2016年08月06日

檀は私のすべてでした  ふたりものがたり 「檀」


dan.jpgりゅーとぴあ製作リーディングシリーズ「ふたりものがたり」
5月に観た
伊集院静「乳房」 ~天上の花となった君へ~
とてもよかったので、今回もとても楽しみにしていました。

りゅーとぴあ発・新リーディングシリーズ ふたりものがたり
「檀」 ~もう一度、妻になれたら~
原作: 沢木耕太郎
企画・台本・演出: 合津直枝
出演: 中井貴一  宮本信子

2016年7月30日(土) 7:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 1階C列センター



檀一雄さんの17回忌が過ぎた頃、奥様のヨソコさんに沢木耕太郎さんが1年以上にわたって重ねたインタビューを書籍にした作品が原作。

原作は、ヨソコさんの「私」という一人称で書かれているそうですが、この舞台では、中井貴一さんが沢木さん、宮本信子さんがヨソコさんに扮してインタビューの形で物語が進みました。
その中で、何度か中井貴一さんが檀一雄さんになることも。

檀一雄さんといえば、高校時代の友人に親類にあたる人がいて、「檀さんの親戚のおじさん」であり「檀ふみさんのお父さん」というくらいの印象しかありませんでした。
「火宅の人」はじめどの作品も読んだことはないのですが、家庭を顧みず愛人のもとへ出奔した人というイメージを持っていたのは、檀ふみさんがどこかで話していらしたのを聞いたか読んだかしたのかもしれません。

奔放に生きたと言われる檀一雄さんの行動を、奥様であるヨソコさんがどんなふうに感じ、受け止めていたのか。


二人の出会いから結婚生活、長男の病気、愛人と「ことを起こした」事実、ポルトガルへの旅・・・ヨソコさんの思いがあふれ出るような1時間30分でした。
沢木さんにインタビューを受けるようになって初めて「火宅の人」を読んだというヨソコさん。
「愛人に夫を奪われた」という現実は、ヨソコさん自身にも家族にも、拭いきれない暗い影を落としていたに違いありませんが、沢木さんに語る中で、時に感情を昂ぶらせ、涙にくれたりする中、やがて「檀は私のすべてでした」と、彼女自身の心の真実に辿りつく姿は感動的でしたし、もちろんそれは一方的な思いではなく、檀さんとヨソコさんには、他人には入り込めない心の繋がりがあったのだろうと感じることができて、「火宅の人」も、そして「檀」も読んでみたくなりました。


舞台から客席へ階段があったので、「朗読なのに客席降りあるのかな」と思っていたのですが、開演すると中井貴一さん、まさかの客席通路から登場で、兵芸客席、ざわめきました。
その階段に座って朗読する場面もあって、3列目通路側でしたので、目の前に中井貴一さんがいて、マイクを通してではなくナマ声も聞こえてきて、耳福眼福でした。
インタビューする側なので終始冷静な沢木さんだったのですが、檀一雄さんになった時の一瞬にしての切り替えぶりが凄かったです。

フライヤーをチラリと見て、なぜだか草笛光子さんだと思い込んでいて、宮本信子さん出て来た時、椅子から転げ落ちそうなくらい驚いたのですが(笑)、知らない人なのにヨソコさんがまるでそこにいて語っているよう。とても自然で、だからこそヨソコさんの辛さも悲しみも、そして檀一雄さんへの愛も、リアルに感じることができました。



檀さん自身がもっと登場するかと思っていましたが のごくらく地獄度 (total 1608 vs 1611 )


posted by スキップ at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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