
今年はサマーレイトショー復活で夜7時開演。仕事帰りにも観られるのがうれしい。
「金壺親父恋達引」は井上ひさしさんが文楽のために書き下ろした唯一の作品。
過去にラジオやテレビ、人形劇団での上演はありましたが、文楽の舞台に乗るのは今回が初めてだそうです。
モリエールの「守銭奴」をベースにした、お金に目がない男の物語。
夏休み文楽特別公演 第3部サマーレイトショー
「金壺親父恋達引」 (かなつぼおやじこいのたてひき)
-モリエール 「守銭奴」 による-
作: 井上ひさし
作曲: 野澤松之輔
太夫: 豊竹英太夫 竹本文字久太夫 豊竹睦太夫 豊竹芳穂太夫 豊竹希太夫
三味線: 竹澤宗助 鶴澤藤蔵 鶴澤清丈
人形: 桐竹勘十郎 豊松清十郎 吉田和生 吉田玉志 吉田玉男 ほか
2016年7月29日(金) 7:00pm 国立文楽劇場 1列センター
物語: 呉服屋の主人 金仲屋金左衛門は人一倍金への執着が強く、貯め込んだ小判を壺に入れて庭に埋め、掘り起こして眺めては悦に入っています。金左衛門はお舟という若い娘を後妻に迎えようとしますが、彼女は金左衛門の息子万七と思い合う仲です。また、金左衛門が裕福な呉服問屋 京屋徳右衛門の後妻に入れようともくろんでいる娘のお高は、店の番頭 行平と恋仲でした。あまりに強欲な金左衛門に愛想をtつかした子供たちは、金左衛門が隠した金壺を持って駆け落ちしようとしますが・・・。
床には5人の太夫さんと三丁の三味線が並び、いつもの文楽とは少し違った雰囲気。
英太夫さんはじめ5人の太夫さんが9人の登場人物を個性豊かに掛け合いで語り分け。
字幕なしでしたが、口語調の言葉も聞き取りやすくて、1時間10分という上演時間も集中力が持続する範囲で程よい感じ。
金仲屋の床の間の掛け軸が「倹約第一」的なものだったのに、パッと裏返ると「金金金金金」とそれも金色の文字で書かれているあたりから「つかみはOK」という感じで、随所で笑いが漏れる客席。
「本朝廿四孝」や「新版歌祭文」など、他の文楽作品や歌舞伎などからの引用やパロディも随所に見られて(私が気づくだけでもいくつかあったのですが、精通されている方ならもっとわかったかも)、井上ひさしさんの古典への造詣の深さに感心したり、「まかしておけさの盆踊り」なんてダジャレが入ったり、金左衛門が「やるまいぞ やるまいぞ」なんて言い出した時には、「狂言かよ」と思わず吹きました。
そんな中にあって、父の横暴にも「如何に無体な父であれ、父がおらずば子はおらず、三千世界にだれひとり、親の代りはできやせぬ」と嘆く万七がいかにも文楽の世界だったり。
勘十郎さんが遣う金左衛門は眉や口がイキイキと動いて本当に表情豊か。
身ぶり手ぶりも大きく、小判にほお擦りしたり、強欲なのだけどどこか憎めないキャラクターを描出していて、勘十郎さん 独断場です。
本当に金左衛門やりたい放題なのですが、それと対照的に端正な佇まいの玉男さん@京屋徳右衛門が登場した時の待ってました!感ね。
そしてそこからの、実は、実は、実は、の三連発(笑)。
からのハッピーエンド。
一人になった金左衛門の心の糧はやっぱり小判で、そこはもう変わりようがないという結末ですが、自分も家族も幸せを測る指標は金、という人物は現代にもたくさんいそう。
井上ひさしさんらしいユーモアもシニカルな目線もたっぷりの楽しい喜劇でした。

クリアファイルと団扇いただきました。
「金」壺親父恋達引 の演目にちなんで「金」曜日のプレゼントなのですって のごくらく度


