2016年09月08日

八月納涼歌舞伎 第一部


noryosenshuraku.jpg八月納涼歌舞伎。
第二部が何だかいろいろ楽しそうなので、千穐楽は盛り上がるに違いない・・日曜日と重なっていることでもありせっかくの機会なので千穐楽に観ましょ、ということで、一部二部は千穐楽に拝見しました。


八月納涼歌舞伎 第一部
2016年8月28日(日) 11:00am 歌舞伎座 
3階2列センター


一、嫗山姥(こもちやまんば) 岩倉大納言兼冬公館の場
作: 近松門左衛門
補綴: 武智鉄二
出演: 中村扇雀  坂東巳之助  中村歌女之丞  坂東新悟  中村橋之助 ほか


何年か前に親の仇を討つために出奔したはずの夫が、仇も討たずに女性に囲まれて三味線を弾いているところへ偶然出くわした妻が恨みごとを言ったりするうち、自分を恥じた夫が自らの命を絶って、妻に神通力を持った子どもを授ける(しかもその子どもはやがて金太郎になる)というオドロキの展開の物語。

昨年2月松竹座で扇雀さんが初役で勤められた演目。
その前、2012年に御園座で時蔵さんでも観ていますが、江戸版と上方版では少し違っていて、今回のように八重桐がぶっ返って隈取もして、というのは上方版。
楽しく拝見しました。

扇雀さんは上背もあって、きりりとオトコマエの女性(ヘンな表現)がよくお似合いなので八重桐によくハマっています。
これまでそんなふうに感じたことはあまりなかったのですが、ふっと藤十郎さんが重なることがありました。
藤十郎さんの芸の立役部分は鴈治郎さん、女方は扇雀さんがまぎれもなく受け継いでいらっしゃるのでしょう。

新悟くんの沢瀉姫が楚々とした中に華やかな美しさがあって声もよくて素敵でした。
橋之助さんの煙草屋源七はゆったりおおらかで色っぽくていかにの女性にモテそう。
「実は坂田蔵人時行」のハラがもう少し感じられればよかったかなぁ。

それにつけても何度観てもいかにも歌舞伎らしい荒唐無稽なお話です。


二、権三と助十
作: 岡本綺堂 
演出: 大場正昭
出演: 中村獅童  市川染五郎  中村七之助  坂東巳之助  中村壱太郎  
澤村宗之助  片岡亀蔵  坂東彌十郎 ほか


大家(彌十郎)の肝入りで住人総出で井戸替えの最中の長屋。
かごかきの権三(獅童)・おかん(七之助)夫婦と助十(染五郎)・助八(巳之助)兄弟が隣り同士に住むこの長屋に、上方から小間物屋彦三郎(壱太郎)がやってきて、以前この長屋に住んでいて強盗殺人で捕まった末、獄死した父親の冤罪を晴らしたいと言います。
その話を聞いた権三と助十は黙っていた目撃話を打ち明けます・・・。


長屋の住人たち40人以上が大人も子どもも1本の縄を引いて舞台いっぱいにゾロゾロ現れる井戸替え。
夏の江戸の年中行事で、みんな汗を拭き拭き、観ているだけで照りつける太陽が感じられます。
長屋の隅には朝顔の鉢が置かれていたり、七夕の笹が飾られていたり、季節感もたっぷり。
納涼歌舞伎には一番ぴったりの演目なのではないかしら。

権三や助十の質素な住まいも江戸の市井の人々の生活感にあふれています。
貧しくて、口も行儀も悪いけれど情に熱い江戸っ子たち。
夫婦喧嘩、兄弟喧嘩、そして隣同士の喧嘩・・・「火事と喧嘩は江戸の花」を地で行くようなそんな江戸っ子たちが実にイキイキと物語の中に息づいていて、とても楽しい。
しかも歌舞伎の世話物らしい情緒たっぷり。

二部の「弥次喜多」も、三部の「山名屋浦里」もとてもおもしろかったですが、演目的にはこの「権三と助十」が今年の納涼歌舞伎のmy bestかな。

獅童さんの権三、染五郎さんの助十、七之助さんのおかん、巳之助くんの助八。
若い4人が元気よく躍動。
獅童さんのイキのいい江戸っ子だけど女房に頭が上がらない様も、染五郎さんのちょっと情けないトボけた味も、七之助さんおかんの、今は長屋のおかみさんだけど女郎だった前身を感じさせるような仇っぽい雰囲気も、とてもハマっていましたが、中でも巳之助くん助八がとてもよかった。
のびのび弟キャラ。気は短くて喧嘩っ早いけど兄思いの熱血漢。
勘太郎のやりように「納得できねぇ!」と部屋から床几飛び超えてポーンと飛び出てくるところとか大好きでした。

その勘太郎の亀蔵さんは、この物語の登場人物の中で唯一の悪人ですが、いかにも不気味で存在感たっぷり。
権三と助十に終始丁寧な言葉で話しかけながら一方で猿廻しの猿をひねり殺す冷血さ。コワイ。
彌十郎さんの人情味があって、でも長屋の住人たちからはちょっぴり煙たがられているいかにもな大家さんもとてもニンに合っていました。

その大家さんの口には上るけれど、舞台には登場しない大岡越前守の名裁きでめでたしめでたしで幕となる物語。
江戸庶民の明るさ、たくましさも感じられて、笑って打ち出されるお芝居はやっぱり気持ちいいです。



いつか染五郎さんの権三も観てみたい のごくらく度 (total 1626 vs 1629 )



posted by スキップ at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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