2016年07月26日

松竹座 七月大歌舞伎 夜の部


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「やっぱり地元だと昼夜通しじゃなくて分けて観られるからありがたいよね」と喜んで向かう松竹座。
夜の部は 「菊畑」 「鳥辺山」と苦手な演目が並ぶなぁと腰も引け気味ではあったのです。
ところが・・・。

中村芝雀改め
五代目中村雀右衛門襲名披露
七月大歌舞伎 夜の部

関西・歌舞伎を愛する会 第二十五回

2016年7月16日(土) 4:00pm 大阪松竹座 3階3列センター


昼の部の感想はこちら


一、鬼一法眼三略巻  菊畑  
   出演: 中村梅玉  中村橋之助  中村亀鶴  中村宗生  片岡孝太郎  中村歌六 ほか


「鬼一法眼三略巻」は四段目の「一條大蔵譚」が最も有名だと思いますが、「菊畑」はその前の三段目。
菊花爛漫に紅葉を加えた舞台装置は綺麗だし、登場人物の衣装も華やかで目にはうれしい演目。
だけど、動きが少なくて、ずーと真ん中の床机で話す場面が多くていささか苦手です。

見取り上演で、前後の流れがわかりにくいとこも何だかなぁ・・・という訳で意識遠のく(笑)。
ふと気づいたら、梅玉さん扮する奴虎蔵と橋之助さん知恵内の立場が逆転していた(これが本当の姿だけど)^^;

鬼一法眼が平家の味方を装いながら実は源氏である牛若丸こと義経を応援しているという肚を、観ている私たちに感じさせるところがキモだと思いますが、そのあたりは歌六さんさすがです。
そして、梅玉さんは義経を演じられる機会が多い役者さんですが、若い牛若丸も何なくクリア。


ニ、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上  
   芝雀改め雀右衛門ほか幹部俳優出演


お披露目役を坂田藤十郎さんが勤めて、雀右衛門さんご本人含め総勢13名による口上。
下手から、梅玉・我當・進之介・錦之助・鴈治郎・友右衛門・雀右衛門・藤十郎・秀太郎・橋之助・孝太郎・歌六・仁左衛門 という並びでした。

雀右衛門さんご自身が真面目なお人柄であまりハメをはずして遊んだりなさらないせいか、はたまた列座の役者さんにそれほど親しい方がいらっしゃらないためか、どなたもわりとおとなしめな口上という印象。
それでも役者さん皆さんがお祝いを述べ温かい言葉を口にする口上は、聴いていて幸せな気分になります。

中で印象に残ったのは鴈治郎さんで、「先代は粋な方で、舞台を降りると革ジャンにサングラスでミナミの街を闊歩されていたので、街ではみんな『ジャック』と呼んでいた。当代が『二代目ジャック』となれるのを楽しみにしています」みたいな(笑)。

我當さんは、相変わらず後見がついて大変そうでしたが、昨年末 南座顔見世の鴈治郎さん襲名披露口上の時より、お声もお辞儀する姿もいく分お元気になられたようにお見受けしました。


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三、鳥辺山心中  
   作: 岡本綺堂
   出演: 片岡仁左衛門  中村雀右衛門  中村橋之助  坂東竹三郎  片岡松之助  
       市川團蔵  中村鴈治郎  片岡秀太郎 ほか


祇園の遊女お染(雀右衛門)と恋仲になり入り浸っている旗本の菊地半九郎(仁左衛門)。
そのていたらくを非難した同輩の坂田源三郎(鴈治郎)と四条河原で決闘をして殺してしまいます。
罪に問われるのは必定と、お染とともに心中するために鳥辺山への道行きへと出るのでした。


夜の部の襲名披露演目。
これが発表された時、「え~っ、何で鳥辺山~ぁ?」と思ったものでした。 が、
仁左衛門マジックにかかるとあの鳥辺山でさえ、何とも哀感漂う趣深い舞台に。

まず、雀右衛門さんのお染が、遊女でありながら心はピュア。
一途に半九郎様をお慕い申しあげております、といういじらしい乙女な風情がよく出ていました。
まさに、「濁りに沈めど濁りに染まぬ 清き乙女」を地で行く雰囲気。

そして、そのお染に心奪われる半九郎の仁左衛門さん。
半九郎は酒と女に溺れていて、自制もできないだめんずなのですが、仁左衛門さんが演じるとダメ男だけどどこかほっとけない色男になるからあーら不思議。
台詞に説得力がありますので、心中しか進退極まってしまう半九郎の苦しい胸の内が迫ってきます。
これまで何度か「鳥辺山心中」を観ていて、これほど半九郎の気持ちに寄り添えたのは初めてかもしれません。
また死装束に選んだ黒の晴れ着の似合いっぷりがね~

半九郎・お染の対照として描かれる市之助(橋之助)・お花(秀太郎)さんのカップルもよかったです。
特に秀太郎さんお花の色っぽさとじゃらじゃらぶり(笑)。
こんな役やらせたら、右に出る者はいませんね。


四、芋掘長者  
   作: 岡村柿紅
   出演: 中村橋之助  中村錦之助  中村児太郎  中村宗生  
       中村種之助  大谷友右衛門 ほか


息女 緑御前(児太郎)の婿選びに舞の会を催す松ヶ枝家。
緑御前に恋焦がれている芋掘り藤五郎(橋之助)のために舞の上手な友人治六郎(錦之助)が面をつけ、藤五郎になりすまして踊り、やんやの喝采を浴びて・・・というお話。

平成17年に坂東三津五郎さんが45年ぶりに復活上演された演目で、昨年八月納涼歌舞伎で、「十世坂東三津五郎に捧ぐ」として上演されました。
その時は橋之助さん藤五郎に、治六郎は巳之助くん。
以前、治六郎を三津五郎さんが演じられたものも観ています。調べたら、2008年1月の松竹座でした。

三津五郎さんが掘り起こした演目だけあって、治六郎の踊り巧者ぶりと、藤五郎の下手だけどおおらかな踊りとの対比がキモだと思うのですが、今回の2人ははどちらかといえば同タイプで、その点の対比がいささか弱いかな、と(暴言)。

この日は不覚にもオペラグラスを忘れてしまって、あまりお顔の判別ができなかったのですが、松ヶ枝家の腰元が所作も綺麗で台詞も達者で印象に残ったので後で友人に「あの腰元は誰?」と聞いたところ、中村芝のぶさんでした。納得。

ユーモアがあって温かい。
弱者に光射すようなハッピーエンド。
最後の全員での芋掘り総踊りはほんとに楽しくて、幸せな気分で打ち出されます。


橋之助さん 夜の部は口上含め全ての演目にご出演。
多分、大阪で「中村橋之助」を観るのはこれが最後。
何気に橋之助奮闘公演になっています。



宝塚で月組11:00の部観てから移動したので、松竹座で会ったいろんな人に驚かれ呆れられたよね~^^; の地獄度 (total 1601 vs 1605 )


posted by スキップ at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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