぞれの後見を勤めている黒子がいろいろやらかして芝居はめちゃめちゃになってしまいます。
「ハハーン、この黒子が弥次喜多だな」と思って観ていたら、ビンゴ!でした。
狂言回しは読売屋文春(ふみはる)の弘太郎さん。
ここでは毎回時事ネタを披露しているようで、この日は「福山雅治さん吹石一恵さん夫妻に子どもができた」というホットな話題でした。
文春さんのラップにのせて登場人物紹介。
盆に乗って回りながら一人ずつ出てくるのが楽しい。
弥次さん喜多さんたちは道中の茶店で梵太郎・政之助主従と知り合い、ともに伊勢まで旅することになります。
弥次さん、梵太郎若君のことを、「何だか他人のような気がしない」とおっしゃっていました(笑)。
最初の宿は箱根の旅館「五日月」。
五日月って・・というだけでも笑ってしまうのに、弥次さん喜多さんの変名が舛田添門之丞と野村泣左衛門だったり、「経費で」という台詞あったり、脚本細かい(笑)。
ここでは壱太郎くん扮する女役者・十六夜が艶やかな踊りを披露してくれます。
夜も深まり、十六夜の寝所へ夜這いしようとした弥次さん喜多さんですが、十六夜は実はお化けで・・・という展開。
建物がナナメに傾くという、「八時だよ 全員集合」のドリフも真っ青という大掛かりな仕掛けも見せてくれます。
川を渡る舟を少年たちに譲って、歩いて渡ろうとした弥次さん喜多さん。
波にのまれて乗り上げた岩が実はクジラの背中で、行き着いた先はラスベガス。
劇場支配人出飛人(デイビッド)・獅童さんのハジケッぷり凄まじく、もう何をやっても客席笑う笑う。
この劇場で上演するはずだった「獅子王」に出演する染五郎さんにそっくりだからと代わりに出演する羽目になる弥次さん喜多さん。
赤い毛の仔獅子は喜多さん、白の親獅子は弥次さんで、いきなり本気の毛振りです。
猿之助さんと染五郎さんのガチ連獅子なんて、この先観られることがあるかしら。
何て贅沢なんでしょう。観ていて泣きそうになりました。
この日の毛振りは、高速回転は猿之助さん、弧の軌跡の美しさは染五郎さんに軍配が上がったと見ました。
最後にはカツラが取れてしまうというオチつき。
そんなふうに感動したかどうかは定かではありませんが、ショーを観ていたアラブの石油王 門之助さんとその夫人・笑三郎さんの招きでカジノへ行く2人。
カジノのショーガールは「ワンピース」のニューカマーランドの人たちがそのままやって来た感じ。
みんなメイクもヘアもつくり込んで、ノリノリで楽しそうでした。
このラスベガスのシーンでは夜景などプロジェクションマッピングも贅沢に投入。お金かかってます。
カジノでイカサマをやったのを見破られ、警備員たちとの大立ち回りはベラ-ジオの噴水のような本水の中。
バッシャーンとこれでもかというくらいバケツで水をかけられる弥次さん喜多さん。大丈夫かいな。
・・・と思ったら三保の松原の浜辺に打ち上げられた2人を梵太郎くん、政之助くんが介抱しています。
あー、夢だったのね(笑)。
そこに現れる盗賊白井髭左衛門(右近)一味。
一味との闘い(ここの場面転換、歌舞伎らしくて鮮やかでした)で深手を負い、もはやこれまでと切腹しようとする梵太郎に、政之助が、
「夢は稔り難く 敵は数多なりとも 胸に悲しみを秘めて 我は勇みて行かん ・・・」だったかな、「ラ・マンチャの男の「見果てぬ夢」の歌詞で励ますのに大ウケ。
黒御簾の中の三味線もこの曲を奏でていました。
するとそこに登場する天照大神(笑也)。
紅白歌合戦の小林幸子さんかと見紛うほどの大きさ、派手さです。
「このままでは三部の幕が開かない」と2人を助け、弥次さん喜多さんもまとめて伊勢へ風で飛ばしてしまいます。
この時、「GO!!!」っておっしゃっていました。←爆笑しながら「家売るオンナ」か!と心の中でツッコんだのは言うまでもありません。
そうして伊勢にたどり着いた4人。
ここで政之助さん團子ちゃんに猿之助さんがしがみついて團子ちゃんが笑ってしまう事案発生。カワイイ。
そこには白髭一味や大家夫妻(錦吾・竹三郎)や借金取り(亀蔵)まで現れ、そこから逃れようとした弥次さん喜多さんが花火の大筒に隠れていると、その花火が打ち上げられる、という大団円。
プロジェクションマッピングの花火とともにパァーンとバズーカの銀テープが舞い、2人は空へ。
花火に点火する花火師が寿猿さんで、猿之助さん喜多さんが「おい、じじぃ」って言ってて笑ってしまいました。
宙乗りは2人とも浴衣姿で、猿之助さんは「歌舞伎座で三カ月連続の宙乗りもこれで飛び納めでございます。またお会いする日まで」とおっしゃって、染五郎さんはぐるんぐるんと内村航平くんもビックリという連続回転ワザ(しかも後転)を披露してくれて、2人仲良く手をつないで気持ちよさそうに空に向かって飛んで行きました。
「何でもあり」の歌舞伎の真骨頂。
猿翁さんの「歌舞伎役者がやればすべて歌舞伎だ」という精神を、染五郎さん、猿之助さん中心に力量のある役者さんたちが目の前で見せてくれた演目です。
そんな大人たちの中で、教えられた型も台詞もきっちり見せ聴かせる金太郎ちゃん・團子ちゃんの明日への息吹も感じられて、歌舞伎の未来がますます楽しみになりました。
終始ドタバタでコミカルですが「歌舞伎」をはずさず、決まりごとや様式美も採り入れつつなので下品にもただのギャグの羅列にもならず楽しく笑えて、何だか一夜の「夏の夜の夢」みたい。
旧歌舞伎座さよなら公演「助六」で、勘三郎さんがおっしゃった「新しい歌舞伎座でもっともっと夢を見させてもらいましょうよね」という言葉が甦って、楽しいのに泣きそうになったり。
二、艶紅曙接拙 (いろもみじつぎきのふつつか)
出演: 中村橋之助 中村勘九郎 中村七之助 坂東巳之助 中村児太郎
中村国生 中村宗生 中村宜生 坂東彌十郎 中村扇雀
富士山の山開きで賑わう浅草で、蝶々売りや大工、角兵衛獅子、朝顔売り、団扇売り、虫売りといった江戸の商人たちが踊りを披露する一幕。
それぞれ江戸の風俗を表す物売りに扮して、衣装も職業なりの趣向があって目に楽しい常磐津舞踊。
橋之助さん一家中心に前幕と対照的に納涼オリジナルメンバー総出演といった趣。
裸足で踊る朝顔売りの勘九郎さんの踊りがやはりひと際目を惹きます。
弥次喜多楽しかったけど目が足りないのでもう1回観たかったな のごくらく地獄度




八月納涼歌舞伎第二部、自分は月初に見たので、記憶が薄くなっていたのですが、スキップさんの感想を読んで、蘇ってきました。
金太郎ちゃん、團子ちゃんは可愛く、真面目に演技していて、とても良かったです。
将来この2人で弥次喜多を演じることも、あるかもしれませんね。
楽しかったお芝居ですが、私は実はちょっと引いてしまった部分もあり…。
でも最後の花火と宙乗りで、スカッ!として劇場を後に出来ました。
あの盛り沢山の内容を、ちゃんと歌舞伎として纏めたのは凄いと思います。
こんばんは。
思い出すままにあれもこれもと書いていたら、ダラダラと
長い感想になってしまいました。
読んでくださってありがとうございます。
金太郎ちゃん、團子ちゃん、本当に可愛かったですね。
2人が弥次喜多やるのを見届けたい気持ちでいっぱいですが、
それまで元気でいられるかどうか自信がありませんので(笑)
まずは、金太郎ちゃんが15歳でやりたいという弁慶は
何としても観たいと思います。
実は私も中ほどは「もうおなかいっぱい」と感じることがありました。
が、最後のあの花火と宙乗りは反則ですよね(笑)。